住友重機械,韓国・サムスンメディカルセンターにおける陽子線治療開始を発表

2016-5-26

放射線治療


2016年5月3日に行われたオープニングセレモニー

2016年5月3日に行われたオープニングセレモニー

住友重機械工業(株)は,韓国サムスングループの基幹病院であるサムスンメディカルセンター(以下,SMC)に納入した陽子線治療システム(以下,本システム)により,陽子線治療が開始され,本年5月3日にオープンニングセレモニーを開催されたことを発表した。

本システムは,連続かつ高線量率ビームを発生するサイクロトロン及び,回転ガントリ治療室2室で構成され,将来的には回転ガントリ治療室1室の増設が可能な構成となっている。治療室には多目的照射ノズル(G1室)及びスキャニング専用ノズル(G2室)をそれぞれ有し,多目的照射ノズルでは拡大ビーム照射法とスキャニング照射法の対象患者毎のランダムな切り替えが,一方,スキャニング専用ノズルでは最大40㎝×30㎝の大きなターゲットへのスキャニング照射が可能という特徴を有する。SMCでは昨年12月にG1室における拡大ビーム法による治療を開始し,本年3月よりはG2室におけるスキャニングによる治療を開始した。

スキャニング照射法は細いビームを標的がん組織の形状に合わせて三次元的に照射する手法であり,従来の一般的照射法である拡大ビーム照射法と比較して,より複雑な形状のがんの治療を実現し,周囲の正常組織への照射線量を抑えることが期待されている。また,拡大ビーム照射法において患者毎に製作するビーム成形器具(ボーラス及びコリメータ)が不要となり,治療準備作業やランニングコストの大幅な低減に寄与する。住友重機械はスキャニング手法としてラインスキャニング照射法,すなわち,ビームの走査速度を変調させつつ,連続的に(一筆書き状に)照射する手法を採用しており,ビームを断続的に照射するスポットスキャニング照射法などの他スキャニング手法と比較して照射時間の短縮が見込まれる。

ラインスキャニング照射法による治療は昨年10月に国立がん研究センター東病院において世界で初めて開始され,続いて本年1月より社会医療法人財団慈泉会相澤病院においても開始された。今回のSMCでは住友重機械としては初めてのスキャニング専用ノズルによる治療が開始され,大照射野且つ複数照射の接合が容易な特徴を生かして,小児の全脳全脊髄照射にも適用されている。

SMC陽子線プロジェクトマネジャーのDr. Youngyih Han(Professor, Medical Physicist)は「陽子線治療は正常組織への副作用を抑えつつ,標的がん組織への治療効果を高めることができる画期的な放射線療法として,優れた臨床成績と適応疾患の拡大が報告されており,今後も世界中での普及が予想されます。一方,この治療法の更なる発展と普及のためには技術開発の継続と共に,専門知識を有する医療スタッフの育成が必要です。SMCは住友重機械との協力体制により,アジアにおける陽子線治療の技術開発及び人材育成の拠点を目指した取り組みを行っていきます。」と述べている。

 

●問い合わせ先
住友重機械工業(株)
http://www.shi.co.jp/contact/index.html

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