日本メドトロニック,植込み型除細動器(ICD)「Evera® ICDシリーズ」を発売
〜身体への負荷軽減を目的とした独自のデザインと不適切作動を低減するテクノロジーを搭載〜

2013-7-26

ペースメーカ,ICD,CRT-D

日本メドトロニック


中央部から端にかけて厚みがゆるやかに薄くなるPhysioCurveデザインを採用した「Evera ICDシリーズ」(写真はEvera ICDデュアルチャンバ モデル)

中央部から端にかけて厚みがゆるやかに薄くなる
PhysioCurveデザインを採用した「Evera ICDシリーズ」
(写真はEvera ICDデュアルチャンバ モデル)

日本メドトロニック(株)は,植込みによる患者さんの違和感や身体への負荷の軽減を目的とした独自のPhysioCurve®(フィジオカーブ)デザインと,致死性不整脈の識別精度を向上させ,不適切作動を低減することが臨床実績として示されたSmartShock®(スマートショック)テクノロジーを搭載した植込み型除細動器(ICD)の新製品「Evera®(エヴェラ)ICDシリーズ」(以下「Evera ICDシリーズ」)を2013年7月1日に発売した。

ICDは植込み型医療機器で,患者さんの自己心拍を常に感知し,自動で致死性不整脈を診断した際には,抗頻拍ペーシングもしくは電気ショックによる治療(除細動)を行うことで,致死性不整脈による突然死を防ぐことを目的としている。「Evera ICDシリーズ」は,ICD治療を受ける患者さんの負荷の軽減を目指し開発された。

 ●主な特長

 1. 従来製品より小さく(同社従来品比較)植込み部が受ける圧力を低減する形状デザインを実現

ICDは高電圧電流によるショック治療を行うという特性上,大きなバッテリーを必要とし,ペースメーカと比較してもより容積が大きく,また角ばった形状であったため,植込み部位の皮膚に生じるストレスが高くなり,圧迫による植込み部位の皮膚のびらん・壊死などの合併症が懸念されている。「Evera ICDシリーズ」は,従来品より機器の容積を小さくしPhysioCurveデザインの採用により,中央部から端にかけて厚みがなだらかに薄くなる独自の形状を実現した*1。これにより,植込みによって生じる皮膚の圧迫が減り,患者さんの体の違和感や負担が軽減されることが期待される*2

また,電池の小型化と省電力な回路の設計により,従来製品の除細動出力を維持したままで,機器本体の小型化を実現*1。同時に,機器の内部機構に三次元形成されたコンデンサとエネルギー密度の高いバッテリーの独自開発も,これまでICDでは難しいとされていた形状の実現を可能としている。人間工学に基づいたデザインは,皮膚への圧力を分散することで皮膚への圧迫を約2~3割軽減させ,同社の既存製品に比べて植込み部位の突出を減らしている*2

2. 優れた臨床実績が示された不適切作動低減のためのアルゴリズム「SmartShockテクノロジー」を搭載*3

ICDの一般的な自動診断機能においては,致死性不整脈の識別が難しい場合には治療を優先させるため,ときには治療が不必要な場合にも不適切作動と呼ばれるショック治療が行われることがあり,不適切作動を経験する患者さんの割合は植込み後約2~5年間でおよそ1~2割と報告されている*4。電気ショックに伴う痛みによる患者さんのQOLの低下や心筋へのダメージがもたらす長期的な生命予後への悪影響の可能性に対する懸念から,ICDの心拍感知と治療精度の向上および不適切作動の低減は,ICD治療における課題とされてきた*5

「Evera ICDシリーズ」は,メドトロニックの開発した不適切作動防止のためのアルゴリズム「SmartShockテクノロジー」を搭載している。このテクノロジーは,今年5月の第34回米国不整脈学会で発表された「PainFREE SST試験」の中間報告で,植込み患者1308例における植込み後一年間での不適切なショックが作動しなかった患者の割合が98.2%であったことが示された*3。「SmartShockテクノロジー」は不適切作動を可能な限り低減し,患者さんのQOLや予後の向上への貢献を目指す。

PainFREE SST試験の試験運営委員のひとりである,近畿大学医学部附属病院心臓血管センターの栗田 隆志 教授は「日本国内においてもICDの不適切作動の低減は大きな課題となっています。PainFREE SST試験の中間報告において,SmartShockテクノロジーの優れた臨床実績が示されたことは,ICD治療において心強い結果だと考えます。また,これまで,小柄または痩せ型の方が多い日本の不整脈患者において,植込み後の違和感および負担を訴える患者が少なからずいらっしゃいました。こうした身体的負担の低減を目的とした形状が採用されたことを歓迎します。形状と治療機能の両面からICD患者のQOLが向上することにより,ICD治療の普及に貢献することを期待しています」と述べている。

メドトロニックは,治療が必要な不整脈を見逃すことなく不適切作動を減らすという課題に,過去20年間にわたり臨床研究を通じて取り組んできた。「Evera ICDシリーズ」は新たな形状の採用,そして不適切作動を減らすことで患者さんの負担を軽減し,さらなる医療ニーズに応えることを目指している。

「Evera ICDシリーズ」はヨーロッパでは2013年2月に発売されており,米国では2013年6月17日と日本とほぼ同時の発売となっている。

【致死性不整脈について】
不整脈には,脈が速くなる「頻脈性不整脈」と脈が遅くなる「徐脈性不整脈」がある。頻脈性不整脈のうち「心室頻拍」や「心室細動」は,しばし突然死の引き金になることがあり,「致死性不整脈」とも呼ばれる。「心室頻拍」では,心室から発生した異常刺激によって拍動が異常になり,心臓がポンプの役目を十分に果たせなくなるため,脳への血流が途絶え,失神やめまいをおこし,意識消失や心停止に至ることがある。また「心室細動」は,心臓が小刻みに震えた状態(細動)になり,心臓が止まったのとほぼ同じ状態になる。このような場合,数秒以内に意識消失を起こし,即座に治療しなければ死に至る。「心室細動」が起こった場合,ただちに心臓マッサージや電気ショック治療を行う必要がある。除細動器には,身体の外側の胸の表面2ヵ所に電極をあてて電気ショックをかけるAED(自動体外式除細動器)と,体内(主に前胸部)に植込む植込み型除細動器(ICD)がある。ICD は「致死性不整脈」の危険性が高いと判断された患者さんに予防的に植込まれる。

【植込み型除細動器(ICD)について】
ICDは1996年に国内で保険収載され,2013年3月末までに累計約44,000人に植え込まれている治療法*6。ICDは患者さんの心臓の心拍を感知し,命を危険にさらす「心室頻拍」や「心室細動」を感知すると即座に治療を行い,心臓の働きを正常に戻すことで突然死を予防する。不整脈を予防するものではないが,絶え間なく心臓をモニターし,脈拍が異常に速くなった場合に治療を行う。ICDには,症状に合わせてふたつの治療方法を選択する。
- 抗頻拍ペーシング
通常のペースメーカのような,ごく弱い電流による刺激を連続して与えて不整脈を停止させることを試みる。「心室頻拍」では効果が期待できることがある。この治療中に痛みを感じることは通常ない。
- 電気ショック治療
一旦生じた「心室頻拍」や「心室細動」を停止させるための最も有効な手段であり,抗頻拍ペーシングで治療効果を期待できない場合には,電気ショックによって発作を止める。「心室細動」が起こったとみなしたときには,直ちに電気ショックを与える。この治療のときには「胸をけられた感じ」がするため患者さんは驚くが,一瞬で終わる。

【PainFREE SST試験について】
PainFREE SST試験とは,メドトロニックの開発した不適切作動防止のためのアルゴリズム「SmartShockテクノロジー」の性能について検証を行うことを目的とした実臨床試験で,今年5月の第34回米国不整脈学会においてその中間報告が行われた。SmartShockテクノロジーを搭載した従来品のデュアルチャンバICDおよび両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)植え込み患者1308例について検討がなされ,その結果,植込み後一年間で不適切なショック作動を受けない患者の割合が98.2%であったことが示された。

*1: Evera DR/VR ICD Manuals.
*2: Flo D. IS4/DF4 Device Shape Analysis. January 2013. Medtronic Data on File.
*3: Schloss E.J. , et al. PainFREE SST Trial Primary Results. Low Shock Rates in Patients with Dual and Triple Chamber ICDs Using Novel Detection Algorithms. Presented at HRS 2013.
*4: Kadish A, Dyer A, Daubert JP, et al, for the Defibrillators in Non-Ischemic Cardiomyopathy Treatment Evaluation (DEFINITE)   Investigators. Prophylactic defibrillator implantation in patients with nonischemic dilated cardiomyopathy. N Engl J Med. May 20, 2004;350(21):2151-2158.
Daubert JP, Zareba W, Cannom DS, et al, for the MADIT II Investigators. Inappropriate implantable cardioverter-defibrillator shocks in MADIT II: frequency, mechanisms, predictors, and survival impact. J Am Coll Cardiol. April 8, 2008;51(14):1357-1365.
Poole JE, Johnson GW, Hellkamp AS, et al. Prognostic importance of defibrillator shocks in patients with heart failure. N Engl J Med. September 4, 2008;359(10):1009-1017.
Mitka M. New study supports lifesaving benefits of implantable defibrillation devices. JAMA. July 8, 2009;302(2):134-135.
*5: Poole JE, et al. Prognostic Importance of Defibrillator Shocks in Patients with Heart Failure. N Engl J Med. 2008;359:1009-17.
James PD, et al, Inappropriate Implantable Cardioverter-Defibrillator Shocks in MADIT II: Frequency, Mechanisms, Predictors, and Survival Impact. J Am Coll Cardiol. 2008; 51:1357-65.
*6: 不整脈デバイス工業会調べ

 

●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
http://www.medtronic.co.jp/

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