クラウドPACSソリューション「XTREK F.E.S.T.A」/ ユーザー事例 石巻市立病院(ジェイマックシステム)
震災の経験からBCP対策としてクラウドPACSを導入。地域医療の拠点病院として,再生をめざす。

2017-2-1

ジェイマックシステム

PACS関連


東日本大震災と石巻市立病院の再建

2011年3月11日,宮城県沖を震源とする大地震は石巻市にも甚大な被害をもたらした。港湾近くに立地していた旧石巻市立病院は,津波により1階部分に設置してあった電子カルテおよびPACS関連のサーバー,CT,MRIなどの医療機器すべてが浸水,損壊し,病院としての機能を完全に失った。地域においても,石巻市医師会所属の全医療機関が被害を受け,被災した地域住民への医療提供を維持するため,同院は1か月後には仮診療所を開設,その1年後には,多くの被災者が入居している開成地区の仮設団地内に開成仮診療所を開設している。国,自治体による復興計画が進み,5年半経過した2016年9月,沿岸部から離れた石巻駅にほど近い市有地に,住民が待ち望んでいた新病院が開院した。

新しく建築された石巻市立病院

 

石巻市立病院 院長 伊勢秀雄氏に聞く

─住民の皆様が待ち望んでいた新病院が2016年9月に開院しました。新病院の特徴と概要についてお聞かせください。

伊勢秀雄 院長

伊勢秀雄 院長

新病院はJR石巻駅前,徒歩で2,3分という交通の利便性が高い立地に建築されました。沿岸部からは少し離れた立地ですが,震災時は津波による直接の水害ではなく,内水の排除がうまく機能せず水がたまり,1m弱の浸水がありました。そのため1階は駐車場に充て,病院本体を置かず,2階以上に病院機能を配置,7階建てとなっています。外来受付および診療,各検査室などは2階に,3階から7階には手術室や化学療法室,病室を配置しています。また,1階と2階の間には免震装置を設置,中間免震構造を採用しました。病床数は全体で180床で,この地域にはなかったがん専門の緩和病棟を7階に20床,全室個室で設置しました。5階と6階は療養病棟で40床,一般病床が120床となっています。
診療科は内科,外科,整形外科,放射線診断科,麻酔科,リハビリテーション科の計6科に絞ってのスタートとなりました。内科については,従来のような専門科ではなく,一般内科,循環器内科,消化器内科の総合診療を中心とした診療としています。

─新病院では急性期に加えて,回復期,慢性期の医療を提供する病院への転換をめざしているとお聞きしていますが,その経緯についてお聞かせください。

震災直後に政府から地域復興についての指針が出ており,その中で医療については,「地域で完結する医療,急性期から慢性期に至るシームレスな医療体制を構築し,機能分化・連携を進め,地域全体として滞りのない医療の流れをつくる」と示されています。また,宮城県においても震災後に医療の復興に関しての提言が出されています。石巻地域において,石巻市立病院は石巻赤十字病院との機能分化・連携を進めるよう提言されており,それらを踏まえ,今回の再生プランの基本計画を立てています。従前は急性期医療のみであった体制を,急性期から慢性期までの医療を幅広く提供する体制へ転換します。ただし,約15万人の人口の石巻市において,急性期を担う病院が赤十字病院のみというのは,リスクを考慮すると問題があります。急性期の医療提供も私たちの大きな役目であり,加えて,今までに不足していた回復期・慢性期への対応も補っていくという考えです。また,高齢化が進んでいる現状,さらに今後新しい大規模な医療施設が増える状況にないということから,在宅医療の支援病院としても施設基準を取得,各医師会所属の施設と連携していく予定です。現在,石巻市では,地域包括ケア活動を大きな事業として推進しているところですが,その中の在宅医療については,石巻市立病院の直接的な在宅医療提供に加え,医師会の先生方が診療しやすい環境の構築および支援をすることで,地域住民へ,24時間365日の医療体制を提供できると考えています。

─貴院の特色や特に力を入れている活動についてお聞かせください。

新病院では診療科を少なくし,内科を総合診療という視点で行っていきますが,東北医科薬科大学が2016年4月から医学部を開設し,地域医療教育サテライトセンターを当院に設置することになりました。今後当院での研修で,地域医療・総合診療を経験してもらい,この石巻地域で活躍する医師をめざしてもらいたいという目的があります。また,19番目の専門医としての総合診療医についても検討されています。総合診療という観点では,当院には4名の指導可能な医師がいます。石巻地域外から来て,当院を中心に研修,専門医の資格を取得してもらうこと,若い医学生や医師を地域全体で育てていくことを病院として考えています

─貴院では山形市立病院済生館と電子カルテデータの相互保管を行っていたとお聞きしています。この経緯についてお聞かせください。

旧病院は1998年1月に開院したのですが,10年ほど経過した時期に,オーダリングシステムの更新と診療報酬改定(2008年度)がちょうど重なり,電子カルテの導入を決断しました。導入に当たり,いくつかの施設見学を進め,山形市立病院済生館もそのうちの一つでした。その後,実際の入札でたまたま済生館と同じベンダーのシステムを導入することになり,準備を進める中で,運用上の相談やマスターの構築など,電子カルテの導入を通して親密なお付き合いをしていました。半年ぐらい経過した段階で,電子情報のバックアップという観点から相互にバックアップサーバーを持ち合うシステムを構築することになりました。これは済生館の平川秀紀館長の先見の明でもありますが,なんらかの緊急事態が生じ医療情報データを喪失した場合,診療提供を継続することができず,幾分でもリスクを減らすためには病院としてのBCP対策が必要と考えていました。私自身の経験においても,日常,パソコンを使用していて,データをなくすことも多々ありましたから,電子情報の脆弱性とバックアップの重要性を感じていました。システム構築に関しては予算も限られており,また当時はクラウドサービスも高額でしたので,システムベンダーと協力し低コストで相互に電子カルテデータをバックアップすることとなりました。導入に関しては両院とも公立病院ということもあり,2010年度の予算で計上,環境準備を進め,翌年の2011年2月1日から相互バックアップを開始しました。そして,その40日後に東日本大震災が発生し,幸いなことに,当院のデータが済生館に残っていたということです。

─今回,弊社のクラウドPACSを導入されましたが,システム導入の経緯,導入に際して留意した点についてお聞かせください。

実は今回の震災では,津波によりPACSサーバーが浸水してしまいましたが,幸いなことに損壊は免れ,データを復旧することができました。ただし,高額な費用と時間が必要でした。また,肝がんなどの経時的な画像の変化を確認する必要のある疾患の患者さんも多く,現在は石巻赤十字病院に通院しているため,過去画像データの送付依頼もあります。コスト面で考えると現在は,クラウドという選択肢があります。今日,病院経営というのは決して楽ではない,まして当院は開院したばかりですので,初期投資もランニングコストも少なくということを絶えず考えています。そのような中で今回電子カルテベンダーから,電子カルテと親和性の高いジェイマックシステムのクラウドPACSを紹介されました。その後デモンストレーションを行い,クラウドということでデータの保存性やセキュリティを検討,以前使用していたPACSと比較しても機能的な遜色もなく,使いやすい。それならば質が担保され,費用も抑えることができ,いざというときのバックアップも万全ということで採用に至りました。
選定については,新病院建築という時間的な余裕がない状況でしたので,勤務している数名の医師と放射線室の診療放射線技師により検討を重ね,決めています。

─石巻医療圏における地域医療連携について,石巻市立病院の計画や取り組みをお聞かせください。

現在,開成仮診療所とはネットワークを結び,電子カルテとPACSを共有しています。また,震災の津波で被害を受け,全壊した雄勝病院ですが,現在は仮診療所を開設,新しく雄勝診療所として建築中で,寄磯診療所とともに2016年度中に連携する予定を立てています。石巻市立牡鹿病院とも,ネットワーク連携を行う予定です。
民間の連携としては,宮城県で行っているMMWINという医療福祉情報ネットワークがあります。県内全域を対象とし,ネットワーク化と電子カルテ情報のバックアップを目的に,厚生労働省のSS-MIX2に準拠したシステムづくりを行っています。今後これらネットワークが進展し,情報共有が可能になることで,地域での有効な情報活用が時間差なくできる体制が段々とできていくと思います。

1階入口看板

1階入口看板

2階エントランスホール

2階エントランスホール

   
開成仮診療所

開成仮診療所

放射線室のXTREK VIEW

放射線室のXTREK VIEW

 

放射線室 技師長 佐々木 喬氏に聞く

─放射線部門の概要についてお聞かせください。

佐々木 喬 技師長

佐々木 喬 技師長

現在,診療放射線技師が6名体制で,各検査の撮影に当たっています。検査機器は,一般撮影が2台,X線TVが2台,マンモグラフィ,80列CT,1.5T MRI,血管撮影という構成です。9月に開院したのでまだ検査数は多くありませんが,
1か月間の検査数はCTが約300件,MRIが約100件,一般撮影は約1000件です。来春から健診を予定していますので,ほかの検査も含めて徐々に増えると予想しています。

─放射線部門の特長をお聞かせください。

診療科が内科,外科,整形外科が中心ですので,胸部・腹部領域,整形領域の撮影が多く,次に多くはないですが頭部領域となっています。
旧病院では急性期医療を中心に行っていましたので,前述以外にも小児科,耳鼻科,眼科といった分野での撮影もありましたが,新病院では診療科が限定されており,慢性期・回復期への医療を提供するということで,高齢な患者さんの撮影が多くなっています。

─震災発生時の状況と,放射線部門における被害,発生した問題などについてお聞かせください。

地震発生時,私はCTの撮影中で,患者さんが寝台に寝ており,ちょうどスキャンを始めるところでした。強い揺れが続いたため,すぐに撮影室に入ることができず,いったん収まってから患者さんに降りてもらい,階段で病室に戻ってもらいました。他では心臓カテーテル検査も行っていましたが,検査は終了して止血中でしたので,終了後に同じように病室に戻ってもらいました。地震直後の放射線部門全体の状況としては,大きな物が倒れるようなことはなく,机や椅子が動いたり,本や書類が崩れる程度で,装置自体の被害はない状況でした。しかし,その後の津波により1階部分がすべて水没,放射線部門もすべて1階にあったため,検査装置や各端末・サーバーなどのすべてが使えなくなりました。病院自体としては,地震の揺れによる被害はそれほど大きいものではなかったと思います。大きな地震でしたので,すぐにトリアージ体制へ移れるよう準備をしている最中,大津波警報が発令,職員および入院・外来の患者さんを3階以上へ避難させました。その後,3日間外部との連絡がとれず,外科部長と事務次長が瓦礫をかき分けて市役所へ救助を要請,DMATのドクターヘリで患者さんの搬送を始めました。入院患者さんは約150人ほどいましたので,ドクターヘリだけでは搬送ができず,自衛隊にも救助を要請,最後の患者さんの搬送が終わったのは4日目の夜で,私たち職員が病院から脱出したのは5日目の朝でした。

─浸水したPACSサーバーのデータを復旧されたとお聞きしていますが?

当時,内科の医師からデータを復旧できるならしてほしいという強い要望があり,浸水したPACSサーバーからのデータ復旧を試みることになりました。病院に残されている瓦礫を撤去し,サーバーラックからハードディスクを取り出してメーカーの方にお願いしました。幸いなことにPACSサーバーのデータは復旧できましたが,動画サーバーと内視鏡サーバーは,残念ながら復旧できませんでした。データの復旧には約2か月の時間と高額な費用がかかりました。

─今回弊社のクラウドPACSを導入されましたが,留意した点についてお聞かせください。

震災を経験し大切な医療データを失いましたが,院外に保管してあれば復旧が容易になります。新病院を開院するに当たり,何らかの方法でバックアップを院外に保管することは考えていました。最終的な決め手は,今回の新病院の運用を踏まえた上でのサーバーの一元管理が挙げられます。放射線画像に加えて,内視鏡,超音波,血管撮影動画など,これらをPACSサーバーで管理できることが条件でした。また,超音波と内視鏡のレポートシステムについても評価しました。これらの優位点に加え,セキュリティを担保したクラウドシステムということが最終的な評価と決め手につながったと思います。

浸水したサーバーラック

浸水したサーバーラック

 

*さらに詳しいインタビューはジェイマックシステムのホームページで!
URL http://www.j-mac.co.jp/case/index.html

 

●問い合わせ先
株式会社ジェイマックシステム
〒060-0034 札幌市中央区北4条東1丁目2-3 札幌フコク生命ビル10F
TEL 011-221-6262
E-mail sales@j-mac.co.jp
URL http://www.j-mac.co.jp

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