笹川内科胃腸科クリニック × Medicom-HRⅢ(パナソニック ヘルスケア)
電子カルテシステムのモバイル端末と地域連携機能を活用し地域の患者の“安心”を支える

2017-7-3


山中賢治院長

山中賢治院長

笹川内科胃腸科クリニックは,患者の高齢化に伴いニーズの高まる訪問診療への対応を強化してきた。2015年に電子カルテシステムをパナソニック ヘルスケアの医事一体型の「Medicom-HRⅢ」へと更新したことで,業務効率の向上だけでなく,訪問診療や地域医療連携において,大きな効果を生んでいる。四日市医師会の病診連携担当理事も務め,地域の医療・介護連携に尽力する山中賢治院長に,Medicom-HRⅢの活用や地域医療連携の状況についてインタビューした。

在宅で父の看取りを経験し患者さんが最期まで安心して自宅で暮らせる医療を実践

─開院の経緯と診療の特徴をお聞かせください。

そもそも当院は,病院を定年退職した父が開業準備を進めていたのですが,そのさなかに父が脳卒中で倒れたため,私が米国から急きょ帰国して引き継ぐことになりました。1996年に内科医である妻(副院長)とともに開院し,家族で父の在宅介護をしながら診療を行っていました。その後,父は肝臓がんを発症し,最期は自宅で看取ったため,実体験として在宅医療を経験しました。
開院当初は,生活習慣病の予防に重点を置いて診療を行っていましたが,近隣に引っ越してきた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんからの依頼をきっかけに,訪問診療を開始しました。また,高齢になって通院困難となる患者さんも増えてきたことから,2014年7月からは水・金曜日の午後は訪問診療に充てています。現在は,機能強化型在宅療養支援診療所として年間20人ほどを在宅で看取っています。

─地域医療はどのような状況ですか。

四日市医師会が2006年に在宅医療推進委員会を発足させ,この10年で機能分化と連携がかなり進みました。市内には3つの急性期病院がありますが,紹介率よりも逆紹介率の方が高い状況です。市北部に在宅医療専門クリニックがあるほか,5,6軒のクリニックで構成する在宅支援グループが3つあり,各エリアの在宅患者さんをカバーする体制が整っています。

モバイル端末やiPadも導入しITによる業務効率化を図る

─IT化の経緯と現在のシステム構成を教えてください。

初めは紙カルテとレセプトコンピュータからスタートしました。この際,メディコムのシステムを選んだ理由は,シェアが高く安心感があることと,トレーニングなどサポートが良かったためです。開院から時間が経つにつれて紙カルテの保管場所が不足してきたことから,2009年に電子カルテシステム(以下,電子カルテ)「Medicom-DP/X」を導入し,2015年に医事一体型電子カルテ「Medicom-HRⅢ」へと更新しました。
Medicom-HRⅢは,メインサーバを使用頻度の少ない検査室に設置し,クライアント端末を7台導入しました。万が一のサーバ障害時に備え,受付の端末を代替となるセカンドサーバに設定しています。また,モバイル端末(ノートPC)とタブレット(iPad)を2台ずつ導入しました。

受付(奥)や薬局(手前)に電子カルテの端末を設置し,看護師,医療事務員,薬剤師が業務に使用している。

受付(奥)や薬局(手前)に電子カルテの端末を
設置し,看護師,医療事務員,薬剤師が業務に使用している。

iPadも2台導入した。看護師が院内を持ち歩き,患者さんへの問診や検査の記録に役立てている。

iPadも2台導入した。看護師が院内を持ち歩き,
患者さんへの問診や検査の記録に役立てている。

 

─どのように運用していますか。

当院には医師2人,看護師4人,医療事務員4人,薬剤師2人が在籍し,それぞれの権限で電子カルテを使用しています。薬剤師がいることも当院の特徴の一つですが,これは薬剤師にもカルテをきちんと見てもらい,処方理由などを理解した上で,患者さんに説明してほしいという思いがあるからです。
訪問診療にはノートPCを持参し,訪問先から診察室の端末をリモート操作することで,カルテの閲覧・入力が可能です。看護師の業務効率向上のために導入したiPadは,問診や尿検査の記録など,院内のさまざまな場面に持ち歩いて使用しています。

─Medicom-HRⅢの使用感はいかがですか。

カルテ機能の使い勝手が非常に良くなっています。処方の入力や訂正などがとても容易になりました。
また,医事一体型のメリットも感じています。診察時に患者さんから会計について聞かれることもあるのですが,その場で会計チェックが行えます。レセプトチェックをシステム上で漏れなく簡単にできることも大きいですね。随時レセプト点検が可能なので,保険請求時期の残業や持ち帰り作業がなくなり,身体的に楽になりました。診療報酬改定によるバージョンアップがオンラインで可能になったのも,非常に助かっています。

「地域医療連携」機能の追加で病院との双方向連携を強化

─地域医療連携ネットワークについて教えてください。

Medicom-HRⅢの地域医療連携機能で,三重医療安心ネットワークに患者情報を容易にアップロードでき,病院との双方向連携を可能にする。

Medicom-HRⅢの地域医療連携機能で,三重医療安心ネットワークに患者情報を容易にアップロードでき,病院との双方向連携を可能にする。

三重県では,ID-Link(エスイーシー社製)により中核病院とクリニック・薬局・訪問看護ステーションをつなぐ「三重医療安心ネットワーク」(以下,ネットワーク)が運用されています。四日市市内でも2014年に運用が始まりましたが,中核病院が開示した情報を開業医が閲覧するという一方通行の連携のため,四日市医師会では開業医にノート機能への情報入力を呼びかけ,双方向の連携を促しています。
さらに,介護へもネットワーク利用を広げたいと考え,四日市市が独自にサーバを設置してID-Linkとつなげ,そこに介護事業所からアクセスするという運用を2016年4月より開始しました。独自サーバは在宅という架空のベッドと考えるといいのですが,介護事業所からはID-Linkのノート機能のみにアクセスでき,ノート欄に開業医がアップしたデータの閲覧と,入力が可能です。SNSのように医療・介護の関係者が患者さんの情報を双方向に共有できる運用が実現しました。
─貴院では地域医療連携ネットワークをどのように活用していますか。
開業医がネットワークを介して病院に情報提供するには,ノート欄への入力作業が発生するため,多くの開業医は十分にはできていないのが実情です。当院では,Medicom-HRⅢにID-Linkと連携できる「地域医療連携」機能を追加したので,ネットワークに当院のデータを簡単にアップロードできています。多少のコストはかかりますが,開業医が持つ情報を,手間を掛けずに病院に伝えることができ,患者さんの診療に役立ててもらえると考えれば,メリットは十分にあります。

ITを基盤とした連携がこれからの在宅医療を支える

─地域医療連携におけるIT化の意義とは。

今後,在宅医療のニーズはますます高まり,地域の医療・介護連携はいっそう重要になります。その中で,電子カルテの果たす役割は大きいと思います。ノートPCにより訪問先でも診察室と同じように診療を行え,地域医療連携ネットワークと容易に連携が可能なことで,双方向の情報共有による医療の質の向上も期待できます。ITを利用した地域医療連携が進むことを見据え,院内のITシステムは初期導入しておく方が楽でしょう。地域内の多くの施設と連携しやすい体制を整えることが,患者さんが安心して自宅で暮らせる環境づくりにつながると考えます。

 

 笹川内科胃腸科クリニックのパワーアップポイント

 

Point 1 訪問先でも診察室と同じようにカルテを操作できるモバイル端末

診察室のカルテを遠隔操作
Medicom-HRⅢの「モバイル端末」ソフトは,ノートPCからパスワード認証で院内の端末にログインして遠隔操作する方法で,院外からの電子カルテ操作を可能にする。データ自体は院内のサーバにあるため,万が一,ノートPCの紛失や盗難,破損するようなことがあっても,情報漏えいやデータ消失の心配はなく,セキュアに使用できる。
Medicom-HRⅢへの更新と同時にモバイル端末を導入するまでは,電子カルテがあっても訪問診療では紙カルテが必要だった。訪問先で手書きした記録を,クリニックに戻ってから電子カルテに入力するという二重の作業を行っていたが,現在は,訪問先で診療にかかわるすべての業務を完結できるようになり,負担軽減につながっている。

訪問先で処方せんを発行し患者家族の負担を軽減
また,山中院長は,訪問診療にモバイルプリンタを持参して処方せんも発行しており,「以前は,患者さんのご家族にクリニックに処方せんを取りに来てもらうこともありましたが,その場で処方せんを出せるようになり,ご家族にとっても大変便利だと思います」と評価している。
自宅でも使用できるため,状態が心配される在宅患者がいる場合にも,帰宅後にいつでもカルテを見られることは心強いと山中院長は述べる。モバイル端末は,院内から地域へと活動の場が広がる医療を強力に支えるツールとなる。

図1 患者宅でも診察室と同じような環境で診療が可能

図1 患者宅でも診察室と同じような環境で診療が可能

図2 山中院長と珠美副院長の二人三脚で地域の在宅医療を支えている。

図2 山中院長と珠美副院長の二人三脚で
地域の在宅医療を支えている。

 

Point 2 「地域医療連携」機能で容易に双方向の情報連携を実現

患者のための双方向情報共有
三重医療安心ネットワークは,中核病院が情報を開示して参加施設が閲覧する運用が基本だが,四日市医師会ではより効果的な連携をめざし,ID-Linkのノート機能を活用した双方向の情報共有や,3病院を包括した同意書による承諾など,独自の運用を発展させている。医師会の担当理事として地域医療連携の旗振り役を務めてきた山中院長は,Medicom-HRⅢの「地域医療連携」機能を用いて,同院の検査結果や処方をネットワーク上に開示している。
「ネットワークを運用する中で,開業医の持つ情報は,在宅や病院でも必要だと感じました。Medicom-HRⅢでは地域医療連携機能により,ネットワークに参加している患者さんを登録しておくと,カルテを閉じると同時にデータが自動送信されます。手間をかけずにデータを共有できる機能は大変便利で,患者さんがどこでも安心して医療を受けられる環境づくりに貢献すると思います」(山中院長)

ネットワークの運用を工夫しより効果的な地域医療連携をめざす
介護までネットワーク利用を広げた四日市市の運用は効果を発揮し,患者を中心とした医療・介護の関係者の密な連携が進んでいる。今後は,複数のクリニックで構成している在宅支援グループでの運用も予定している。主治医に代わり,グループの別の医師が対応する場合に,ネットワークで患者情報を共有することで,より適切な診療を行えることが期待される。電子カルテによる容易な情報共有は,双方向の情報連携の推進力となるだろう。

図3 ネットワークの患者カレンダーから同院の検査結果や処方も参照できる。

図3 ネットワークの患者カレンダーから同院の
検査結果や処方も参照できる。

 

笹川内科胃腸科クリニック

〒510-0961 三重県四日市市波木町305
TEL 059-322-9538
診療科:内科,外科,消化器内科,肛門外科


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