大学発ベンチャーが開発した,医事データの2次利用を可能にする「e-Byoin指標システム」で病院経営を支援
(株)かごしま医療ITセンター 代表取締役社長 宇都由美子氏 インタビュー

2013-7-10


宇都由美子氏

宇都由美子氏

株式会社かごしま医療ITセンター (KGMIC,カゴミック)は,鹿児島大学発のベンチャー企業として,大学病院での開発ノウハウを生かした医療情報システムの提供を行ってきた。2013年6月に,医事データの2次利用によって病院経営を支援する「e-Byoin指標システム」を発売した。鹿児島大学医学部・歯学部附属病院医療情報部部長で,KGMICの代表取締役社長を務める宇都由美子氏にe-Byoin指標システム開発の経緯と特長を聞いた。

●鹿児島大学の病院情報システム開発のノウハウを生かす

かごしま医療ITセンター(KGMIC)は,2005年に設立された鹿児島大学発のベンチャー企業です。鹿児島大学病院では,1984年に当時電子計算機推進委員長の井形昭弘先生のリーダーシップのもと,大学病院としては初めての発生源入力によるオーダリングシステムを構築しました。病院情報システムの黎明期だった当時,われわれとともにシステムを創り上げていくパートナーとしてタッグを組んだのがNECでした。井形先生が掲げた「システムによる業務改善は患者さんのために」という精神が院内に浸透していたことで,大学病院としては初めての看護支援システムや物流システムの構築など,先進的なシステム開発に取り組むことができました。国立大学法人化をきっかけに,この成果を広く一般の医療機関で活用していただけるように,立ち上げたのがKGMICです。設立にあたっては,NECをはじめ日本事務器,NECシステムテクノロジー,シーエスアイ,南日本情報処理センター,マルマンコンピュータサービスの出資を得ています。
KGMICのビジネスの強みは,大学病院という現場のノウハウを生かしつつ,大手ベンダーではカバーしきれないニッチな領域での開発を手掛けることです。その代表的なものがマスタです。われわれは,「医学管理料ナビ」として,“見えない技術料”といわれる医学管理料を電子カルテで算定できるようなロジックを組み込んだマスタを開発しました(ソフトウエアの開発はNEC)。
もうひとつは,現場のニーズをキャッチして,いち早く製品化することです。基幹システムの開発は複雑で,開発する企業の意思決定にも時間がかかっています。ベンチャーとしてのフットワークを生かして,医療現場での問題点や改善の要求をシステムに迅速に反映させて開発していくことです。その成果の1つが,今回発売した「e-Byoin指標システム」です。

●医事データを簡単,自由に2次利用できる「e-Byoin指標システム」

e-Byoin指標システム(EBIS)は,データの2次利用,特に医事システムのデータを,診療内容の充実や経営改善に,自由に簡単に活用することを目的に開発しました。これまで,医事データは定型的な統計や帳票としては利用できましたが,戦略的にデータを使おうとすると手間と時間が必要でした。EBISでは,ITが苦手な職員でも簡単に使えるシステムをめざしました。
もうひとつは,医事のデータをもとに“意思決定”が可能なデータを提供することです。具体的には「目標管理」が可能な機能を提供できることです。目標管理は企業では当然のことですが,診療報酬という,いわば公定価格で事業を遂行している多くの医療機関においては,意外と取り組まれていません。“前年の医業収入の何%アップ”をめざせと言われても,現場としては具体的な行動に移しにくいからです。EBISでは,過去3年間の医事データから実績を解析し,目標とする増収のためには1週間に入院患者を何人増やせばいいのかという,具体的なデータを提示できます。医事データという実績を根拠とし,さらに行動した結果を確認できることは,スタッフの安心感や自信に繋がり改善のサイクルが回るようになります。
次に,オプション機能の1つですが,DPC(Dファイル分析)があります。DPC分析では,平均入院日数などの数値を全国のデータで計算し,自分たちの診療実績がどれくらいのレベルなのかを,具体的かつ客観的に把握することができます。また,2年ごとの診療報酬改定により,DPCの内容が変更になった時にも,新旧のマスタを比較したシミュレーションが可能で,影響を見極めて経営に生かすことが可能です。
鹿児島大学病院では,2009年にDPC医療機関別係数の効率化指数で全大学病院中最下位となり,経営の健全化が求められました。そこで,EBISの原形となった医事データの2次利用の仕組みを利用して,具体的な数値目標の設定と現場の行動レベルまで落とし込んだ実践計画によって,平均在院日数の短縮と入院医療へのシフトなど大きな成果を上げることができました。

●現場の課題を解決する“ニッチ”な開発を続ける

電子カルテなどシステム化は進んでいますが,同時に診療報酬の算定条件はますます複雑になり,医療現場にはまだまだ多くの課題があります。大学発,現場発のベンチャーとして,医療の質を損なうことなく適切な保険診療を支援できるように,今そこにある,ちょっとした問題や要望を解決するシステムを開発していきたいと考えています。

 

 

医事データ分析支援システム「e-Byoin指標システム」

EBIS

医事データ分析支援システム「e-Byoin指標システム」は,“もっと簡単に医事統計を作りたい!”,“経営指標として医事データをもっと簡単に活用したい!”というユーザーニーズをかなえるシステムです。医療事務システム「MegaOakIBARSシリーズ」(NEC),「MAPSIBARS」(日本事務器)の医事データを有効活用し,病院経営に役立つ指標を提供します。
e-Byoin指標システムは,次の4つの機能を提供します。

1. 稼働診療実績

病院経営指標・13指標をグラフと一覧でわかりやすく提供します(図1a)。
〈13指標〉
(1)稼働額 (2)新入院患者数 (3)平均在院日数 (4)病床稼働率 (5)病床回転率 (6)入院診療単価 (7)外来診療単価 (8)外来患者数 (9)手術件数 (10)院外処方箋率 (11)紹介患者率 (12)入院診療単価分布表 (13)外来診療単価分布表
一覧からドリルダウンすることで,構成データを確認することも可能です(図1b)。また,グラフはXPS形式,一覧はCSV形式で出力可能で,さまざまな資料で活用できます。

図1 稼働診療実績機能

図1 稼働診療実績機能 a:13指標をグラフと一覧で表示

 

図1 稼働診療実績機能 b:ドリルダウンによる分析が可能

図1 稼働診療実績機能 b:ドリルダウンによる分析が可能

 

2. 統計・帳票作成

医事データをより利用しやすいデータマートとして提供。これまでよりもっと簡単に統計・帳票を作成できます。統計帳票テンプレート作成機能を使用すれば,わずか5ステップで,統計帳票が完成します。さらに,次の7つの統計をサンプル提供します。

1)日別外来患者数統計
2)科別入院患者数統計
3)病棟別入院患者数統計
4)日別入院患者数統計
5)紹介患者・救急患者数
6)科別診療区分別稼働額集計
7)医師別診療区分別稼働額集計

そのままお使いいただくこともできますし,自院向けにアレンジするのも簡単です。作成した統計帳票の数字をクリックすると,その構成データを確認できます。統計帳票テンプレート機能で作成したものは,一覧画面で管理します。あらかじめ設定した時間に統計帳票の自動作成をすることもできます。

3. 目標管理(シミュレーション)※オプション

病院経営に不可欠な数値目標の設定は,意外にむずかしいものです。数値目標の設定には,診療現場の理解が得られる根拠(エビデンス)が必要です。達成したい稼働額から,平均在院日数や病床の回転率,そして,新規入院患者の獲得目標へと豊富なシミュレーションができる機能を提供します(図2)。

図2 ‌目標管理(シミュレーション)例

図2 ‌目標管理(シミュレーション)例

 

4. DPC(Dファイル分析)※オプション

様式調査用提出データのDファイルからDPC分析を行います。

(1)退院患者数分析:
入院期間Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,2SD超 それぞれの期間での退院患者数に注目した分析です。

(2)特定入院期間Ⅱ分析:
全国平均である入院期間Ⅱで比較することにより,診療科,病棟を公平に比較・評価することができます(図3)。

図3 DPC(Dファイル分析)例

図3 DPC(Dファイル分析)例

 

(3)平均入院日数分析:
全国のデータと比較することにより自院での改善余地のある個所が見えてきます。

(4)旧新比較分析:
DPCが変更になったことによる影響度を知ることができます。
DPC分析に必要なマスタはKGMICから提供しますので,ユーザーのマスタメンテナンスの手間はかかりません。

e-Byoin指標システムは,鹿児島大学病院(600床規模),400床規模1病院,200床規模2病院の計4病院にご協力いただき,操作性・統計結果の信頼性・レスポンス等を評価し,改善を行いました。医事データの2次利用は,病院の現場力を変え,病院経営改善の推進力となる,大きな可能性を持っています。e-Byoin指標システムは,医事データの2次活用をお手伝いします。

 

問い合わせ先:株式会社かごしま医療ITセンター(KGMIC)
鹿児島市桜ヶ丘8-35-1
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 医療情報部棟1階
e-mail:info@kgmic.com


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