高崎健康福祉大学附属クリニック × Bone Suppression処理(コニカミノルタジャパン)
Bone Suppression処理の使用経験

2016-12-1


図2 右前14°BS画像(模擬腫瘤あり)

図2 右前14°BS画像(模擬腫瘤あり)

はじめに

当院は,2014年10月に開院し,その際ワイヤレスFPD「AeroDR」(コニカミノルタ社製)を導入した(図1)。2016年4月には,大学の教職員と学生を対象に健診業務を開始した。健診項目の中で基本とされる胸部X線撮影は,簡便さの面から見ても臨床的に重要である。その目的は,重大な疾患の可能性がある異常所見を見落とすことなく拾い上げることである1)。そのため,当院系列の高崎健康福祉大学・児玉直樹准教授の助言もあり,読影の補助として骨減弱処理を行う“Bone Suppression処理(BS処理)”を搭載したコニカミノルタ社製「NEOVISTA I-PACS EX」を健診用に導入した。2016年度は,学校保健法の対象者のみ1200名の撮影を実施した。読影は,当院内科医が行ったが,骨と重なる部分の読影のしやすさから,予測よりも格段に効率的であった。2017年度は3500名に増える予定であるが,質の高い診断を提供できる手応えを得ている。

図1 高崎健康福祉大学(左)と当院外観

図1 高崎健康福祉大学(左)と当院外観

 

一般診療での使用経験

健診だけでなく,一般診療においてもBS処理を利用している。診察の際に医師は,患者様に原画像とBS画像とを切り替えて見せて結果説明を行っており,「肋骨がないことでとても見やすい」と評価している。他院への紹介時には,原画像に加え,BS画像もコピーして渡しているが,他院の医師からも好評を得ている。しかし,当院医師より「骨と病変が重なると両方が消えることはないか?」と質問を受け,検証を行った。

当院で行った2つの検証内容

1.ポジショニング不良がBS処理に及ぼす影響の検討
胸部ファントム「N1“ラングマン”」(京都科学社製)を立位P-A正面から前傾,左右傾斜,左右前,それぞれ14°まで変化させ,診療放射線技師と医師の10名で画像の視覚評価をした(図2)。どの方向においても,BS処理に影響はなかった。通常考えうるポジショニングでは,十分に骨減弱されることがわかった。

2.処理後の腫瘤の視認性の検討
胸部ファントムの肺野内の模擬腫瘤を視覚評価した(図2)。処理後の方が見えやすく,視認性は向上した。ただし,前後の両肋骨に重なる位置にある一部の腫瘤が低い評価であった。そこで,その位置の信号値プロファイルを解析したが,骨の信号値だけが減弱され,腫瘤の信号値に変化はなかった。これにより,視認性は背景濃度の影響も受けると示唆され,それが今回の評価結果に表れたと考えている。取り扱い説明書にも,BS画像は参照用画像であるため,それだけで診断しないようにとの表記があるが,観察には原画像とBS画像の比較が必須である。

まとめ

BS処理は,多種にわたる胸部疾患の診断にも有用であると考えられる。
読影能力向上に寄与する本機能にて,二次検査に先立つ開業医などにおける一次検査の診断精度が向上し,質の高い医療の提供へとつなげることが期待できる。
今後,病院,診療所などあらゆる医療現場で普及することと思われる。

●参考文献
1)佐藤雅史 : 極める! 胸部写真の読み方 第1版. 東京, 秀潤社, 2012.

櫻井 典子(高崎健康福祉大学附属クリニック放射線科)

 

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診療科目:整形外科,内科,リハビリテーション科

 

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