Halcyonの利用状況について 〜TrueBeamのベストパートナー?〜 
松本 賢治(近畿大学病院中央放射線部)
HalcyonとTrueBeamは本当にベストパートナーなのか? 座長:西村 恭昌(生長会府中病院放射線治療センター)

2023-9-13


松本 賢治(近畿大学病院中央放射線部)

本講演では,当院におけるHalcyonの運用を中心に紹介する。

Halcyonの特徴

Halcyonは,IGRTによる高精度な照射が可能なIMRT特化型装置で,VMATでは1回転30秒以下の高速回転が特長である。CBCTも最短17秒で撮影でき,リング型のため衝突の可能性がなく,マルチリーフコリメータ(MLC)は秒速5cmと高速に動作する。また,representative beam data(RBD)の使用が必須となっている。
ガントリ内の構造は,縦置き型加速器と遮蔽のための対向板およびEPIDが配置されている。また,jawコリメータはなく2層構造のMLCが搭載されている。幅1cmのMLCは,SX2バージョンより上下段が独立して動作可能になり,実効リーフ分解能は0.5cmとなった。iCBCTにより高画質画像で位置照合できる点も特長である。

Halcyonのビームデータ

立ち上げで用いるRBDについて検証した。percentage depth does(PDD)実測結果と比較すると,最大誤差は0.3%と一致率が高かった。また,OCRの実測結果との比較でも半影領域以外の最大誤差は0.5%であり,RBDデータおよび,あらかじめ調整されたエネルギーの精度に問題はないことが確認できた。当院では入念にビームデータを確認したため,搬入から治療開始まで3週間かかったが,要点を押さえれば2週間で立ち上げ可能だろう。
毎年のannual QAにおける4年間のquality indexの変化は測定誤差程度で,線質は非常に安定している。

VMAT planningの品質について

● 線量体積ヒストグラム(DVH):HPV関連中咽頭がん(OPC)治療例の計画標的体積(PTV),唾液腺,脊椎のDVHを比較したところ,VMATの主流である2arcではTrueBeamとHalcyonはほぼ同等であり,Halcyonの3arcは2arcよりもわずかに良くなった。
● VMAT照射時間(図1):2arcの照射時間は,Halcyonが1分強,TrueBeamが約2分で,治療を早く終えられることがHalcyonの利点である。CBCTの撮影時間も加味すると,その差はさらに開く。当院ではHalcyonでのVMATは1日33人を上限としているが,時間内に業務を終えることができ,スタッフのストレス軽減につながっている。
● MLCの違い:TrueBeamにはMillennium MLC,HalcyonにはSX2 MLCが搭載されている。SX2は,動作速度向上に加え,最大移動距離が28cmへと拡大した(Millenniumは15cm)。照射野が大きい場合には,Halcyonでのプランの方が線量分布が良くなる傾向がある。
● 4arc VMAT(図2):Halcyonでは4arcのVMATも2分強で照射できるため,患者の負担を軽減できる。当院では,肺がん症例に対して4arc VMATを行う際には,肺野の線量を下げるために,2arcを通常条件とし,残り2arcは照射領域を絞るといった工夫も行っている。
● MLC動作特性:頭頸部VMATプランについてTrueBeamとHalcyon のMLC動作特性を検証したところ,動作の複雑さ(MCS)はほとんど差がなく,治療MUの差はHalcyonの方が平均で100MUほど小さかった。また,leafの移動距離はHalcyonの方が大きかった。
● VMAT検証:HalcyonのVMATについてパス率(2mm,2%),PD(1mm,1%),電離箱でQA検証した結果,いずれも問題なかった。これまでVMAT検証でfailとなった症例はない。なお,Halcyonの最大の弱点はCBCTによる3軸補正で,特にピッチング方向の補正が困難なため,再セットアップが必要となる場合もある。

図1 VMAT照射時間比較

図1 VMAT照射時間比較

 

図2 4arc VMATの工夫

図2 4arc VMATの工夫

 

Halcyonの稼働後の状況

当院のHalcyonは国内2号機であったが,安定稼働を続けている。初期にはiCBCT 再構成用GPUの不具合があったが,通常のCBCTを使用して治療を継続できた。また,マグネトロンを予防的に2回交換しており,耐久性の向上が望まれる。
IMRTは現在,基本的にHalcyonで行っており,治療患者数は年間200人以上に増加した。2台体制で時間的にも余裕があるため,コロナ患者の治療にも対応できている。また,Halcyonの収支は年間2億円超で,約2年で装置本体のコストを回収でき,以降は黒字化できている。

まとめ

HalcyonはVMATに特化した装置で,治療時間の短縮が可能である。故障は少なく,安定して治療を実施できる。現状では定期的な部品交換が必要だが,当院ではTrueBeamの良きパートナーとなっている。

Halcyon 医療用リニアック:医療機器承認番号 22900BZX00367000
TrueBeam 医療用リニアック:医療機器承認番号 22300BZX00265000
放射線治療計画用ソフトウエア Eclipse:医療機器承認番号 22900BZX00265000


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