HalcyonとTrueBeamは本当にベストパートナーなのか?(臨床編) 
稲田 正浩(近畿大学病院放射線治療科)
HalcyonとTrueBeamは本当にベストパートナーなのか? 座長:西村 恭昌(生長会府中病院放射線治療センター)

2023-9-13


稲田 正浩(近畿大学病院放射線治療科)

当院では放射線治療装置の更新により,「TrueBeam」(2015年導入)と「Halcyon」(2019年導入)の2台が稼働している。更新後は強度変調放射線治療(IMRT)の件数が増加し,年間700〜900人の患者のうち約3割がIMRTとなっている。

装置の特性と使い分け

TrueBeamは使用可能な線質(X線,電子線)が多いため,深部/浅部病変に使用している。照射法は,三次元原体照射(3D-CRT),固定多門照射IMRT,強度変調回転放射線治療(VMAT)など幅広く対応し,electronic portal imaging device(EPID)やon board imager(OBI),kV-CBCT,「ExacTrac」(ブレインラボ社製)などを用いて画像誘導放射線治療(IGRT)が可能である。6軸補正でノンコプラナービームを使用できるため,頭尾側方向に長い照射野や定位照射に適している。このような特性から,当院ではTrueBeam を3D-CRT全般,定位照射,電子線治療,ノンコプラナーVMATに使用し,1日に20〜40人の治療を行っている。
Halcyon は,使用可能な線質は 6 MV の フラットニングフィルタフリービーム(FFF) のみ,IGRT は kV-CBCT のみ,3 軸補正のみ, コプラナービームのみという制約があるが,ガントリの回転速度が速いため高スループットに治療を行えることが大きな特長である。
当院では,VMAT全般にHalcyonを使用しており,1日に20〜30人の治療を行っている。HalcyonでのIMRTは全例CBCT照合が必要だが,前立腺がんや頭頸部がんは10分以内で照射を終了できる。1日2回照射や,照射の周数が増える複雑な症例にも問題なく対応できる。

Halcyonの利点

1.短時間でのCBCT
Halcyonでは照射時に毎回CBCTを行うが,kV-CBCTの所要時間は約17秒と短い。照射直前のCBCTは重要で,骨照合のみでは不安な病変や金属マーカー留置ができない症例では非常に有効である。
肺がんなどの頭尾側に長い症例では,3軸補正で対応しきれないことがしばしばある。その場合,緊急でリプランを行うことで可能なかぎり休止を短期間ですませることを重視する。Halcyonはスループットが良いため,検証なども比較的短時間で行うことができ,症例によってはリプラン決定から即日照射することも可能である。また,管腔臓器の内容量は骨照合ではわからないため,CBCTで確認することで予想外のターゲット変形や移動を検出できる事例があることをスタッフと共有し,ダブル・トリプルチェックを行うことが重要である。さらに,治療中に体型が変化すると正常臓器の線量が増加する場合があるが,毎回CBCTを撮影することで体型変化にも気づきやすく,早めにリプランを実施できる。
また,逐次近似法による補正「iCBCT」により,特に腹部領域の画質が向上するため,腹部臓器のIMRTにも適している。

2.大型ボア径
Halcyonはボア径が100cmと大きいことも利点で,標的中心にアイソセンタを置いてfull arcを用いても,寝台とリニアックが干渉することなく治療を実施することができる(図1)。また,アイソセンタを体厚中心に置いた場合の寝台の最低高が 85cmと低く,歩行可能な患者であれば自力で移乗でき,胸腔ドレーン留置などデバイスのある患者でも安心して照射できる。

図1 Halcyonの利点:大型ボア径

図1 Halcyonの利点:大型ボア径

 

TrueBeamの利点

1.ノンコプラナービーム
TrueBeamはノンコプラナービームを使用できる利点がある。頭上側からの照射で線量分布が良好になる鼻腔副鼻腔がんなどでは,Halcyonの4arc照射よりも脳幹や脳,視神経の線量を抑えることができる(図2)。頭蓋内への照射はExacTracでもズレなく照射できるため,症例によってはノンコプラナービームを優先しTrueBeamで治療している。
また,多発脳転移に対する脳定位照射において,TrueBeamでは1つのアイソセンタで迅速に治療を実施できる「HyperArc」を使用可能である。conformalな分布の作成にはノンコプラナービームが重要なため,TrueBeamが適していると言える。

図2 TrueBeamの利点:ノンコプラナービーム

図2 TrueBeamの利点:ノンコプラナービーム

 

2.long-SSD法による全身照射
患者を治療室壁側に寝かせてガントリを傾けて照射するlong-SSD法は,リング型リニアックでは不可能であり,当院ではlong-SSD法による全身照射をTrueBeamで実施してきた。ただし,最近の当院の検討ではHalcyonでもVMAT全身照射の可能性が示されているため,TrueBeamだけの利点ではなくなるかもしれない。

まとめ

幅広い疾患に対応できるTrueBeamに対して,Halcyonは前立腺,頭頸部,肺などの放射線治療の良い適応疾患をスピーディに治療することができる。それぞれの特徴やメリットを理解して使い分けることで,多くの患者への迅速な治療提供が可能になる。


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