ETHOS Therapy / IDENTIFY 
Sushil Beriwal, MD, PhD.(Varian, Vice President, Multi-Disciplinary Oncology, Medical Affairs)
Varian Update 座長:白井 克幸(自治医科大学附属病院放射線治療科)

2023-9-13


Sushil Beriwal, MD, PhD.(Varian, Vice President, Multi-Disciplinary Oncology, Medical Affairs)

がんの放射線治療においては,治療に伴う腫瘍の縮小や体重減少などによって危険臓器(OAR)や標的病変の形状や位置が変化することがある。このような場合に適応放射線治療(adaptive radiotherapy:ART)が有用である。バリアンのARTのトータルソリューション「ETHOS Therapy」は,放射線治療装置「Halcyon」をプラットフォームとし,人工知能(AI)を応用することで効率的なARTを実現したシステムである。本講演では,ETHOS Therapyの特長を中心に紹介する。

適応放射線治療の有用性と課題

ART(offline ART)は,治療期間中に取得したcone beam CT(CBCT)画像などを用いて,治療期間中の患者の臓器サイズや形状,位置の変化に合わせた再治療計画を行う手法で,治療計画の再作成には数日を要する場合がある。また,即時適応放射線治療(online ART)は,毎回の治療ごとに,その日のCBCT画像を用いて臓器や腫瘍の変化を加味した治療計画に基づき治療を実施する手法である。
ARTの導入前後における肺がん患者の放射線肺臓炎の発生頻度に関する検討では,ART導入後,局所制御を維持しつつ,重症あるいは致死的な放射線肺臓炎が有意に減少し,患者の延命に寄与することが報告されている。このように,ARTは優れた手法であるが,再治療計画などに伴う作業の追加や,治療時間の延長,限られた画質,診療放射線技師のトレーニングの必要性,被ばく線量の増加などの課題もある。そこで, ETHOS Therapyでは,さまざまな先進の技術を搭載することで,これらの課題を解決した。

ETHOS Therapyの特長

ETHOS Therapyにおけるonline ARTのワークフローは,AIとテンプレートを活用し,自動セグメンテーション機能と治療計画作成機能を軸として進めていく(図1)。CBCTを撮影後,患者が治療寝台に寝た状態まま,AIによるOARの自動輪郭抽出や複数のプランの作成が行われ,オリジナルのプランと比較して適切なプランを選択し,治療を実施する。これを毎回の治療ごとに行うのがdaily adaptationであり,ETHOS Therapyではこの一連のフローをわずか15〜20分で完了することができる。
また,ARTにおいて,CBCT画像の画質はきわめて重要である。逐次近似法を用いた画像再構成技術「Iterative CBCT(iCBCT)」では,従来のCBCT画像よりも解剖学的構造が明瞭に描出されるため,より正確な治療が可能となる。
放射線治療においては,治療中の患者の体動管理も重要である。体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」は,2つ以上の体表面画像誘導放射線治療(surface guided radiation therapy:SGRT)カメラを用いて,サブミリメートルの精度で患者の体表面情報をリアルタイムに提供することができる。IDENTIFY はETHOS Therapyはもとより,当社の放射線治療装置「TrueBeam」やHalcyonでも使用可能である。

図1 ETHOS Therapyのワークフロー

図1 ETHOS Therapyのワークフロー

 

ETHOS Therapyがもたらす価値

ETHOS Therapyに関する初期の研究では,OARの自動輪郭抽出が高精度に行えることや,non ARTと比較しARTでは計画標的体積(PTV)マージンを縮小でき,正常組織やOARの線量を低減できること,前立腺がんにおいてはすべての患者を15〜20分で治療でき,ARTを日常的に実施可能であることなどが,複数の論文で報告されている。また,骨盤領域におけるScheduled Plan(予定されていたプラン)とAdapted Plan(当日のプラン)を比較した検討では,対象患者の88%でAdapted Planが選択された(図2)。頭頸部においても同様に,15症例中14症例でAdapted Planの方が良好な線量分布が得られたとの報告もある。さらに,別の研究では,複数の疾患部位においてセッションごとにOARの位置と被ばく線量が大幅に変化すること,約65〜100%の症例においてScheduled PlanよりもAdapted Planが選択されることが示された。

図2 Adapted Plan(左)とReference Plan(右)の比較画面例

図2 Adapted Plan(左)とReference Plan(右)の比較画面例

 

まとめ

ETHOS Therapyは,AIを活用することでシンプルな治療計画とワークフローを実現し,標準的な治療時間内での迅速なonline ARTを可能とするシステムである。病変の変化に対応できるため,OARの線量低減にも貢献する。今後はさらに,局所制御の改善を示すデータを得るための研究を進めていきたい。

ETHOS適応放射線治療オンラインプランニングシステム:医療機器承認番号 30300BZX00075000
ETHOS適応放射線治療マネージメントシステム:医療機器承認番号 30300BZX00076000
IDENTIFY患者認証・モニタリングシステム:医療機器製造販売承認番号:30300BZX00304000
Halcyon 医療用リニアック:医療機器承認番号 22900BZX00367000
TrueBeam 医療用リニアック:医療機器承認番号 22300BZX00265000


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