技術解説(ザイオソフト)

2018年4月号

Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

腹部領域における「Ziostation2」の最新アプリケーション

安達 雅昭(臨床応用開発グループ)

近年,ワークステーションにおける解析技術は,モダリティの進化とともに大きく変化を遂げている。
2017年に発表した新たな抽出アルゴリズム“RealiZe(Recognition of Exact Anatomical Landmark Information with Ziosoft Enhancement)”は,“PhyZiodynamics”を発展させた三次元医用画像認識技術である。人工知能(AI)やmachine learningが近年でこそ話題となっているが,以前より当社は本機能の開発において,膨大な異なる検査画像を用いて検証を行って精度向上を図っており,今回紹介する大腰筋抽出にもその経験が用いられている。さらに,放射線治療分野でもPhyZiodynamicsの技術を用いた新たな境地を開拓している。
本稿では,「Ziostation2」に新しく追加されたアプリケーションを紹介する。

■マルチステーション結合

背景抑制広範囲拡散強調画像(diffusion-weighted whole-body imaging with background suppression:DWIBS)は,2004年に高原氏らが考案した手法1)で全身をDWIで撮像し,それぞれの画像を結合することでwhole bodyでの観察を行うもので,主に経過観察などに応用されている。DWIBS法は,腫瘍や転移巣に対する感度も良く,PET検査などと比較すると医療経済コストも安価で,近年多くの施設に普及している現状がある。従来,DWIBS法で撮像された画像は,各施設にてマニュアルでの結合やコントラストの調整を行い回転画像などの作成を行っていたが,先頃リリースした“マルチステーション結合”は,今まで手間がかかっていたコントラストの調整などを自動で行うことを可能にしたプロトコルである。Ziostation2に標準搭載されているマクロ機能と自動前処理機能を使用することで,撮像後に結合処理を行い,回転画像から白黒反転画像,さらには結合のDICOM画像出力までを一括して自動で実施することが可能である(図1)。MRI検査は,多くの施設で検査枠の確保が困難な状況であることから,ポストプロセスでの時間の短縮は検査の効率化に大きく貢献できると考えている。さらに,マルチステーションで結合したデータは,マルチデータフュージョンにてT1強調画像などと重ね合わせることもできるため,より観察のしやすい画像が作成可能である(図2)。

図1 マルチステーション結合 4つの画像を結合し,白黒反転した結果

図1 マルチステーション結合
4つの画像を結合し,白黒反転した結果

 

図2 マルチデータフュージョンにてT1強調 画像との重ね合わせを行った画像

図2 マルチデータフュージョンにてT1強調
画像との重ね合わせを行った画像

 

■3D解析:大腰筋抽出機能

1997年に,Rosenbergは加齢による骨格筋量の減少を報告し,この現象をサルコペニア(sarcopenia)と呼称することを提案した2)。骨格筋量の減少は,高齢者の医学的・生活的虚弱(frailty:フレイルティ)と密接に関係しており,医療費の増加にもつながる。超高齢化社会を世界に先駆けて迎える日本にとってサルコペニアへの関心は高く,市場からは大腰筋の抽出を簡便に行いたいというニーズが高まっていた3)
本誌2016年4月号(31・4, 46〜47, 2016) にて新機能として腎臓の抽出機能を紹介したが,2017年にリリースされた最新版では大腰筋の抽出機能が搭載された。腎臓と同様に大腰筋に関しても非造影での抽出を行っており,2017年に発表した弊社独自機能であるRealiZeを使った機能である。腎臓と同様に大腰筋も患者による個体差が大きいため,患者ごとに異なる形状の膨大な検査画像で検証を繰り返したRealiZeを用いることで抽出を可能としている(図3)。このように,Ziostation2は常に多様化する医療現場のニーズを基に最新の機能提供を行っている。

図3 大腰筋抽出機能

図3 大腰筋抽出機能

 

■IGモーション測定

“IGモーション測定”は,呼吸性移動に対する金マーカーと腫瘍の相対位置を4D画像上で計測するプロトコルであり,独自技術であるPhyZiodynamicsを用いたdynamic計測により,マーカーと腫瘍の位置の呼吸に伴う移動距離の計測を行うことが可能なシステムである(図4)。また,この計測データを基に必要最小限のマージン設定を行い,標的の輪郭を入力し線量計算を行うことが可能である。現在の診療報酬の算定では,定位放射線治療における呼吸性移動対策加算の算定基準は,呼吸による移動が10mmを超える腫瘍に対して呼吸対策を行い,XYZ方向のそれぞれが5mm以下となることが治療前に計画され,照射時に確認される必要があるとされており4),上記の範囲内であれば,診療報酬の加算が算定される。
腫瘍の発生臓器や位置,大きさなどによって金マーカーを留置可能な位置は異なるため,4D画像による金マーカーと腫瘍の位置関係の把握は重要である。

図4 PhyZiodynamicsを用いたdynamic計測にて肝臓の金マーカーとターゲットを経時的に計測

図4 PhyZiodynamicsを用いたdynamic計測にて肝臓の金マーカーとターゲットを経時的に計測

 

■IVRプランニング

従来,救急の現場における出血の塞栓術において,マニュアル作業にてMPR面よりルートを探索して,パスを描画して手技にあたるというのが日常の現場だった5)。2017年にリリースしたIVRプランニングでは,自動で大血管を抽出し,ターゲットを選択することで,ターゲットまでのルートを自動探索するプロトコルになっている。主要な分岐血管の入口部にはマーカーが表示され,画像を回転することでカテーテルのかけやすさが容易にわかり,よりスピーディな手技を可能としている。
図5は肝動脈化学塞栓術(以下,TACE)のシミュレーション画像であるが,救急のIVRのみならず,さまざまなIVRの手技に対応可能となっている。
さらに,TACEのように栄養血管が2本ある場合は色分け表示も可能となり(図5 右),視認性も向上している。同時に2か所以上の塞栓術を行う際にも,各ルートを切り替えて観察することも可能だ。表示法は大動脈と主要な分岐のみをサーフェスレンダリング表示し,さらにray sum画像とフュージョンすることで,血管造影画像に酷似した仮想透視画像に仕上げている。

図5 IVRプランニングを用いたTACE術前シミュレーション

図5 IVRプランニングを用いたTACE術前シミュレーション

 

●参考文献
1)Takahara, T., et al. : Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression(DWIBS); Technical improvement using free breathing, STIR and high resolution 3D display. Radiat. Med., 22・4, 275〜282, 2004.
2)Rosenberg, I.H. : Sarcopenia ; Origins and clinical relevance. J. Nutr., 127(5suppl.), 990S〜991S, 1997.
3)Hirayama, K. : The measurement of the psoas major muscle volume by 3 dimensional-CT for assessment of nutritional state. 日本静脈経腸栄養学会雑誌, 32・1, 871〜877, 2017.
4)塚本信宏 : 4Dモーション解析を利用した呼吸追尾放射線治療計画の支援. INNERVISION, 32・7, 2017
5)一ノ瀬嘉明・他 : CT情報を透視下手技に活用するための仮想透視画像─見えない道・場所を見える化して挑む. INNERVISION, 32・12, 66〜67, 2017.

 

●問い合わせ先
ザイオソフト株式会社
マーケティング部
〒108-0073
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TEL:03-5427-1921
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