New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

2016年9月号

院内のすべてのthinスライスデータを保管した3D画像処理ネットワークを構築〜心機能解析、TAVR術前プランニングなど高精度の画像解析で診療を支援〜

広島大学病院

広島大学病院

広島大学病院では、2012年からZiostation2による3D画像処理ネットワークの構築をスタートし、2013年の診療棟(外来)のオープンを機に入院棟・診療棟のCTを中心としたthinスライスデータの保管とネットワーク型による3D画像処理体制を構築した。大学病院として臨床、研究、教育にバランス良く取り組む同院での3D画像処理ネットワークの構築と運用について、放射線診断学研究室の粟井和夫教授と、診療支援部画像診断部門Ⅰの木口雅夫部門長およびスタッフに取材した。

ADCT3台、3T MRI4台などで画像診断を提供

放射線診断学研究室には、粟井教授以下18名のスタッフが在籍する。CT、MRI、PETを中心にした読影と、IVRについては中四国の大学病院の中でも有数の件数を行うなど、診断と治療で質の高い診療を提供している。
研究では、低線量X線被ばくの影響など基礎的な領域から、ADCTや3T MRIによる領域ごとの疾患へのアプローチまで幅広く取り組む。同研究室には、工学博士(檜垣 徹准教授)が在籍し、画像解析や診断支援のソフトウエア開発まで臨床と連携しながら進められている。粟井教授は、「大学病院として臨床、教育、研究についてバランスよく堅実に取り組むことはもちろんですが、それだけではなくさまざまな課題や新しい技術について、積極的にアイデアを出して研究することで、広島から、さらには日本から世界に発信したいと考えて取り組んでいます」と述べる。
主なモダリティは、CTが、東芝メディカルシステムズの320列のADCT2台、GEヘルスケアの256列のADCT、64列CTの計4台、MRIは3T MRI3台(GE、東芝、フィリップスエレクトロニクスジャパン)が稼働する。そのほか、核医学ではPET/CT1台(シーメンスヘルスケア)、SPECT/CT2台(フィリップス)などで検査を行っている。
検査を行う診療支援部の画像診断部門は、組織としてはⅠとⅡに分かれており、画像診断部門Ⅰは主に診療棟の画像診断センターのCT、MRI、IVR-CTを中心に管轄する。診療放射線技師は両部門あわせて39名。

粟井和夫 教授

粟井和夫 教授

画像診断部門スタッフ。後列左から西丸英治副部門長、木口雅夫部門長、前列左から横町和志技師、藤岡知加子副部門長

画像診断部門スタッフ。後列左から西丸英治副部門長、木口雅夫部門長、前列左から横町和志技師、藤岡知加子副部門長

 

CT4台のthinスライスデータを保管

同院では、2012年に入院棟の救急部門のCT(320列ADCT)の更新時に最初にZiostation2を導入。ネットワークタイプでthinスライスサーバとして「ZIOBASE model-R」(10TB)を設置し、救急CTを中心にした3D画像処理ネットワークを構築した。さらに、2013年の診療棟のオープンに合わせて、画像診断センターのCT、MRI、血管撮影装置などを接続するZIOBASE model-R(21TB)を新たに導入した。2つのデータサーバは物理的には分散しているが、ネットワーク上では統合管理され、診療棟、入院棟の4台のCTを中心にthinスライスデータを管理する3D画像処理ネットワークとなっている。
Ziostation2が利用可能な端末(VGR)は14台で、入院棟のCT室、血管撮影室、手術センター、診療棟ではCT室、画像解析室、MRI室、PET/CT室、ハイブリッド手術室などに設置されている。そのほか、スタンドアロンのZiostation2がIVR-CT室などで2台稼働する(システム構成図参照)。同院では、他社製の3Dワークステーション(WS)も導入されているが、Ziostation2と同じ端末に相乗りして“3D画像処理端末”として利用している。木口部門長は3D画像処理ネットワークの運用について、「ネットワーク型になったことで、端末があればどこでも画像処理が可能になり、時間が空いたスタッフが対応するなどのサポートが可能になりました。端末が空くのを待つこともなくなりストレスなく業務が行えます。操作性の良さだけでなく、そういった面で業務の効率が向上しています」と話す。
データサーバのZIOBASE model-Rは、ラックマウント型で運用に合わせた柔軟な拡張が可能になっている。同院では、thinスライスデータの管理について1年分の保管を想定してサーバ容量を設定したが、利用状況などから1年半分の容量として12TBから21TBまでディスクを拡張した。木口部門長は、「今後、機器の更新や増設なども予定されていますが、その場合にも柔軟に対応できます。拡張性が高いこともZiostation2のメリットです」と述べる。

MR操作室のVGR端末

MR操作室のVGR端末

 

◆広島大学病院Ziostation2ネットワーク概念図

広島大学病院Ziostation2ネットワーク概念図

 

高精度データを生かし画像解析を中心に活用

Ziostation2では、心臓や頸部、下肢動脈など血管解析、MRIの心機能解析や流速測定、治療の術前支援など、画像処理だけでなく計測や解析を伴う検査を中心に使用されている。木口部門長は、3D画像処理の中での位置づけについて、「Ziostation2は、豊富なソフトウエアがそろっており精度の高い処理が可能なことから、解析が必要な症例を中心に使用しています」と述べる。各モダリティでの主な画像処理について担当者に聞いた。

〈手術支援〉
手術支援では、TAVI前の計測、解析に「TAVR術前プランニング」を用いている。TAVR術前プランニングでは、弁輪面の自動抽出や自動計測機能などでTAVIの術前に必要な計測、評価をサポートする。藤岡知加子副部門長はTAVIの解析について、「Ziostation2のソフトウエアを使うようになって解析時間が1/3になりました。計測ポイントの表示や手順のアシスト機能も便利で、TAVIに関してはZiostation2以外のWSは使いたくないですね」と評価する。同院でのTAVIは月2、3件だが、適用確認のための検査は週2件程度行われている。
また、手術のシミュレーションや術中の確認用として臓器実体モデルを3Dプリンタで作成しているが、作成用の元データをZiostation2で処理している。藤岡副部門長は、Ziostation2での3Dモデルの作成について、「モデル作成のためのSTLファイルの精度が高く、ほとんど修正することなく、3Dプリンタに送るだけで問題なく印刷ができています」と述べる。3Dプリンタでの1モデルの作成(印刷)時間は30〜40時間。臓器モデルの作成は4月からスタートし、主に移植外科からの依頼で肝移植や肝腫瘍切除術の際に使用されている。

〈MRI〉
MRIでは、心臓の解析を中心に、心機能解析、流速測定、T2マッピングなどに利用している。心機能解析では「MR心機能解析2」のほか、PhyZiodynamicsによるタギング法を用いたストレイン解析などを活用している。流速測定では、「MRフロー解析」による大動脈弁や僧帽弁などの血流評価を行っている。また、「T2マッピング」では、サラセミア患者などの心筋の鉄沈着を評価している。MRIを担当する横町和志技師は、「Ziostation2は補完機能が優れており、フェーズ間の補完がスムーズで迅速に処理ができます。キーボードとマウスのショートカットでの操作など使い勝手もいいですね」と述べる。MRIでは、解析が必要な症例を中心にデータをthinスライスサーバに保管している。

〈血管撮影〉
血管撮影部門では、TAVIやステントグラフト内挿術(EVAR/TEVAR)の際に、血管の3D画像を作成して手技直前の走行確認などに利用している。IVR-CTでは、検査室内のモニタにZiostation2の画面が表示可能で、あらかじめ作成した3D血管像で肝腫瘍の栄養血管のベストアングルを確認して手技を行っている。同院は、肝動脈化学塞栓療法(TACE)について全国でも上位に入る件数を行っているが、IVR-CTでの術中にCTAP、CTHAの血管像を再構成して表示している。アンギオ部門を担当する西丸英治副部門長は、「IVRの手技の際には、必要な画像を的確なタイミングで提供するスピードが要求されますが、Ziostation2では精度の高い血管の再構成画像が簡単に作成できます」と述べる。また、下肢の血管解析では、血管を選ぶだけでセンタリングした選択が可能で、計測時間が短縮できると西丸副部門長は評価する。

日本のメーカーと連携して研究・開発に取り組む

Ziostation2への今後の期待について木口部門長は、CTデータから冠動脈の血流を計測するFFR-CTや、筋肉量など体力が低下するサルコペニアと予後の相関などの計測や解析機能の充実を挙げ、次のように述べる。
「診療科からも画像情報の定量化へのニーズが大きくなっています。特定の診断装置やモダリティに依存せず、汎用性のあるデータ解析が可能なWSへの期待は大きいですね」
放射線診断学研究室では、東芝メディカルシステムズや日立製作所などといった日本企業と連携した研究・開発に取り組んでいる。粟井教授は、「われわれの研究成果を実際の技術や製品に反映していくためには、日本の企業との連携が不可欠です。日本には高い技術力を持った優秀な企業が数多くあります。国内に開発部門がある企業だからこそ、相互に連携した研究・開発が可能です。そういった企業とも協力することで、日本発の新しい成果を発信していきたいと考えています」と述べる。ザイオソフトとは、肝臓のパフュージョン解析などについて共同研究を進めている。
大学病院の持つ研究開発のリソースと、PhyZiodynamicsなど画像処理分野で高い開発力を持つザイオソフトの連携による今後の成果にも期待が集まる。

(2016年7月20日取材)

 

広島大学病院

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広島県広島市南区霞1-2-3
TEL 082-257-5555

 

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