New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

2016年5月号

当院におけるZiostation2による大腸CT解析 〜PhyZio Enhanceフィルター機能の併用

有馬浩美*1、野崎良一*2、松本徹也*1、前崎孝之*1、伊牟田秀隆*1、山田一隆*3

近年、マルチスライスCTの発達と画像処理技術の向上、前処置法の改善などより、CT colonography(CTC)の診断能は飛躍的に向上している。スクリーニング目的のCTCの増加が今後予想されているが、大腸解析の負担軽減による検査処理能力や読影者間の病変検出能のバラツキの軽減による検査精度の管理が必要となる。当院においてはprimary 3D readingを基本に読影を行い、以前よりCAD (computer-aided detection)を併用した大腸CT解析を検討してきた。そこでZiostation2に搭載された“PhyZio Enhanceフィルター機能”を用いた大腸CT解析について述べる。

はじめに

当院は1982年に開設され、肛門科、消化器内科、消化器外科、大腸肛門機能科、心療内科、泌尿器科と、大腸肛門病に関係する分野に対応できる形で診療を行う大腸肛門病の専門病院である。特に大腸がん検診においては、「大腸がん撲滅」を掲げて予防啓発活動に取り組み、開設から現在に至るまで、延べ約200万人の大腸がん検診を行っている。現在までに当院で発見された大腸がんは3700例以上に上り、そのうち約7割は早期がんである。
当院のCTCは、2002年10月に4列のマルチスライスCTの導入以来、大腸がん術前症例と全大腸内視鏡検査(TCS)の挿入困難例などを中心に臨床に応用してきた。さらに2012年9月より、64列のマルチスライスCTを導入し、Ziostation2を用いて大腸解析を行っている。CTCの検査件数は2002年10月から2015年12月まで3149例で、その約半数が大腸がんの術前検査である。内訳としては、大腸がんの術前検査が43.8%、次いでTCS挿入困難例が20.0%、大腸がん術後フォローが9.2%、炎症性腸疾患が3.0%で、その他スクリーニング目的が24.0%と最近特に増加傾向にある。今後、大腸がん診療において臨床、検診いずれでもCTCがますます増加することが予想され、検査の処理能力と検査精度の管理が重要となる。

Ziostation2を用いた大腸解析の実際

当院では、ワークステーションにザイオソフトのZiostation2を用いて大腸解析を行っている。実際の読影としては、primary 3D readingで行い、仮想内視鏡像(virtual endoscopy:VE)とMPR像を基本に、仮想注腸像やPhyZio Enhanceフィルター機能を仮想大腸展開像(virtual gross pathology:VGP)に併用して大腸解析に用いている。

1)仮想注腸像による大腸全体のチェック
まず、仰臥位像と腹臥位像の2体位のデータから従来の注腸X線検査(BE)の画像に類似した画像表示法である仮想注腸像が自動抽出される。半透明の3D volume renderingであるair imageとBEの充盈像に類似したsolid imageを切り替えながら、大腸の全体像を表示し、大腸の拡張不良、欠損像の有無、大腸の走行異常がないかを確認する。仮想注腸像は良性疾患である大腸憩室の存在、場所、個数、または狭窄病変を客観的に把握でき、悪性腫瘍を疑う病変を見つけた場合は側面変形を表示することで、病変の深達度を推測することもできる。このように仮想注腸像は、大腸の全体像を把握できる非常に有用な画像表示法である。

2)VEとVE+MPRモードおよび2D画像による病変の拾い上げ
Ziostation2のVEの一番の特長は、仰臥位と腹臥位のVEを並列で表示し、両画像とも背側が画面下にくるように表示できることである。VEの視野角度は非常に広く、330°まで拡大でき(当院では通常210°に設定)、大腸の正常構造物である半月ヒダの裏側も死角が少なく観察ができる。VEの観察は直腸から盲腸と、逆方向の盲腸から直腸へ往復し、2体位同時表示で観察していく。VEでの観察は、光学式内視鏡とは違い色調の変化はわからないため、正常構造物の半月ヒダと結腸ヒモを意識しながら、正常構造から逸脱する半月ヒダの限局的な太まり、正常粘膜とは異なる凹凸、形状の変化に注意しながら観察していく。残渣などの移動の確認も2体位同時表示による背側が下側にくるように表示されていることで容易に確認できる。病変を疑えば、VE+MPRモードに切り替えて病変の内部性状や腸管外への浸潤の程度、リンパ節の評価などMPRの断面を移動して確認する。特にMPRの移動ステップが0.3mmと細かいことから、腸管の屈曲が強い部分においても、腸管壁の肥厚や憩室、残渣などの鑑別に必要な詳細な観察が可能となっている。
大腸の両端である盲腸のバウヒン弁と直腸カテーテルの裏側は、VEで十分に観察する。また、2D画像(MPRを含むアキシャル画像)においても、直腸から盲腸までの全大腸を読影し、特にVEで観察できない残液で埋もれた部分や腸管拡張の不良な部分は注意深く読影する。

3)VGPに併用したPhyZio Enhanceフィルター機能による病変の拾い上げ
Ziostation2のVGPの特長は、補正円筒投影法を用いることにより、歪みが少なく腸管全周を表示できることにある。直腸から盲腸までの全体像を1枚の画像として表示し、大腸全体を俯瞰的に観察することができる。しかし、強い屈曲部では大腸の正常構造物である半月ヒダに歪みが出るため、大腸の半月ヒダや病変の見え方を十分に注意して理解しておく必要がある。
当院では、大腸解析の負担軽減や読影者間の病変検出能のバラツキの軽減などを目的に、Ziostation2の導入以前よりCAD機能を大腸解析に応用してきた。Ziostation2においても、PhyZio Enhanceフィルター機能をVGPに併用して大腸解析の検討を行っている。PhyZio Enhanceフィルター機能とは、大腸の内壁に凸型に隆起した形状を自動的に検出してカラー(青色)で強調表示する機能である(図1)。

図1 PhyZio Enhanceフィルター機能図

図1 PhyZio Enhanceフィルター機能図

 

PhyZio Enhanceフィルター機能の病変検出能の検討

われわれは、PhyZio Enhanceフィルター機能を用いた腫瘍病変の形態別・大きさ別の検出能と、偽陽性・偽陰性について検討してきた。対象および方法は、TCSに準じた前処置を行った後、内視鏡に引き続きCTCを施行した41症例126病変を対象にTCSをゴールドスタンダードとして比較検討した。まず、腫瘍病変の形態別検出能は、Ⅰsが53.2%(25/47)、Ⅰspが100%(22/22)、Ⅰpが100%(3/3)、Ⅱaが20%(2/10)、Ⅱa+Ⅱcが100%(3/3)となり、LSTではLST-NGが 50%(1/2)、LST-Gが100%(9/9)であり、進行がんは100%(29/29)で、全体の病変検出能は74.6%(94/126)であった(表1)。凸型の隆起がはっきりした病変ほど検出能が高い傾向が認められた。腫瘍病変の大きさ別検出能では、6mm未満が48.1%(25/52)、6〜10mm未満が75.0%(12/16)、10〜20mm未満が100%(14/14)、20mm以上が97.7%(43/44)で、内視鏡治療対象となる6mm以上に限れば93.2%(69/74)と高い検出能であった。
PhyZio Enhanceフィルター機能の偽陽性の検討では、1症例あたり平均11.4個の偽陽性が認められた。偽陽性の内訳は、半月ヒダが最も多く全体で266個、1症例あたり6.5個の偽陽性が認められ、そのほかに残渣、結腸ヒモ、臓器による圧排、腸管痙攣、内痔核などがあり、特にバウヒン弁は85.4%(35/41)と高率に偽陽性として検出された(表2、図2)。偽陰性の検討では、大きさが小さくなるにしたがって偽陰性例が多くなり、形態別ではⅠsやⅡaのように立ち上がりがなだらかな病変ほど偽陰性例が認められた。LST-Gでは、PhyZio Enhanceフィルター機能により全例検出されたが、LST-NGは図3のように病変の大きさが20mm以上でも検出不能となる症例が認められた。

表1 PhyZio Enhanceフィルター機能の病変検出能

 

表2 PhyZio Enhanceフィルター機能の偽陽性の内訳

 

図2 PhyZio Enhanceフィルター機能の偽陽性例 隆起した正常構造物が着色されている。

図2 PhyZio Enhanceフィルター機能の偽陽性例
隆起した正常構造物が着色されている。

 

図3 PhyZio Enhanceフィルター機能の偽陰性例

図3 PhyZio Enhanceフィルター機能の偽陰性例

 

まとめ

近年、マルチスライスCTの発達と画像処理技術の進歩ならびに前処置法の改善(fecal tagging)などにより、CTCの大腸疾患に対する診断能は飛躍的に向上し、診療と検診の場においてCTCの需要は高まっている。さらに、2012年の診療報酬改定で大腸CT撮影加算が保険収載されたことから、全国的にCTCに取り組もうとする医療機関は増加傾向にある。特に、今後、スクリーニングCTCの増加が予想されるが、それに伴い、検査処理能力や、検査精度管理の向上などが必要になる。その中で、大腸CT解析ソフトウエアの基本的な性能向上とともに、CAD機能の性能向上の果たす役割は非常に大きいと考える1)〜5)。大腸CT解析のCAD機能においては、表面型病変の検出能の向上や偽陽性数の低下などがさらに図られれば、本邦においてもスクリーニングCTCにCADが積極的に用いられる日も遠くなく、選択肢の一つになりうると考えられる。

[参考文献]
1)三宅基隆・他 : CTCにおけるコンピュータ支援検出(CAD). 胃と腸, 47, 77〜86, 2012.
2)Taylor, S.A., Greenhalgh, R., Ilangovan, R., et al. : CT colonography and computer-aided detection ; Effect of false-positive results on reader specificity and reading efficiency in a low-prevalence screening population. Radiology, 247, 133〜140, 2008.
3)Taylor, S.A., Charman, S.C., Lefere, P., et al. : CT colonography ; Investigation of the optimum reader paradigm by using computer-aided detection software. Radiology, 246, 463〜471, 2008.
4)Taylor, S.A., Brittenden, J., Lenton, J., et al. : Influence of computer-aided detection false-positives on reader performance and diagnostic confidence for CT colonography. Am. J. Roentgenol., 192, 1682〜1689, 2009.
5)Taylor, S.A., Suzuki, N., Beddoe, G., et al. : Flat neoplasia of the colon ; CT colonography with CAD.  Abdom. Imaging, 34, 173〜181, 2009.

*1 大腸肛門病センター高野病院放射線科、*2 大腸肛門病センター高野病院消化器内科、
*3 大腸肛門病センター高野病院消化器外科

 

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