New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

第74回日本医学放射線学会総会が、2015年4月16日(木)〜19日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催された。ザイオソフト/アミンは、19日に共催のランチョンセミナー27において、「New Horizon of 4D Imaging〜超四次元画像PhyZiodynamics の臨床利用」を開催した。セミナーでは、佐久間肇氏(三重大学大学院医学系研究科放射線医学教室教授)を座長として、稲本陽子氏(藤田保健衛生大学)、城戸輝仁氏(愛媛大学)が、PhyZiodynamics技術を用いた嚥下CTの機能評価、心臓CTでの被ばく低減やCTストレイン解析などへの臨床応用について報告した。

2015年7月号

JRC2015 ziosoft/AMIN Seminar Report New Horizon of 4D Imaging〜超四次元画像PhyZiodynamicsの臨床利用

嚥下CTにおけるPhyZiodynamicsが切り拓く機能評価〜補完による動態評価、局所トラッキングによる筋長計測

稲本陽子 氏(藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科)

稲本陽子 氏

嚥下障害と動態評価

超高齢社会を迎える中で、嚥下障害の患者は増え続けており、嚥下リハビリテーションのニーズは高まっている。当院では、320列CTを用いた嚥下CTに取り組み、3DCTの動態画像(4DCT)による嚥下動態の観察、解析を行い、嚥下のメカニズムの解明やリハビリテーションへの応用などを行っている。4D動態解析について、ザイオソフトのPhyZiodynamicsを用いた補完、ボクセルトラッキングなどの取り組みについて述べる。

嚥下の評価法の変遷

嚥下運動は、人体の中でも最も速い動きであり、口唇、舌、顎、軟口蓋、舌骨、咽頭、喉頭蓋、喉頭、食道などの諸器官が、きわめて短時間にほぼ同時に、連続して動いて行われる。この超高速で、複数の器官が複雑に連動する動きの評価、解析には、周期的な動きの心臓などとは異なる難しさがある。
嚥下の評価法は、1970年代に嚥下造影検査法(videofluoroscopy:VF)が臨床場面に登場して、誤嚥の様子が映像化されたことで、リスク管理や嚥下運動の理解が進みリハビリ介入の発展につながった。VFが嚥下リハビリテーションを発展させ、現在に至るまでゴールドスタンダードとなっている。しかし、VFは側面あるいは前後の1方向からの透視像であり、嚥下の高速で複雑な三次元動態の視覚化には限界があった。
その中で、嚥下評価法に新たな展開をもたらしたのが、320列の面検出器型CT(ADCT)を用いて嚥下動態の連続撮影を行う“嚥下CT”である(図1)。当院では、2008年からADCTによる嚥下研究をスタートし、従来の検査法の課題であった諸器官の形態動態の解析や定量化、動的メカニズムの解明に取り組み、嚥下リハビリテーションでの臨床応用も行っている。

図1 ADCTによる3D動態画像を用いた嚥下動態の観察

図1 ADCTによる3D動態画像を用いた嚥下動態の観察
複雑な嚥下運動を任意の方向から観察が可能。

 

嚥下CTによる動態解析の実際

嚥下CTでは、面検出器による連続撮影によって嚥下時の動態の観察が可能になる。3DCT画像では、食塊が口腔から咽頭に流れ、舌骨喉頭が挙上し喉頭が閉鎖し咽頭が収縮して、食道へ流れていく様子を、任意の方向から観察が可能になる。下方からの視点では、嚥下中の声帯の動きの描出が初めて可能になり、これまで不明だった声帯閉鎖による気道防御の機序が明らかになった。
嚥下CTでは、動態の連続的な観察によって嚥下中の諸器官の運動時間計測が可能で、気道防御の重要なメカニズムである喉頭閉鎖の声帯閉鎖、喉頭前庭閉鎖、喉頭蓋反転の3事象を中心に、他の諸器官がどのように連動するかがわかってきた。図2は、とろみ水を用いた健常成人10人の嚥下中の諸器官の運動開始と終了時間を示したものである。嚥下CTによって運動時間や咽頭腔体積変化など定量評価が可能になり、CTによる三次元動態画像や定量評価は、治療に役立つ情報を得るための重要な評価法となっている。

図2 10mLとろみ水の嚥下時の諸器官の運動時間

図2 10mLとろみ水の嚥下時の諸器官の運動時間
嚥下にかかわる全諸器官の運動開始と終了時間を定量化できる。

 

嚥下CTの課題とPhyZiodynamics

多くの情報を提供する嚥下CTだが、時間分解能と解析時間という解決すべき課題がある。時間分解能はVFの30画像/秒に比べてCTでは10画像/秒と劣る。また、解析時間については、3DCT画像作成で1嚥下2〜3時間、咽頭腔体積では12時間近くかかり、日常の臨床での使用や多くの施設での利用の障壁となっている。そこで、当院では嚥下CTの画像処理についてPhyZiodynamicsによる“補完”と“ボクセルトラッキング”を用いた時間分解能の向上と処理時間の短縮に取り組んでいる。

〈補完〉
PhyZiodynamicsでは、フェーズ間のボクセルごとの形状や位置などの変化をトラッキングしてデータの補完を行うことで、時間分解能の向上とスムーズな動態の観察を可能にする。嚥下の3D画像では、3倍補完することで動きが滑らかになり全体像の把握が容易になった。これによって諸器官の運動時間の計測の際に、通常の動態画像での計測に加えて、PhyZiodynamicsによる補完画像を加えることで、元画像の運動開始・終了のタイミングの判断に有用であった(図3)。

図3 PhyZiodynamicsによる三次元動態画像の補完

図3 PhyZiodynamicsによる三次元動態画像の補完
3倍補完を行うことで滑らかな動態の観察と同時に、元画像の開始・終了の時相の決定が容易になる。

 

〈ボクセルトラッキング〉
CTは筋肉の動態など軟組織の描出は困難だが、筋の起始と停止のポイントとなる舌骨上筋群や下筋群を点で追って、起始・停止長を計測することにより、筋の動態を類推することが可能になる。しかし、起始と停止の画像を1フレームずつ追っていく必要があり、時間がかかるという問題、さらには手動操作による誤差が避けられなかった。
PhyZiodynamicsでは、ボクセルトラッキング機能によって、この起始・停止長の自動計測が可能になる(図4)。MPR画像や3D画像上で、最初のフレームで計測したいポイントを指定すると、その後のフレームで自動的にトラッキングが行われる。動きの速い舌骨においても、ほぼ自動化でき、大幅な計測時間の短縮が期待できる。計測の正確性についても、PhyZiodynamicsとマニュアルでの結果を比較したところ、両者のグラフはほとんど一致し、PhyZiodynamicsの方が、ズレのない結果が得られた(図5)。

図4 PhyZiodynamicsによる局所ボクセルトラッキング

図4 PhyZiodynamicsによる局所ボクセルトラッキング
筋の起始と停止となる骨を起点として選択することで、動態をトラッキングして自動計測を行う。

 

図5 ボクセルトラッキングと手動による計測の比較

図5 ボクセルトラッキングと手動による計測の比較
PhyZiodynamicsの自動解析では滑らかで誤差の少ない計測結果が得られた。

 

PhyZiodynamicsによる嚥下動態解析の期待

PhyZiodynamicsを用いた嚥下動態解析の可能性として、“咽頭腔体積の応用”と、“口峡の描出”が期待される。3DCT画像を用いて咽頭腔の体積を時間軸に沿って計測することで、咽頭縮小率や縮小時間を算出することができ咽頭収縮の定量評価が可能だが、この解析にも時間がかかり臨床応用には至っいない(図6)。Ziostationにて咽頭腔の体積を1cmごとに分割し、それぞれの体積変化を計測して動態の変化を観察することが可能である。咽頭圧、食道圧を計測する高解像度Manometryの圧変化のデータとあわせて観察することで、咽頭収縮の生理と病態理解につながることが期待される。

図6 嚥下CTによる咽頭収縮の体積変化の評価

図6 嚥下CTによる咽頭収縮の体積変化の評価
3DCTのボリュームデータから咽頭腔と食塊の体積変化を計測し嚥下障害の程度を評価できる。

 

まとめ

嚥下CTでは、4D動態観察、定量化が可能になり、嚥下のメカニズム評価に大きな可能性をもたらしたが、その描出や解析には時間がかかり、臨床応用には対策が必要である。PhyZiodynamicsでは、補完とボクセルトラッキング機能によって、これらの課題の解決が期待される。臨床で有効に活用していくためには、“道具”をいかにうまく使いこなしていくかがポイントであり、今後PhyZiodynamicsによるさまざまな可能性を検討していきたい。

 

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