New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

2013年9月号

離島の医療を担う中核基幹病院でziostation2による画像処理が診断、治療をサポート
ネットワーク型のziostation2を活用して冠動脈解析やCT Colonographyなどを展開

長崎県上五島病院

本田徹郎医長(左)と安田貴明主任(右)

本田徹郎医長(左)と安田貴明主任(右)

長崎県五島列島の北部に位置する新上五島町にある長崎県上五島病院は、地域で唯一の入院施設を持つ基幹病院として、検診から急性期、そして慢性期医療まで地域に密着した医療を展開している。同院では、2013年3月、80列CTへのリプレイスにあわせて、ziostation2を最新バージョンにアップグレードした。離島医療の中でziostation2による冠動脈解析やCT Colonographyの有用性について、内科の本田徹郎医長、放射線科の安田貴明主任に取材した。

[高齢化、過疎化が進む離島の医療を支える中核基幹病院]

上五島病院は、15診療科、病床数186床、1日平均外来数は520人で、常勤医師は18名。八坂貴宏院長は、地域における同院の役割について、「予防から介護、福祉までを連携させた地域包括ケアを展開しています。2次医療圏で唯一の総合病院として、救急を含めた急性期から慢性期医療まで対応して地域完結型の医療を提供すると同時に、ドクターヘリによる緊急搬送体制など長崎県本土の医療機関と連携した医療提供体制を構築しています」と述べる。

八坂貴宏 院長

八坂貴宏 院長

新上五島町は、人口2万1000人、高齢化率34%、人口も毎年200人減という高齢化、過疎化が進む地域である。また、医師、看護師など医療スタッフの不足も課題となっており、上五島地区では病院再編を進め、上五島病院を中核病院として、同地区にあった2つの病院を無床診療所に転換、有川医療センター、奈良尾医療センターとして、病床とスタッフの集中化を図った。また、同時に、遠隔画像診断システムの活用など医療設備やシステムへの投資を積極的に行っている。八坂院長は、「医師不足や地理的なハンデキャップを乗り越えるために、最先端の医療技術やITを早くから積極的に導入してきました」とその理由を説明する。なかでもポイントとなるのが画像診断機器であり、「唯一の基幹病院として、当院で対応できるか、島外に送るべき症例なのかの判断は非常に重要です。速く正確な診断のためには、高い性能を持った画像診断機器や解析のためのワークステーションは不可欠です」と八坂院長は語る。
同院の放射線科スタッフは、松尾正敏技師長以下、診療放射線技師7名で、有川、奈良尾のサテライト診療所を含めてローテーションするほか、夜間の緊急検査にもオンコールで対応する。機器は、CT、1.5T MRI、CR、透視撮影装置、マンモグラフィ、超音波診断装置がそろう。同院では、検診や腹部・乳腺の造影超音波を含めて、診療放射線技師が検査を行い所見まで作成し、医師がチェックする体制をとっている。八坂院長は、「当院では、医師でなくてはならない業務以外を、コ・メディカルスタッフにサポートしてもらうことでマンパワー不足をカバーしています。地域との連携とともに、院内のチームワークによって厳しい環境の中でも、安全・安心の医療を提供しています」と語る。

[ziostation2のバージョンアップで心臓CT検査の質が向上]

同院では、2013年3月にCTを、16列から80列の「Aquilion PRIME/Beyond Edition」(東芝メディカルシステムズ)にリプレイスした。それにあわせて、従来からスタンドアローンで稼働していたZIOSTATIONをネットワーク型に拡張し、ハードウェアを含めて最新バージョンにアップグレードした。
導入されたのはネットワーク型のTypeH Networkで、データサーバーとして3TBのZIOBASEを設置、クライアントはCT操作室、読影室、透視撮影室、内視鏡室に計4台が導入されている。同院のザイオソフトのワークステーション(WS)導入は、2002年のM900 QUADRAに始まり、以後ZIOSTATION、ziostation2と世代を重ねてCTを中心に画像処理に活用してきた。
本田医長は、80列CTの高速撮影とあわせて、ziostation2のバージョンアップによって心臓の冠動脈解析などが可能になったことで、心臓CT検査の質と処理能力が大きく向上し、診断レベルが大きく変わったと語る。
「心臓カテーテルができない当院では、急性の心疾患が疑われる患者さんに対してCTによる冠動脈スリーニングを行って、ヘリによる緊急搬送か、経過観察かを判断しています。これまでも16列CTとziostation2を使って心臓CTを行っていましたが、主にCTの性能の部分で限界があり、息止め不可や頻脈などでCTの適応にならない場合や、撮影できても判断が難しい症例では、CTの再検査も含めて本土へ紹介せざるを得ませんでした。CTの高速化とziostation2の処理能力の向上で適応の壁がなくなり、より正確に確信を持って患者を振り分けられるようになりました」
同院では、急性の心疾患に対しては心臓CTを実施し、ziostation2のCT冠動脈解析2を用いて主要3枝の抽出、Angio Graphic ViewやCPR、MIPなどの解析を行い、搬送時には画像および解析結果を保存したCDを作成してデータを提供している。安田主任は、心臓CTの解析におけるziostation2の運用について、「処理能力の向上はもちろんですが、ネットワーク型になったことで至適フェーズを特定してから、冠動脈の解析作業を手分けして行えるようになり、処理時間が大きく短縮しました。また、冠動脈解析についてもバージョンアップによって中心線の抽出精度が向上しており、精度の向上と時間の短縮に繋がっています」と評価する。実際にバージョンアップ以後、心臓CTの検査数が増加し、導入後の2か月間で前年と同数の検査を実施したとのことだ。

内視鏡室のziostation2はCTCの患者説明や手技前の画像確認に活用

内視鏡室のziostation2はCTCの患者説明や
手技前の画像確認に活用

透視撮影室では気管支鏡検査の際にziostation2のVR画像で挿入ルートを確認

透視撮影室では気管支鏡検査の際にziostation2の
VR画像で挿入ルートを確認

 

[ziostation2のCT大腸解析でCTCの精度の向上と効率化]

80列CTを導入し離島医療をサポート。八坂院長(中央右)、本田医長(中央左)と放射線科スタッフ

80列CTを導入し離島医療をサポート。
八坂院長(中央右)、本田医長(中央左)と
放射線科スタッフ

同院では、大腸のスクリーニング検査としてCT Colonography(CTC)を実施している。同施設はCTCの多施設共同臨床試験(JANCT)に参加し多くの症例を提供したが、臨床試験が終了した現在は週6件のCTCを行っている。同院でのCTCの取り組みについて、本田医長は次のように語る。
「CTCは、患者さんの負担が少なく、CTがあれば普遍性のある結果が得られることから、医師の少ない離島にこそ必要な検査だと考え、当院に赴任した2008年から取り組んできました。検査から画像処理、解析まで、安田主任と二人三脚ではじめましたが、当初はまだ、前処置法も確立しておらず、解析を行うWSの処理能力やアプリケーションも未完成で1症例の解析に2時間かかっていました。ザイオソフトからCTCの解析アプリケーションとして“CT大腸解析”が登場したことで、WSによる解析は大きく前進しました」
安田主任は、CTCのziostation2の利用について、「画像処理については、以前から歴代のザイオステーションで行っており、操作に慣れているのでスムーズに行えます。ネットワーク型になったことで、ほかのスタッフと協力した画像作成や解析まで含めてziostation2を使って行うことと、さらにVGP表示の有用性の検証など、臨床研究などにも取り組んでいきたいですね」と今後の方向性を述べている。

[ネットワーク型の運用で医師の診療を支援]

同院では、ほかにも腹部の3Dアンギオグラフィ、肝臓のTAEや生検、整形外科の骨折など術前のシミュレーションを主な目的としてziostation2が使われている。安田主任によれば、「3Dは基本的にすべてziostation2で作成しています。最初にザイオソフトのWSが導入された時から、術前のシミュレーションなどで3D作成のオーダは多くありました。3D画像を提供することで、少しでも医師のサポートになればと積極的に取り組んできました。現在では、術前や骨折の確認などでは、欠かせない情報になっています」とのことだ。
ネットワーク型となったことで複数の端末で並行に処理が可能になり、3D作成業務が効率化されたことを安田主任は高く評価する。また、本田医長は、内視鏡室や透視撮影装置に端末を設置したことで、手技前に病変や関心領域の情報を確認して進められることや、患者さんへの説明などでメリットがあるという。透視撮影装置では、気管支鏡検査や生検の際に、ziostation2の“CT肺野・気管支測定”で作成した気管支の3D画像を利用して、病変の事前確認やナビゲーションなどに利用している。

CT冠動脈解析による冠動脈スクリーニング

CT冠動脈解析による冠動脈スクリーニング

 

CT肺野・気管支測定による気管支VRの作成

CT肺野・気管支測定による気管支VRの作成

 

安田主任は、ziostation2を活用して、今後はCTCや心臓CTの臨床試験にもトライしていきたいと抱負を語る。「住民の移動が少ない離島という地域性から、CTCや心臓CTによる介入の結果を追いやすく、継続的にデータを把握することが比較的簡単です。これだけの設備がそろって期待が大きい分、プレッシャーはありますが、少しでもサポートできるようにziostation2を活用していきたいです」と今後の方向性を語る。また、本田医長はziostation2の利用効果をさらに向上させるために、頭部や腹部臓器のパーフュージョン解析も試みたいと考えているという。
離島の住民の健康を守る“最後の砦”として、最新の医療設備を活用し質の高い医療を提供する上五島病院。ziostation2は、その診療を最大限にサポートするツールとして貢献し続けるだろう。

(2013年7月22日取材)

 

長崎県上五島病院

長崎県上五島病院
長崎県南松浦郡新上五島町青方郷1549-11
TEL 0959-52-3000
http://www.kamigoto-hospital.jp/

 

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