技術解説(東芝メディカルシステムズ)

2017年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

心筋SPECT検査における3検出器型SPECT装置「GCA-9300R」の特長

太田 瑞紀(核医学営業部)

心臓および頭部のSPECT検査は,SPECT検査全体の約70%を占めている。これは,虚血性心疾患や脳血管障害,または認知症における診断と治療方針の決定において,SPECT検査の有用性が高いことが背景にある。
本稿では,心臓SPECT検査において卓越した画像を提供する3検出器型SPECT装置「GCA-9300R」の特長について,最新技術の紹介を交えて概説したい(図1)。

図1 3検出器型SPECT装置GCA-9300R

図1 3検出器型SPECT装置GCA-9300R

 

■3検出器×LMEGPコリメータによって安定した高画質

汎用2検出器型SPECT装置で360°分のデータを得るためには,検出器を180°回転させなければならないのに対して,3検出器型SPECT装置は検出器を120°回転させるだけで360°分のデータを収集できるため,同じ収集時間では1.5倍のカウントが得られる。また,収集時間もしくは投与量を2/3に低減しても同等の画像が得ることができる(図2)。

図2 3検出器による収集効率の向上

図2 3検出器による収集効率の向上

 

検出器に装備されるコリメータにも大きな特長がある。標準装備である低中エネルギー汎用(以下,LMEGP)コリメータは,感度と分解能,ペネトレーションという相反関係にあるパラメータを徹底的に検討し,心筋SPECT検査に最適化したコリメータである。
低エネルギー高分解能(LEHR)コリメータと比較して約1.8倍の感度があり,効率良くγ線計測が可能なため,心電図同期収集や99mTc製剤に比べてカウントが得られにくい201Tl製剤でも安定して画像を提供することができる。
また,123I核種に見られる529keVに由来する高エネルギー側散乱線成分の混入を抑え,心縦隔比(HMR)の定量性が改善される(図3)。このように,LMEGPコリメータ一つで核種によらず心臓検査全般に対応できる。
3検出器による収集効率向上と感度の高いコリメータの組み合わせにより,高画質の画像を安定して提供できる。

図3 LMEGPコリメータとLEHRコリメータの比較

図3 LMEGPコリメータとLEHRコリメータの比較
(データご提供:国立循環器病研究センター様)

 

■SSPAC法を用いた減弱アーチファクトの低減

心筋SPECT検査において,生体内での吸収・散乱の影響により,深部に位置する下壁・中隔領域のカウントが低下することが問題となる。このカウント低下を補正するには,減弱係数の分布を表すデータ(減弱マップ)が必要であり,最近ではCT画像を基に減弱マップを作成する方法が主流となっている。しかし,短時間で撮影するCT画像と自由呼吸下で数十心拍分のカウントを平均化する心筋SPECT画像では,心筋と肺や横隔膜の位置関係が同一にならない問題があり,これは同一寝台で撮像可能なSPECT/CT装置においても解消されていない1)。この問題を解決するために,segmentation with scatter and photopeak window data for attenuation correction(以下,SSPAC)法が前田らによって開発された2)
SSPAC法は,被検者に投与されたSPECT用トレーサーから放出されるγ線の情報を用いて減弱マップを作成する手法で,フォトピークウインドウデータとコンプトン散乱領域のデータ(サブウインドウデータ)を利用して,SPECT画像から減弱マップを作成するため,追加のSPECT収集・CT撮影が不要である。データ収集のエネルギーウインドウ設定は,フォトピークウインドウとサブウインドウからなる散乱線補正法(TEW法)と同じである(図4)。

図4 SSPAC法のデータ収集におけるエネルギー設定

図4 SSPAC法のデータ収集におけるエネルギー設定

 

具体的なSSPAC法による減弱マップ作成の流れを図5に示す。
最初に,サブウインドウデータから得た再構成画像から体輪郭および肺外縁の抽出を行い,ここにあらかじめ用意しているモデル縦隔を合成する。次に,フォトピークウインドウデータから得た再構成画像より心臓および肝臓を抽出し,あらかじめ用意したモデル胸椎とともに合成する。最後に,得られた各部位に決められた減弱係数の割り付けを行い,SPECT位置分解能と同等の分解能となるよう,スムージングフィルタ処理を行うことで,各スライス面での減弱マップを得る。

図5 SSPAC法による減弱マップ作成

図5 SSPAC法による減弱マップ作成

 

図6に,SPECT/CT装置で心筋SPECTの減弱補正を行った場合と,SSPAC法を用いた場合を比較した結果を示す。補正なしでは存在しない心尖部の画素値低下が,SPECT/CT装置を用いた補正で認められるのに対し,SSPAC法ではより均一な画像となっていることがわかる。これは,前者ではSPECT画像と減弱マップの間に位置ズレが存在するのに対して,後者ではこれが存在しないためと考えられた。

図6 SPECT/CT装置のCT画像を使った減弱補正とSSPAC法による減弱補正の比較

図6 SPECT/CT装置のCT画像を使った減弱補正と
SSPAC法による減弱補正の比較
(データご提供:金沢大学様)

 

■冠動脈CT画像と心筋SPECTのフュージョン“NM Cardiac Fusion”

近年,ソフトウェアの進歩により,冠動脈の形態的評価を行う冠動脈CT画像と,機能的評価を行う心筋血流SPECTをフュージョンさせる手法が開発されており,そのフュージョン画像は臨床の場で高く評価されている3),4)
GCA-9300Rに搭載されるNM Cardiac Fusionも画像フュージョン用アプリケーションの一つで,冠動脈CT画像とSPECT画像の3Dフュージョン表示が可能である。冠動脈の状態(走行・狭窄や石灰化の有無)と心筋血流の状態(虚血・梗塞の有無)を同時に観察することで,責任血管の判定・治療方針の決定・被検者への説明に効果が大いに期待できる(図7)。
また,本アプリケーションでは,ポーラーマップ解析画像も冠動脈CT画像とフュージョン可能で,被検者自身の冠動脈CT画像をオーバーレイ表示することで,複雑な血管走行をポーラーマップ解析画像上でも容易に把握できる。もちろん,ポーラーマップ解析はreversibilityやwashoutといった各種の解析に対応している。

図7 NM Cardiac Fusion使用画像

図7 NM Cardiac Fusion使用画像
(データご提供:鹿児島大学様)

 

GCA-9300Rの画像は,潤沢なカウントから作られる高画質な画像・減弱アーチファクトの補正・冠動脈CT画像とのフュージョンによる心筋血流評価という3つの特長から,心臓検査における診断能向上に大きく寄与できていると考える。

*NM Cardiac Fusionはオプション機能です。

●参考文献
1)McQuaid, S.J., et al. : Sources of attenuation-correction artefacts in cardiac PET/CT and SPECT/CT. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 35・6, 1117~1123, 2008.
2)前田壽登・他 : 心筋SPECTにおける減弱補正─散乱・フォトピ-クデ-タからの減弱係数マップ作成および減弱補正. メディカルレビュー, 90, 2003.
3)Matsuo, S., Nakajima, K., et al. : Clinical usefulness of novel cardiac MDCT/CT fusion image. Ann. Nucl. Med., 23・6, 579〜586, 2009.
4)Slart, R.H., et al. : Diagnostic pathway of integrated SPECT/CT for coronary artery disease. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 36・11, 1829〜1834, 2009.

 

●問い合わせ先
東芝メディカルシステムズ株式会社
核医学営業部
〒108-0022
東京都港区海岸3-20-20
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TEL:03-6369-9645
http://www.toshiba-medical.co.jp

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