セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

第76回日本医学放射線学会総会が2017年4月13日(木)~16日(日)の4日間,パシフィコ横浜(横浜市)にて開催された。16日に行われた東芝メディカルシステムズ株式会社共催のランチョンセミナー25では,東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座教授の阿部 修氏が座長を務め,聖マリアンナ医科大学先端生体画像情報研究講座特任教授の小林泰之氏が,「聖マリアンナ医科大学グループ病院を統合する次世代画像情報システムの実現」をテーマに講演した。

*最後に講演動画を掲載

2017年8月号

第76回日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー25

聖マリアンナ医科大学グループ病院を統合する次世代画像情報システムの実現

小林 泰之(聖マリアンナ医科大学先端生体画像情報研究講座)

本講演では,聖マリアンナ医科大学グループ4病院1クリニック間で2016年12月から本稼働した次世代画像情報システムについて,構築のねらいから概要や特長,そして将来展望について紹介する。

次世代画像情報システム構築の経緯

当大学では3年ほど前に,グループの4病院1クリニックが連携し医用画像の共有や統合管理を行う新システムを構築する計画が立てられ,理事会の承認を得て準備が始まった。
新システムへの更新では,当初国内外6社のシステムを候補として検討し,その後国内3社のシステムに絞り込んだ。選定に当たっては,4病院1クリニックから,放射線科医と診療放射線技師が参加し,1000項目以上の要件を記載した仕様書を作成して,各社に実現の可否と見積書の提出を依頼。最終的に,仕様書に記した要件の実現の可能性と予算に加えて,先進的なモダリティを有する企業であること,画像解析アプリケーションを自社で開発可能であること,スタッフの情熱などを評価して,東芝メディカルシステムズをパートナーとし,同社の最新PACS「RapideyeCore Grande」をベースとした次世代画像情報システムを構築することとした。そして,2016年12月30日に電子カルテ(NEC社製)とRIS(東芝メディカルシステムズ社製)とともに更新した(図1)。
稼働し始めた次世代画像情報システムの読影端末は,リアルタイムMPR機能を搭載した多機能ビュアー,「Vitrea Advanced」(東芝メディカルシステムズ社製)と「Ziostation2」(ザイオソフト社製)を搭載した解析用ビュアー,レポートシステムで構成。読影室第1に17台,読影室第2に3台,ER読影室に2台のほか,CT,MRIなどの検査室も含め,合計29台配備した。

図1 次世代画像情報システムの構成図

図1 次世代画像情報システムの構成図

 

医療とそれを取り巻く環境の劇的変化

次世代画像情報システムを構築するためには,医療とそれを取り巻く環境の劇的な変化を理解することが必要である。特に,今後の放射線部門を運営していくには,(1) 2025年問題(地域医療構想・地域包括ケア),(2) 2016年度の診療報酬改定で夜間・休日の自宅での読影に対する画像診断管理加算の算定が可能になったこと,(3) 人工知能(AI)が放射線科医の業務に与える影響,などに関心を持つことが大切がある。
医療におけるICTについては,Internet of Things(IoT)やAI,Vendor Neutral Archive(VNA)といった新たな技術により変革がもたらされている。モノのインターネットであるIoTは,CTやMRI,インジェクタなどのモダリティへの応用が期待される。また,AIについては,ディープラーニング技術の登場により,現在の第三次AIブームが起こり,本格的に医療分野への応用が始まろうとしている。
さらに,医療情報システムに関しては,米国において,前オバマ大統領が遺伝子情報を基にした“Precision Medicine Initiative”を行うとしたほか,臨床判断支援システム(Clinical Decision Support System:CDSS)の利用も始まっている。一方,日本では,団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて,地域医療構想と地域包括ケアシステムの構築が進められており,ICTを活用した医療を推進しようとしている。政府は2015年から次世代医療ICT基盤協議会を開催し,その中で,レセプトなどのさまざまな医療情報の収集と利活用を行うとしている。
このような状況の中で,画像診断も大きな変革期を迎えている。例えば,従来の形態診断から機能診断への移行が進んでいる。また,Precision Medicineに向け,定量的評価のウエイトが高まっている。さらに,Precision Medicineには,ビッグデータが重要となるほか,自動診断・診断補助やAIなどの技術を取り入れていくことも必要である。定量的評価は,疾患の程度や活動性の正確な評価,潜在性疾患の検出やスクリーニングに加え,正確な治療効果判定と治療効果の予測,リスク・予後評価にも有用で,Precision Medicineには必要不可欠な診断技術と言える。そこで,次世代画像情報システムでは,ルーチン検査の中で定量的評価ができることをめざした。
近年,画像診断は,2D画像から3D画像を経て,4D画像も一般的になろうとしている。今後,定量的評価が重要となることで,検出・解析の自動化も進んでいくであろう。さらに最近では,Radiomics/Radiogenomicsの研究が行われているほか,ディープラーニングなどのAIの開発,診断と治療を同時に行うTheranosticsといった新しい臨床技術も広がっており,放射線科医の進むべき道は多岐にわたっている。このような変革の中にあって,放射線科医の置かれている環境は厳しいが,変化を恐れずにわれわれが変わる良いチャンスだととらえるべきである。

読影の効率化

次世代画像情報システムを構築するに当たって,われわれは,画像情報を患者に確実に届けることができ,患者のマネジメントに役立つ“For All the Patients”のシステムをめざした。そのためには,臨床医に画像情報を確実に提供することが重要であり,そのベースとして,放射線科医が最も読影しやすく,診療放射線技師が最も利用しやすいシステムづくりが必要と考えた。このことを踏まえ,次世代画像情報システムは,画像情報から得られる情報を,迅速かつ適切に臨床医に届け,さらにデータベース化により効率的に見える化して利用できるようにし,患者のマネジメントに真に役立つシステムにすることにした。そして,このシステムを構築するためには,(1) AIを含むICTの積極的な利用,(2) 最新技術による画像診断を患者に届ける,(3) 画像が持っているポテンシャルを引き出す,(4) 放射線科医と臨床医の連携を推進,(5) 患者のアウトプットの改善に寄与する,といったことを考慮した。さらには,このシステムを利用することで,放射線科医は読影室で読影レポートを作成するだけでなく,患者中心の医療の中で変わり,次世代へと進化して,その存在意義を高めることが重要だと考えた。一方で,放射線科医の業務は,読影件数や撮影範囲の増大,画像診断管理加算への対応など負担が増加しており,読影以外の時間の確保が困難で,PACSの新機能を利用する余裕がないのが実情であり,読影業務の効率化が必要不可欠である。
そこで,われわれは読影の効率化と高機能化を同時に達成することが必要と考えた。高機能化とは,機能診断や定量的評価,モダリティ連携,診断補助,データベース化,自動化,病病・病診連携,医療安全などに対応することであり,将来的なAIの利用も見据えている。読影の効率化については,図2の要件を挙げて,次世代画像情報システムへの搭載を図った。また,臨床医にとっての良い読影レポートは,図3のポイントが挙げられる。新システムでは,これらのポイントを実現し,画像情報を効果的に提供できるようにした。
読影の効率化を図る機能として,われわれの次世代画像情報システムでは,MPR機能を強化した。新しいビュアーでは,注目シリーズのAxial,Coronal,Sagittalの3断面を同時に表示するだけでなく,レイアウトを保ったまま注目シリーズに断面方向を切り替えて表示できるという,2種類のMPR機能を搭載した(図4)。このMPR切り替え機能によって過去画像とのVolume Dataによる比較読影も容易に行えるようになり,放射線科医の利便性が大幅に向上した。
また,次世代画像情報システムでは,レポート作成機能も充実している。海外では,放射線科医と腫瘍医に対して行った読影レポートに対する評価についてのアンケートで,放射線科医が高評価しているレポートを,腫瘍医が低く評価していたという結果が報告されている。そこで,われわれはこのようなギャップをなくすために,レポートシステムにハイパーリンク機能を搭載した。ハイパーリンク機能は,レポート上にハイパーリンクテキストを作成して,それをクリックすることでキー画像を表示できる1),2)。所見とキー画像を関連づけられるほか,キー画像前後の画像も自動的に保存され,キー画像とともに参照できる。さらに,MPR画像へのハイパーリンクにも対応した。この新機能では,キー画像にハイパーリンクを設定することで,自動的に前後のスライス画像を作成してサーバに保存される。そのため,臨床医は放射線科医が診断に用いたMPR画像を速やかに参照でき,より理解しやすく,誤解のない読影レポートの提供が可能となる。このほか,われわれのシステムでは,読影ビュアーに表示したキー画像への所見の直接入力,所見やキー画像,計測値などの読影レポートへの自動貼付,ハイパーリンクの自動作成が可能なアドバンストレポート機能も搭載している。これにより,放射線科医が臨床医にとって理解しやすい読影レポートを作成しやすくなった。われわれは,このような読影を効率化する機能の見直しを継続して行っており,今後さらに,放射線科医の負担を軽減するようなシステムをめざしていく。

図2 放射線科医が求める良いPACS

図2 放射線科医が求める良いPACS

図3 臨床医が求める良い読影レポート

図3 臨床医が求める良い読影レポート

 

図4 2種類のMPR機能

図4 2種類のMPR機能

 

読影の高機能化

1.病病・病診連携
次世代画像情報システムは,当大学グループ4病院1クリニック間でレポートシステム,画像データ,アプリケーションすべてを同じように扱える読影環境にして,施設間の情報共有を図るグループ内病病・病診連携システムをめざしている(図5)。このシステムでは,統合データベースを構築しており,放射線科医がそれぞれの専門領域に応じて各施設の検査画像の読影を行うことが可能で,本院における24時間365日での読影体制を有効活用して,全病院の夜間などの緊急読影への対応をめざしている。さらに,施設間の読影補助も行われており,将来的には病院間でのコンサルト機能や,被ばく線量や造影剤量などの検査プロトコールの統合管理も見据えている。このような放射線部門の統合環境の実現によって,臨床医や患者の利便性が高まり,患者宅の近くの施設で検査を受けられるようにしたり,各施設の検査予約状況を見て検査を振り分けたりでき,病院連携したモダリティの効率的運用も可能になる。現在は,本院とブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニックとの間で接続が完了しており,今後順次,ほかの病院との接続を進めていくこととしている。

図5 4病院1クリニックの病病・病診連携システム

図5 4病院1クリニックの病病・病診連携システム

 

2.モダリティ連携とアプリケーション開発
次世代画像情報システムでは,CT,MRIなどのモダリティとの連携を強化し,自動処理などが可能なシステムをめざしている。また,アプリケーションの開発による臨床医への効率的な画像情報の提供,データベース化により画像情報を最大限に生かせる環境を構築する。東芝メディカルシステムズは,モダリティとアプリケーションの両方を手がけているメーカーであることから,検査から読影レポートの配信に至るまでの統合的なアプローチが可能であると考えている。
例えば,CTの撮影条件やインジェクタの造影プロトコールなどを自動的に収集してRIS上で管理したり,PACS上でCTの生データを保管することも可能である。さらに,次回の検査時に過去の情報を容易に参照可能で,より精度の高い検査を行える。また,アプリケーション開発では現在,肺腫瘍,肝腫瘍,脳腫瘍の計測アプリケーションと大動脈瘤の計測アプリケーションの開発を行っている。これらのアプリケーションは臨床で用いることを想定して開発中で,画像上で簡単なクリック操作をするだけで自動的に計測され,それをグラフ化して,レポート画面にわかりやすく表示することが自動的に可能になる(図6)。このようなアプリケーションをVitrea Advancedとして提供し,電子カルテからも利用できるようにしていく。今後は,Ziostation2のほかに,キヤノン社などのメーカーのアプリケーション,システムと次世代画像情報システムを連携させて,4病院1クリニックの画像情報の統合を推し進める。

図6 腫瘍計測アプリケーション

図6 腫瘍計測アプリケーション

 

3.レポートの高機能化
現在の稼働中の次世代画像情報システムのレポートシステムは,フリーテキスト入力であり,検索機能が十分とは言えない。そこで,今後の構想として,構造化レポートシステムの開発を行っていく。この構造化レポートシステムでは,レポートをテンプレート化することで,正確かつ迅速な読影を支援するだけでなく,教育にも有効活用でき,また臨床医がより理解しやすいレポートを作成することが可能である。さらに,レポートが蓄積されビッグデータ化されれば,AI技術を用いた研究にも再利用できると期待される。

4.医療安全対策
次世代画像情報システムのデータベースでは,今後,撮影から解析,読影,レポート配信までの情報をデータベース化して一元管理し全病院間で共有化され,これらの情報を分析することで,医療安全対策にも利用できるようにする。この取り組みの一つとして,われわれは根本杏林堂とインジェクタの共同開発を行い,造影剤名だけでなく造影剤成分でもICタグの読み取りに対応できるようにした。また,RIS内にある詳細な造影剤アレルギー情報とリンクさせたほか,病院内だけでなく病院間でも造影剤アレルギー・腎機能に関する情報を共有化している。さらに,造影プロトコールを管理できるよう開発を進めている。

5.救急画像診断
次世代画像情報システムでは,救急領域における画像診断システムを構築している。前述のとおり,4病院1クリニック間がネットワークで結ばれ,最終的には本院の放射線科医が24時間365日体制で読影を行うことをめざしている。遠隔画像診断読影システムにより,個人のPCから本院のシステムにアクセスして,データを転送することなく画像参照とレポート作成をできるようにする(図7)。さらに,匿名化した画像データをクラウド上のデータセンターに転送して,iPadで参照する院外画像参照システムも運用する。

図7 救急画像診断システム

図7 救急画像診断システム

 

6.被ばく線量・検査マネジメント
次世代画像情報システムでは,CTなどのモダリティと連携して,線量値分析(図8),検査時間分析,検査数分析が可能となっている。これにより,検査内容に応じた最適な線量で撮影を行えるようになるほか,時間別,装置別の検査情報を分析でき,効率的な装置の運用やスタッフ管理,経営分析が可能となる。

図8 線量値分析機能

図8 線量値分析機能

 

7.情報セキュリティ
医療安全対策の一つとして,情報セキュリティも重要となる。次世代画像情報システムでは,患者を匿名化すると匿名化番号と本来の患者IDの連携データを自動で作成して,システム内で管理できるようになる。これまで医師が個別に管理していたことが自動化され,個人情報の漏えい防止につながる。
また,読影レポートを依頼医が確認したかのチェック機能,依頼医への緊急連絡機能も有している。

8.カンファレンス/ティーチング
次世代画像情報システムの一機能として現在,カンファレンス/ティーチング機能の開発を進めている。本機能ではカンファレンスのための準備などが容易になるほか,カンファレンスに使用したデータをティーチングにも利用できるようになる。これにより,カンファレンス業務を支援するほか,類似症例による教育環境を提供することが可能となる。

9.地域連携システム
われわれが現在運用している地域連携システムでは,クラウドによる画像配信を行っている。今後は,さらに機能を強化して,CTやMRIなどの検査予約も可能なシステムをめざす。このシステムでは,グループの4病院1クリニックのネットワークを生かして,患者がアクセスしやすい施設や待ち時間の少ない施設で検査が施行できるようにする。さらには,他施設で運用している他社のPACS画像も管理できるVNAの構築も検討している。

さらなる開発の方向性

東芝メディカルシステムズでは,今後の画像情報システムとして,Vendor Neutral Dataflow Management(VNDM)と“Augmented Clinical Cockpit”の開発を進めている。VNDMとは,VNAのように統合的にデータをアーカイブするのではなく,個々のPACSサーバにデータを保管して,そのデータフローを管理する仕組みである。このVNDMは,VNAよりも経済性に優れており,より効率的なデータ管理が可能になると期待される。また,Augmented Clinical Cockpitに関しては,今後,AIを含めた解析を実現したいという構想を持っている。東芝メディカルシステムズでは,ジョンズ・ホプキンス大学と放射線治療体重減少推定,また自治医科大学と診療支援について,AIの研究開発を行っている。北米放射線学会(RSNA)などの海外学会でも,AIに関する講演や発表が増えている。このような状況を踏まえつつAI技術をいかに活用するかが,今後重要になってくる。

まとめ

最新のICTを利用した次世代画像情報システムは,これからの放射線医学において中心的な機能を担うことになる。われわれとしても,引き続き,真に患者のマネジメントに役立ち,放射線科医や診療放射線技師の存在感を高める次世代画像情報システムの開発を行っていく。

●参考文献
1)Folio L.R., et al. : Quantitative Radiology Reporting in Oncology: Survey of Oncologists and Radiologists. Am. J. Roentgenol., 205・3, 233〜243, 2015.
2)Machado, L.B., et al. : Radiology Reports With Hyperlinks Improve Target Lesion Selection and Measurement Concordance in Cancer Trials. Am. J. Roentgenol., 208・2, 31〜37, 2017.

 

阿部  修(Abe Osamu)

座 長
阿部  修(Abe Osamu)

小林 泰之(Kobayashi Yasuyuki)

演 者
小林 泰之(Kobayashi Yasuyuki)
1989年 旭川医科大学医学部卒業。91年 自治医科大学放射線科。95年 スタンフォード大学留学。2005年 聖マリアンナ医科大学。2007年 ジョンズ・ホプキンス大学留学。現在,先端生体画像情報研究講座特任教授,画像センター副センター長。

 

講演動画

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)

【関連コンテンツ】
TOP