セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

一般社団法人日本心エコー図学会第27回学術集会が2016年4月22日(金)〜24日(日)の3日間,大阪国際会議場にて開催された。22日に行われた東芝メディカルシステムズ株式会社共催のランチョンセミナー1では,岡山大学循環器内科教授の伊藤 浩氏が座長を務め,筑波大学医学医療系循環器内科准教授の瀬尾由広氏が講演を行った。

2016年9月号

一般社団法人日本心エコー図学会第27回学術集会ランチョンセミナー1

新たなチャレンジ─LVからRVまでvolumeで診る─

瀬尾 由広(筑波大学医学医療系循環器内科)

筑波大学では,ここ数年にわたり東芝メディカルシステムズ社と心エコーに関する産学共同研究を行ってきた。なかでもスペックルトラッキング技術を応用した壁運動解析アプリケーションである“3D-Wall Motion Tracking(3D-WMT)”では,ボリューム評価はもとより,ストレイン値を用いた収縮能・拡張能の評価やActivation Imagingによる時相のズレなどの評価も可能である。さらに,現在は右室への応用も開始されている。本講演では,上記の内容を中心に,共同研究の成果を総括する。

左室の包括的計測の意義

1.各モダリティにおける左室容量計測の現状

日本循環器学会が2013年に公表した「循環器疾患診療実態調査報告書」によると,2012年の日本における循環器画像検査数は冠動脈CTの約40万件,心臓MRIの約3万件に対し,心エコーは約470万件と圧倒的に多く,2004年の約260万件から飛躍的に増加していることから,心臓イメージングの中枢を担っているのは現在も心エコーであると言える。
ESC Guidelines 2012には,各モダリティの左室容量計測に関する推奨度,計測精度が記載されており,2Dシンプソン法を用いた心エコーによる左室(LV)の拡張末期容積(EDV),収縮末期容積(ESV),駆出率(EF)の計測精度は2+,MRIはすべて3+で,MRIがゴールドスタンダードとなる。EDVとESVについては,3D心エコーで計測してもMRIの値より低く見積もってしまうが,LVEFについては2Dでも3Dでもほとんど差がない。また,今後はCTで計測する時代が来ると思われるが,MRIや心エコーと遜色のない心内膜の画像データが得られており,現在はCTの動画を用いてボリューム計測を行うソフトウエアも複数登場している。ただし,CTは腎機能が低下している症例では造影剤が使用できないほか,被ばくの問題もある。

2.3D心エコーによる左室容量計測の意義

2D心エコーによる左室容量計測の精度を見ると,LVEF以外はすべて低く見積もってしまうことから,計測に当たっては3D心エコーを用いるべきである。また,EDVでは左室のリモデリングが評価可能であるが,ESVではそれに加えて左室の収縮機能なども評価可能であり,有用性が高い。ESVはLVEFよりも予後の規定因子として重要であり,より正確に計測するためにも3D心エコーの有用性が期待される。
近年,LVEFはOncologyの領域で注目されている。American Heart Association(AHA)では,抗がん剤による早期の心筋症をLVEF 53%以下と定義し,この段階での発見に力を注いでいるが,症状がある場合は抗がん剤投与前よりLVEF 5%の減少,また,無症状でも10%減少すれば抗がん剤による心筋症であるとしている。一方,5%というのは心エコーによる検者間誤差の範囲内であることから1),心エコーで検出するのはきわめて困難であり,2D心エコーよりも検者間誤差が少ないとされる3D心エコーでのフォローアップが求められる。

3.ストレイン計測の意義

近年,実臨床では「LVEF 50%以上を保持した心不全(HFpEF)」が多いことが複数の報告によりがわかっている。心エコーで10%前後のLVEFの差を見ることは困難なことから,心機能のより正確な評価を可能とする検査法として,左室ボリューム全体の心筋の挙動をとらえる3D-WMTを開発した(図1)。
左室は回転楕円体のため,右室と比較して3D-WMTが容易である。2D-WMTに対する3D-WMTの利点は,ストレイン計測を行う際に,描出している断面にズレが生じるthrough-plane現象の影響を受けないことである。
ストレインにはcircumferential strain(CS),longitudinal strain(LS),area change ratio(ACR)などがあり,いずれもLVEFとほぼ相関するが,CSとの相関が最も良い。特にLVEFが悪いときの相関が強く,ストレイン計測によって患者の予後層別化や,疾患に隠れたサブクリニカルな問題が検出できると考えている。さらに,global longitudinal strain(GLS)と糖尿病性微小血管障害である神経障害,網膜症,腎障害のステージが強く相関していることが発表されており2),これらの患者では心電図R-R間隔変動係数(CVRR)との相関も強いことから,こうしたことを早い段階で知ることはHFpEFを予防するためにきわめて重要と思われる。重症化する前の患者の診断において,左室容量だけでなくストレインも含めて包括的に計測する意義は大きいと考えている。

図1 3D-WMTの拡張時(a)と収縮時(b)の画像

図1 3D-WMTの拡張時(a)と収縮時(b)の画像

 

右室のスペックルトラッキングの有用性

1.右室機能評価の意義と課題

近年,左室機能の低下に加え右室機能も低下している症例の予後がきわめて悪いことが知られており,例えば左心不全の患者を右室駆出率(RVEF)で層別化可能なことから,右室機能評価に注目が集まっている。
左心不全において右室機能に影響を及ぼす因子は,主に肺高血圧症(PAH)による二次的な右室の機能障害とされてきたが,最近では,それ以外にも神経体液因子や分子生物学的特異性の問題なども注目されるようになり,右室は左室と若干異なるメカニズムを持つことがわかってきた。

2.3D RV Speckle trackingの開発

右室は複雑な形態をしているため,以前から心エコーによる3D RV imagingが試みられており,MRIとの比較でも遜色なくRVのボリュームやEFの計測が可能である。また,急性肺塞栓症において,発症直後に低下したGLSが治療後に大きく改善することが報告されているが,これは,発症直後に右室内で同期障害が起こっており,その改善が右室機能の改善に寄与することから,“3D RV Speckle tracking”の意義は大きいと考える(図2)。ただし,右室リモデリングにより縦走する筋肉が斜走するため,長軸ストレインで何を見ているのかがわからなくなるという限界もある。このため,面積全体での変化をとらえる,もしくはCSのデータが必要になると思われる。

図2 右室長軸ストレイン解析

図2 右室長軸ストレイン解析

 

そこで考案されたのが3D RV Speckle trackingであり,東芝メディカルシステムズ社の新しい超音波診断装置である「Aplio iシリーズ」への搭載が予定されている。図3 aは3D RV Speckle trackingの画像であるが,右室をこのようにきれいに撮像できると,三尖弁や肺動脈弁,室上稜,自由壁,中隔などの右室内膜面の三次元構造が確認でき,右室の収縮の確認や,右室容量計測も可能である(図4)。右室の3Dストレイン指標も左室と同様に,CS,ACR,LSの3つを同時に計測可能である(図5)。われわれが行った動物実験での検証では,ソノマイクロメトリで撮ったストレイン値と心エコーのストレイン値はかなり良好に相関しており3),心エコーのストレイン値のデータの信頼性は高いと思われる。図6は,肺高血圧症の右室の3Dストレイン解析画像に色付けしたものである。

図3 3D RV Speckle tracking(a)と‌3D LV Speckle tracking(b)の画像対比

図3 3D RV Speckle tracking(a)と‌3D LV Speckle tracking(b)の画像対比

 

図4 3D RV Speckle trackingによる右室容量計測

図4 3D RV Speckle trackingによる右室容量計測

 

図5 右室の3Dストレイン指標の計測

図5 右室の3Dストレイン指標の計測

 

図6 肺高血圧症の右室の3Dストレイン解析カラー画像

図6 肺高血圧症の右室の3Dストレイン解析カラー画像

 

一方,右室の3Dストレイン解析にて流出路の上の部分までしっかりと描出できる症例は約6割である。そこで,解剖学を反映した右室のセグメント化を行うことで,流出路の画像取得率の改善を図った(図7)。
正常例,成人先天性心疾患,拡張型心筋症,肺高血圧症などの144例を対象に,実臨床にて計測を行った。RVEFとストレイン値(ACR,LS,CS)の相関を見ると,RVEFと最も良く相関していたのはACRであり,前述の通り面積全体での変化を見た方がよいという考えを裏づける結果となった。また,右室全領域の解析可能率は約63%で,37%程度は流出路を中心に除外せざるを得なかった。さらに,成人先天性心疾患における部位別の解析可能率を見ると,inletとseptumは100%,apexは86%,outletは79%であった。実はinletのACRがRVEFと非常に良く相関し(R2=0.65,p<0.001),RVEFを代替できることがわかっている。相関係数は2D心エコーのLSよりも高いため,3D心エコーのinletのACRの方が有用と思われる。

図7 右室解剖学を反映したセグメント化

図7 右室解剖学を反映したセグメント化

 

3D echo imagingの将来像

われわれは現在,東芝メディカルシステムズ社と共同で左心系の心房心室連関を3D心エコーで描出する技術の開発に取り組んでいる。右室のストレインと左室の収縮伝播を描出するActivation Imagingでは,近い将来,心臓の四腔それぞれの収縮伝播を描出できるシステムが構築されれば,AV couplingやVV couplingも可能になると思われる。

画期的な新製品Aplio iシリーズ

東芝メディカルシステムズ社は,超音波診断装置の新製品として,3D経食道心エコーも可能な「Aplio iシリーズ」を開発した。
図8は「Artida」とAplio iシリーズの画像比較であるが,新しいプローブでは描出能が飛躍的に向上している。
図9は,正常例,陳旧性心筋梗塞(OMI),肥大型心筋症(HCM)の画像であるが,心尖部の描出能が向上しており,陳旧性心筋梗塞の画像でも心尖部の輪郭を明瞭にとらえられている(図9 b)。肥大型心筋症の画像では,心筋性状の観察も可能である(図9 c)。
図10はカラードプラ画像であるが,三尖弁逆流(TR)が明瞭であり(図10 a右),心腔内の血流も描出されている(図10 b右)。
Aplio iシリーズで使用可能な3D経食道用プローブは,小さく,挿入しやすくなっている(図11 a)。図11 bに,正常例の僧帽弁の画像を示す。
最先端技術が搭載されたAplio iシリーズの今後に期待したい。

図8 Artida(a)とAplio iシリーズ(b)の画像比較

図8 Artida(a)とAplio iシリーズ(b)の画像比較

 

図9 Aplio iシリーズによる正常例(a),陳旧性心筋梗塞(b),肥大型心筋症(c)の画像

図9 Aplio iシリーズによる正常例(a),陳旧性心筋梗塞(b),肥大型心筋症(c)の画像

 

図10 Aplio iシリーズのカラードプラ画像

図10 Aplio iシリーズのカラードプラ画像

 

図11 3D経食道用プローブ(a)と実際の画像(b)

図11 3D経食道用プローブ(a)と実際の画像(b)

 

 

●参考文献
1)Thavendiranathan, P., et al. : Reproducibility of echocardiographic techniques for sequential assessment of left ventricular ejection fraction and volumes ; Application to patients undergoing cancer chemotherapy. J. Am. Coll. Cardiol., 61・1, 77〜84, 2013.
2)Enomoto, Y., Ishizu, T., et al.:Myocardial dysfunction identified by three-dimensional speckle tracking echocardiography in type 2 diabetes patients relates to complications of microangiopathy. J. Cardiol., 2016(in press).
3)Atsumi, A., Seo, Y., et al. : Right Ventricular Deformation Analyses Using a Three-Dimensional Speckle-Tracking Echocardiographic System Specialized for the Right Ventricle. J. Am. Soc. Echocardiogr., 29・5, 402〜411, 2016.

 

瀬尾 由広(Seo Yoshihiro)

瀬尾 由広(Seo Yoshihiro)
1992年 筑波大学医学専門学群卒業。2004年 同大学大学院博士課程医学研究科修了。同大学院人間総合科学研究科講師。2009年 同准教授。2012年〜組織改編により筑波大学医学医療系循環器内科准教授。

 

 

 

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