セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

第73回日本医学放射線学会総会が2014年4月10〜13日の4日間にわたって,パシフィコ横浜(横浜市)で開催された。3日目の4月12日(土)に行われた,東芝メディカルシステムズ(株)共催のランチョンセミナー11では,慶應義塾大学医学部放射線科学教室の栗林幸夫氏が座長を務め,独立行政法人 国立がん研究センター東病院放射線診断科の久野博文氏,岩手医科大学放射線医学講座の田中良一氏,広島大学大学院医歯薬保健学研究院/研究科放射線診断学研究室の立神史稔氏の3名が,「第二世代面検出器CTの最新臨床応用」をテーマに講演を行った。

2014年7月号

第73回日本医学放射線学会総会 ランチョンセミナー11 第二世代面検出器CTの最新臨床応用

石灰化サブトラクション技術を用いた冠動脈CTの実際─The impact of coronary calcium subtraction CT angiography─

田中 良一(岩手医科大学附属病院循環器医療センター循環器放射線科)

田中良一 氏

田中良一 氏

冠動脈サブトラクションCTAは,石灰化が除去され血管内が明瞭に観察できるため,有用性が高い。本講演では,現在,東芝メディカルシステムズ社と共同開発を行っている冠動脈サブトラクション機能について説明する(2014年4月中旬リリース開始)。

冠動脈CTの現状

冠動脈狭窄の低侵襲な診断法として冠動脈CTが普及していることは周知の通りである。64列以上のCTで高い診断能を有することは論文等でも報告されている。また,石灰化スコアを測定することで,有病の可能性の高い症例のスクリーニングが可能である。ただし,石灰化病変が必ずしも有意狭窄とは限らず,また,CTでは石灰化がある部分の内腔は非常に見にくくなることが指摘されている。
冠動脈狭窄の主因は動脈硬化であるが,動脈硬化が進むほど石灰化が顕著になり,冠動脈カテーテル検査(CAG)を実施する場合にもリスクが高まる。石灰化はCTではアーチファクトが発生するため,石灰化スコアが600ないし400以上の症例は評価が難しいと言われている。
常に動いている心臓の特性から,石灰化病変の内腔の評価に画像減算法であるサブトラクションを適用するのは無理ではないかと考えていた。しかし,これまで検討を重ねるなかで,冠動脈サブトラクションCTAの有用性が明らかになった。以下に,検討内容とその評価を報告する。

320列ADCTを用いたサブトラクションの特長

320列ADCTを用いたサブトラクションは1回転のvolume scanのため,ヘリカルスキャンで発生する時相のズレによるバンディングアーチファクトがないことが大きな利点だ。ハーフ再構成のため,データ収集角度のズレが若干生じるが,ヘリカルスキャンのらせん軌道と比べると,その影響は少ないことがわかっている。320列ADCTを用いて冠動脈サブトラクションを行う場合は,できる限り低被ばく,かつ,モーションのないボリュームデータを得ることが条件である。

Preliminary study

実際にどの程度サブトラクションが有効なのか,preliminary studyとして,CAGと比較できた20例について検討した。画質については,「Uninterpretable(評価できない)」「Poor(良くない)」「Moderate(まあまあ良い)」「Good(とても良い)」という4段階の視覚的評価を行った。その結果,全体平均は2.98点で,「Moderate」が最も多かった。
また,当初は1回の息止めでサブトラクションを行っていたものの,息止めを長くできない患者さんにおいては2回の息止めで行った。1回呼吸停止の平均は3.19点,2回呼吸停止は2.78点と,やはり点数に若干の差が生じることがpreliminary studyでわかった。
診断精度は,1回呼吸停止で行うと非常に良い相関が得られるが,2回呼吸停止では感度,特異度,陽性的中率,正診率が下がっている(図1)。

図1 Preliminary studyの診断精度

図1 Preliminary studyの診断精度

 

1回呼吸停止でのサブトラクションの精度評価

1回呼吸停止の症例について検討した。ただし,このデータは最新型のAquilion ONE/ViSION Editionではなく,Aquilion ONE/Global Standard Editionで撮影した結果であり,スキャン時間は0.35秒/回転である。
対象症例は,石灰化スコアが400以上,20~40秒の呼吸停止が可能,不整脈やBMI>40kg/m2などは除外した。スキャンパラメータは,0.5mm,120kVp,0.35s/rot,AIDR 3D standardを用いた。心拍数65以上の症例ではβブロッカーを使用し,造影剤(350mgl/mL Iohexol)を注入速度0.07×BW(kg)mL/s,注入時間10秒で注入した。
結果は,石灰化スコアの平均は1276でバラつきが大きく,最低476,最高3275と,かなり石灰化スコアが高い人も含まれている。撮影時の平均心拍数は56.3であり,心拍を抑えた状態で撮影している。
被ばく量は,石灰化スコアやテストインジェクションも含めて1検査あたり平均11.97mSvと,許容範囲内であった。また,サブトラクション用の撮影のみでは5.21mSvで,通常のCTAに近い値となっている。
conventional CTでは石灰化のアーチファクトなど画質スコアは2.5と低いが,サブトラクションを行うことで3.1にまで改善された。また,conventional CTでは,石灰化がある部分は診断不可能になるため,診断不可能なセグメント数の比率が41.8%と高い。サブトラクションを行うと,アーチファクトが残るため診断不可能なセグメントが12.7%あるものの,診断可能なセグメントの比率が87.3%に上がることが証明された。
conventional CTとサブトラクションCTの診断率,診断能を図2に示す。これは,あくまでも石灰化があるセグメントのみを取り出して評価した結果であり,石灰化がないセグメントも含めると数値は当然良くなる。石灰化があるセグメントに限定すると,特異度はconventional CTでは48.7%にまで落ちるが,サブトラクションを併用することで10%ほど改善し,59.0%となった。AUCも,conventional CTでは0.741だが,サブトラクションを行うと0.905であった。ROC解析を行うと,N数が少ないためきれいな曲線にはならないが診断能が上がることが認められた。
ただし,この検討方法においては,1回の呼吸停止のスタディであるというlimitationがある。そのため,2回の呼吸停止の場合はどうなのかという疑問が残る。また,Aquilion ONE/ViSION Editionではないため,0.275秒/回転の結果ではない。
そのほか,本研究を進めるにあたって,東芝メディカルシステムズ社と共同開発している心拍によるズレを位置合わせするソフトウェアを用いているが,2013年1月にリリースした最新のV3ではなく,数世代前のバージョンを使っている。そのため,精度が最新版に比べて若干劣ると考えられる。さらに,被ばく低減に関しては,同社が開発中の新しいFull IR法を応用するなど,さらなる工夫が必要と考える。

図2 Conventional coronary CTA(CCTA)とSubtraction CCTAの診断率,診断能(参考文献1)より引用改変)

図2 Conventional coronary CTA(CCTA)とSubtraction CCTAの診断率,診断能
(参考文献1)より引用改変)

 

症例提示

●症例1

図3は,50歳代,男性,石灰化スコア583の症例である。conventional CTでは強い石灰化が見られ,主幹部(LMT)は血流が保たれていることがある程度認められるが,左前下行枝(LAD)は,有意狭窄か否かがわかりにくい。また,diagonal branchに関しては石灰化がかぶって,血流があるのかどうかがわからない。
サブトラクションを行うと,LMTの石灰化は除去されてやはり狭窄はなかったことがわかる。LADはやや強めの狭窄があるが有意狭窄ではないと考えられ,diagonal branchは高度な狭窄があることが認められる。CAGと対比すると,よく一致することがわかる。

図3 症例1:50歳代,男性,石灰化スコア=583 (参考文献1)より引用転載)

図3 症例1:50歳代,男性,石灰化スコア=583
(参考文献1)より引用転載)

 

●症例2

図4は,50歳代,男性,石灰化スコア895の症例である。conventional CTでは石灰化(↓)があり,血流は保たれてはいるようだが,狭窄率がどの程度かがわかりにくい。そこでサブトラクションを行うと,実際よりもやや強めに描出されている可能性はあるものの,50%を超えるような狭窄(↓)が見られる。CAGと対比しても,よく一致していると考えられる。

図4 症例2:50歳代,男性,石灰化スコア=895

図4 症例2:50歳代,男性,石灰化スコア=895

 

まとめ

冠動脈サブトラクションCTAは,高度石灰化を伴う病変の診断精度を改善しうる技術であると考えている。また,ソフトウェアの改良によって,位置合わせの精度の改善が期待できる。当然,アプリケーションは改良されているため,2回呼吸停止への応用も今後進むと思われる。実際にすでに実施している範囲では,2回呼吸停止でも良い結果が得られている。ただ,限界がまったくないわけではない。すべての石灰化がきれいに除去されるわけではないため,適用を守って適切に使っていただければと考える。

●参考文献
1)Tanaka, R., et al.:Improved evaluation of calcified segments on coronary CT angiography ; A feasibility study of coronary calcium subtraction.The International Journal of Cardiovascular Imaging, 29(2)Suppl., 75〜81, 2013.

 

田中 良一(Tanaka Ryoichi)
1990年 大分医科大学(現大分大学)医学部卒。92年 大分医科大学放射線科医員。93年 国立循環器病センター放射線診療部レジデント。94年 大分医科大学放射線科医員。98年 国立循環器病センター放射線診療部スタッフ。2006年 岩手医科大学放射線医学講座助教,2008年 同講師,2013年〜同准教授。

 

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