セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

第73回日本医学放射線学会総会が2014年4月10〜13日の4日間にわたって,パシフィコ横浜(横浜市)で開催された。2日目の11日に行われた東芝メディカルシステムズ(株)共催のランチョンセミナー9では,熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授の山下康行氏を座長に,医療法人鉄蕉会 亀田京橋クリニック 診療部部長 画像センター長の戸﨑光宏氏と,川崎医科大学放射線医学(画像診断1)教授の伊東克能氏が,最先端MRIによる臨床最前線をテーマに講演を行った。

2014年6月号

第73回日本医学放射線学会総会 ランチョンセミナー9 最先端MRIによる臨床最前線

膵胆道領域における機能動態評価 ─MRIによる多角的アプローチ

伊東 克能(川崎医科大学放射線医学(画像診断1))

MRIによる膵胆道領域の機能動態イメージングとは,胆管,膵管,乳頭部の“動きをみる”,膵液,胆汁の“流れをみる”ことで,機能評価に応用するものである。本講演では,膵胆道領域における選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPによる機能動態評価を中心に紹介する。

■動きをみる

図1の矢印(←)で示している胆管は,深呼吸により大きく動き,深呼気と深吸気でMRIを撮り分けると,胆管が伸びたり縮んだりする様子がよくわかる。このように胆管の動きをみることで,柔軟性を評価することができる。

図1 MRIによる膵胆道領域の機能動態イメージング(深呼吸に伴う胆管の形態変化)

図1 MRIによる膵胆道領域の機能動態イメージング
(深呼吸に伴う胆管の形態変化)

 

また,十二指腸乳頭部においては,括約筋の収縮や弛緩が頻繁に起きている。収縮時のMR画像では総胆管と膵管が離れてみえ,十二指腸との距離もあるが,弛緩時では膵管と総胆管がつながってみえ,十二指腸との距離も非常に近くみえる(図2)。これにより,十二指腸乳頭括約筋の機能評価,つまり収縮能を評価することができる。

図2 十二指腸乳頭部の収縮・弛緩に伴うMRCP像の変化

図2 十二指腸乳頭部の収縮・弛緩に伴うMRCP像の変化

 

■流れをみる ─‌選択的IRパルス併用 cine dynamic MRCP

膵液や胆汁の流れをみることに対してわれわれは,選択的IRパルスを併用したcine dynamic MRCPを行っている。50mm厚の1回の息止めのMRCP像に20mm幅のIRパルス(TI=2200msec:水抑制)を印加して撮像すると,流れのない膵液や胆汁は真っ黒の低信号に,流れのある膵液や胆汁はIRパルス印加領域内に高信号の白い線としてみえる(図3)。4秒間で1回の呼吸停止撮像を15秒間隔で繰り返し,5分間で20回連続撮像,10分間で40回連続撮像が可能である。膵液が流れる頻度と距離(グレード分類)によって,流れを評価している。

図3 流れをみる→膵液・胆汁の流れ

図3 流れをみる→膵液・胆汁の流れ
選択的IRパルス併用cine dynamic MRCP

 

●急性膵炎における流れの評価

正常例と急性膵炎における膵液の流れを比較したところ,正常例は40回中約30回流れているが急性膵炎では約4回と,非常に流れが悪くなっていることがわかった。これは,急性膵炎によって一時的に膵外分泌機能が障害され,膵液の排出量や流速の低下が起こっていることが原因と考えられる。急性膵炎回復後,膵外分泌機能の低下が約半数で改善していないことが報告されており,臨床的により重要なのは,急性膵炎回復後の膵外分泌機能改善の評価と言える。

●慢性膵炎における流れの評価

慢性膵炎においても膵液の流れが悪くなる。図4 aのMRCP像では主膵管と分枝膵管の不整拡張があり慢性膵炎と考えられるが,画像だけでは「準確診」にしかならない(慢性膵炎臨床診断基準2009:日本膵臓学会)。選択的IRパルス併用cine dynamic MRCP(図4 b)を行うと膵液の排出はほとんどみられず,膵外分泌機能が低下していることがわかる。このように,慢性膵炎の診断において,従来の形態的変化に加えて膵外分泌機能を評価することで,画像のみでの確診も可能になると考える。
現在,膵外分泌機能を評価する方法は,BT-PABA試験(PFD試験)のみだが,6時間の蓄尿が必須など負担が大きく,また,正確性に欠けるとの指摘もある。PFD試験と選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPによる膵液排出動態を比較すると両者は相関傾向にあり,選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPは,簡便な膵外分泌機能検査として有用と考える。

図4 選択的IRパルス併用

図4 選択的IRパルス併用
cine dynamic MRCPによる膵液排出の評価
膵外分泌機能面を加えた慢性膵炎診断への応用

 

慢性膵炎臨床診断基準2009では,「慢性膵炎偽診」と「早期慢性膵炎」という概念が加えられたが,慢性膵炎偽診は画像上(CT,MRI,ERCP)の所見がないものとされている。一方,早期慢性膵炎の画像所見(EUS所見)があり,かつ一定の診断項目に該当すれば,早期慢性膵炎と診断される。そこで,選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPが,慢性膵炎偽診(スクリーニング)や早期慢性膵炎の診断に貢献できないか検討した(図5)。選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPは,通常のMRCPではほとんど所見がなくても,慢性膵炎偽診または早期慢性膵炎を積極的に疑い,超音波内視鏡(EUS)検査を推奨するというスクリーニング的な役割を果たすことができるのではないかと考えている。

図5 上部腹痛がありp-amylase異常がある症例

図5 上部腹痛がありp-amylase異常がある症例
選択的IRパルス併用cine dynamic MRCP(b)による評価で
早期慢性膵炎を積極的に疑い,EUSにつなげる。

 

●膵外分泌機能評価の問題点

選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPによる膵外分泌機能評価の問題点の1つは,膵液排出の低下が本当に膵外分泌機能低下を示すのか,ということだ。慢性膵炎では重炭酸塩濃度が最初に低下するが,膵液量やアミラーゼ分泌量も比較的早い段階で低下する。実際,上記診断基準の解説でも,膵外分泌機能低下を示す症例は慢性膵炎偽診を念頭において注意深く経過観察すると記載されているため,選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPは臨床的には非常に有用と思われる。
2つ目の問題点は,ゴールドスタンダードであるセクレチン試験はセクレチン負荷刺激によって膵外分泌予備能をみているが,選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPは生理的状況下での膵外分泌能をみているということである。これに対しては,クエン酸水を負荷して検査を行うことで,セクレチン試験と同じように予備能をみることも可能である。
3つ目の問題点は,慢性膵炎での膵液排出低下には年齢の影響もあり,特に70歳を超えると大きく低下することである。そのため,高齢者において慢性膵炎の擬陽性が起こる可能性がある。
4つ目の問題点は,膵囊胞性腫瘍(IPMN)合併により膵液の流れが悪くなる影響である。

●胆汁の流れの評価

胆汁は,流れが遅いことや胆管の内圧が膵管に比べて低いことが原因で,膵液よりも流れがみえにくく,また,逆流があることが特徴である。正常群と良性胆管拡張群を比較すると,正常群では順行性の流れも逆行性の流れも同等にみられる(図6)。つまり,胆汁の逆流は生理的変化と言える。胆汁の順行性の流れは,胆嚢収縮により胆道内圧が上昇し,胆汁を押し出すためであり,頻度は膵液の排出ほど多くはない。逆行性の流れは,乳頭括約筋の収縮時に反動で逆流すると思われる。

図6 cine dynamic MRCPによる胆汁の順行性・逆行性の流れの描出

図6 cine dynamic MRCPによる胆汁の順行性・逆行性の流れの描出

 

一方,胆管拡張群では,順行性の流れは少し悪くなっているが,逆流は比較的流れている。このことから,過形成などによる乳頭狭窄はあるが,乳頭括約筋機能は保たれていると考えられる。
逆流により胆管下部にdefectがみえる胆管拡張例を分解すると,逆行性の流れがよくみえる。強い逆流の影響で,胆管拡張が起きていると考えられる。
3か月後の画像では胆管拡張も改善し,逆流所見もほとんどみられなかった。胆汁逆流の軽減とともに,胆管拡張も改善していることがわかる。
胆嚢からの収縮圧がなくなる胆摘群の胆汁排出動態について正常群と比較すると,胆摘群でも順行性の流れは同程度にみられている。これは,胆汁が肝外胆管内に溜まることで胆道内圧が上昇し,胆汁を押し出しているものであり,胆摘群では肝外胆管が胆嚢の役割の一部を果たしていると考えられる。また,逆流も正常群と同程度にみられた。乳頭括約筋の収縮圧は胆道内圧より格段に高く,括約筋の収縮時に反動で逆流すると思われる。
図7は,下部総胆管結石症の症例であり,選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPを行うと,胆汁の流れに伴って結石が絶えず上下動していることがわかり,胆管が完全閉塞していないことがみて取れる。これは,下部総胆管結石が存在するにもかかわらず,肝内胆管の拡張が軽度であることの理由と考えられる。

図7 下部総胆管結石症

図7 下部総胆管結石症

 

●まとめ

選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPは,膵液・胆汁の排出動態の評価に有用であり,膵外分泌機能診断や十二指腸乳頭括約筋機能診断への臨床応用が期待される。また,選択的IRパルス併用cine dynamic MRCPによる機能・動態イメージングは,腹部MRI診断において,形態診断ではわからなかった新たな診断情報をもたらすと考える。

 

伊東 克能

伊東 克能
ito katsuyoshi
1988年山口大学医学部卒業,
94年山口大学大学院医学研究科修了。トーマスジェファーソン大学医学部放射線科客員研究員,山口大学医学部附属病院放射線部准教授などを経て,2007年より現職。

 

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