セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

第30回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会が2013年4月20日(土),21日(日)の2日間,コラッセふくしま(福島市)にて開催された。初日の17時から行われた東芝メディカルシステムズ(株)共催のイブニングセミナー1では,東京慈恵会医科大学放射線医学講座の宮本幸夫氏を座長に,独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター乳腺科の 森田孝子氏と,東邦大学医療センター大森病院乳腺・内分泌外科の金澤真作氏が乳腺超音波診断の最新技術と造影超音波をテーマに講演した。

2013年7月号

第30回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会 イブニングセミナー 1 乳腺超音波診断の最前線

乳腺超音波診断 ─最新技術を駆使して─

森田 孝子(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター乳腺科)

超音波装置は,アナログからデジタルへの変革により,長足の進歩を遂げている。東芝メディカルシステムズのフラッグシップモデルである「Aplio 500」は,基本のBモード画像の画質が大幅に向上しているほか,さまざまなデジタル画像処理技術によって,高い診断能を実現している。また,体表用の新しいプローブである「PLT-1005BT」は,10MHz(最大14MHz)の高周波数と58mmの視野幅を有し,特に乳腺を対象に大きな威力を発揮する。
本講演では,Aplio 500とPLT-1005BTを用いた最新技術の有用性について紹介する。

■超音波装置とプローブの進歩

超音波装置に求められることは,まず病変の検出である。視認性に優れ,プローブを持つ手を止めさせるだけのコントラストが重要である。検出の次には,その病変が本当に存在するかどうか,存在診断の確信度を上げる操作を行う。カテゴリー診断,組織診断などの質的診断や,その後のインターベンション時のイメージガイド,術前の広がり診断における描出力が求められる。装置がデジタル化された現在では,これら一連の診断を的確に行うため,さまざまな補助診断方法を使うことができるようになった。
超音波装置とプローブの歴史を振り返ると,1990年代前半まではアナログ装置であり,表在用アニュラアレイプローブを使っていた(図1)。90年代後半になって超音波装置のデジタル化が始まり,その後さまざまなハードウエア技術,特にCPUの進歩によって急速な発展を遂げた。プローブも高周波化し,最新の体表用高周波リニアプローブであるPLT-1005BTは,58mmの広い視野幅を持ち,標準駆動周波数10MHzを実現している。

図1 超音波装置とプローブの歴史

図1 超音波装置とプローブの歴史

 

Bモード画像も大きく変遷してきた(図2)。1980年代までのメカニカルセクタやアークスキャンの画像では,乳腺全体をスキャンするのではなく,腫瘤のある部分のみにプローブをあてて,質的診断を行っていた。90年代前半にアニュラアレイプローブが登場すると,繊細な内部エコーや辺縁の情報が得られるようになり,さらにデジタル化によって,組織がイメージできるような高精細な画像が描出できるようになった。

図2 乳腺超音波Bモード画像の変遷

図2 乳腺超音波Bモード画像の変遷

 

■さまざまな画像処理アプリケーション

超音波装置のデジタル化に伴い,画像処理技術も次々と開発されている。東芝メディカルシステムズの超音波装置では,Differential tissue harmonic image(Differential THI),ApliPure,Precisionなどが搭載されている。これらを組み合わせて,可能なかぎりリアルな情報を得ることが重要である(図3)。

図3 さまざまな画像処理

図3 さまざまな画像処理

 

ただし,画像処理を利用する際には,適切に用いる必要がある。例えば,ApliPureの設定が強すぎると,のっぺりした画像となり,細かい情報が失われてしまう。臨床においては,このような特性を理解して使用し,画質の向上を図ることが求められる。
このほかの画像処理では,音速を補正することで方位分解能の劣化を防ぐ方法であるTSO(tissue specific optimization)が挙げられる。脂肪が多い患者では音速を遅くし,脂肪が少ない患者では音速を速くすることで画像の鮮鋭度が向上する(図4)。個々の患者に合わせた音速補正をかけることで,Bモード画像の画質はさらに向上すると考えられる。

図4 TSOによる音速補正

図4 TSOによる音速補正

 

●症例1:左FAD+distortion

60歳,女性。マンモグラフィ検診で左乳房にFADとdistortionが認められた。超音波では,Bモード画像で薄い乳腺の部分に,膨らみとともに引きつれていくような構造がよく描出されている(図5)。カテゴリー診断では,膨らみ部分の低エコー域に着目すればカテゴリー3,ハローがあると判断すればカテゴリー4と診断できる。

図5 症例1:Bモード画像

図5 症例1:Bモード画像

 

浸潤癌を疑い,インターベンションを行うにあたって,黒く描出されている部分(図6の(1))か,高エコーの部分(図6の(2))か,ハローの部分(図6の(3))が穿刺候補として考えられる。(1)か(3)が細胞が多くとれる部位で,実際には(3)から細胞診をし,多くの細胞が採取され,悪性と診断された。実際の組織像と比較すると,Bモード画像が辺縁を忠実に描出していることがわかる。
超音波ガイド下のマーキングがなされ,温存手術後の病理検索で断端陰性を得た。マーキング時には,超音波画像を病理組織に置き換えてイメージし,マークしている。

図6 症例1:インターベンションの最適な穿刺部位は?

図6 症例1:インターベンションの最適な穿刺部位は?

 

■乳腺エラストグラフィ

Aplio XGにエラストグラフィが搭載された2009年当時は,FLR(fat-lesion ratio)の数値で確認しないと良悪性の鑑別ができない状態であった。しかし,最近になって,急速にリアルタイム性や表現力が向上し,顕著な進歩が見られる。今回,試作中のエラストグラフィを用いて検査を行った。

●症例2:左FAD+distortion

60歳,女性。マンモグラフィ検診で左乳房にFADとdistortionが認められた。
エラストグラフィでは,浸潤癌の組織構成や周囲の正常組織の収縮の様子もよく表現されている(図7)。

図7 症例2:エラストグラフィ(a) b:Bモード画像,c:病理組織像

図7 症例2:エラストグラフィ(a)
b:Bモード画像,c:病理組織像

 

●症例3:右乳房痛

69歳,女性。右乳房の腫瘤は非常に低エコーな腫瘤で,エラストグラフィでは硬さがないことが表現されている。病理像から,細胞成分に富むトリプルネガティブ乳がんであった(図8)。

図8 症例3:エラストグラフィ(a) b:Bモード画像,c:病理組織像

図8 症例3:エラストグラフィ(a)
b:Bモード画像,c:病理組織像

 

●症例4:右乳房のしこり自覚

52歳,女性。症例3と同じく,エコーレベルがきわめて低い腫瘤でエラストグラフィでは,それほど歪みがない。エラストグラフィのROIの設定で,腫瘤を画面の1/3にしても同様の所見であり,再現性があった。
エラストグラフィでは,かなり軟らかい腫瘤として表現され(図9a),きわめて細胞成分に富んだmedullary carcinomaであった。細胞成分が多い場合にはそれほど硬くならないと考えられ,そのような病理学的構造についても,エラストグラフィは忠実に表現していると考えられた。fibroadenomaの症例でも腫瘤の青さに違いがあることから,硬さが違うことが示唆される。
エラストグラフィによる良悪性の診断では,低エコー域の色調をスコア化する方法がある。腫瘤の組織構築,微細構造,組織成分などの組織弾性に関与する要素を考慮して診断することが求められている。現在のエラストグラフィは,それが可能な表現力を持っていると思われる。

図9 症例4:エラストグラフィ(a),Bモード画像(b)

図9 症例4:エラストグラフィ(a),Bモード画像(b)

 

■MicroPure

MicroPureは,微細な構造物を抽出し,その視認性を向上させる機能である。Differential THIなどの高空間分解能の画像から,乳腺に特化したフィルタで抽出した微小石灰化などの構造物を,blue layerをバックに浮き上がらせて見やすくする。

●症例5:右乳房の石灰化

マンモグラフィで右乳房に淡い石灰化が認められた。超音波のBモード画像では,環状構造と小葉の膨らみが見られた。MicroPureを用いて石灰化部位を確認しながら,エコーガイド下マンモ
トーム生検を行い,adenosisと診断された(図10)。Aplio 500は,細かい構造のコントラストがよいためにエコーガイド下の穿刺時の視認性が高く,MicroPure で石灰化の存在をBモードとあわせて確認しながら穿刺できる点が助かっている。

図10 症例5:MicroPureを用いたマンモトーム生検

図10 症例5:MicroPureを用いたマンモトーム生検

 

●症例6:左乳房の石灰化

30歳代,女性。マンモグラフィで左乳房に広範な石灰化が認められる。
超音波検査では,広範囲に低エコー域が認められ,病変の同定,範囲が難しい症例であった(図11)。このような症例に対し,正常乳腺エコーの画像と対比するため,新プローブPLT-1005BTは有用であった(図12)。病変部位の同定が確実になり,範囲診断も可能となった。
エラストグラフィでは,正常乳腺と病変部が一目でわかる画像が得られた(図13)。4か所に6mmの浸潤癌が認められ,広範な管内の進展がある病変であった。管内病変が膨れてくると,硬さとして表現されると考えられる。

図11 症例6:MicroPure(b) a:Bモード画像,c:病理組織像

図11 症例6:MicroPure(b)
a:Bモード画像,c:病理組織像

 

図12 症例6:PLT-1005BTプローブを用いたBモード画像

図12 症例6:PLT-1005BTプローブを用いたBモード画像

 

図13 症例6:エラストグラフィ(a) b:Bモード画像,c:病理組織像

図13 症例6:エラストグラフィ(a)
b:Bモード画像,c:病理組織像

 

 

森田孝子

森田 孝子
1987年大阪医科大学卒業。名古屋医療センター,癌研究会附属病院のレジデントを経て,2005年に中日病院乳腺外科部長。2011年2月より名古屋医療センター乳腺科勤務。

 

 

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