Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2016年10月号

新世代ADCTのAquilion ONE/NATURE Editionを導入して高度急性期医療を展開〜さらなる高画質と被ばく低減を実現し、高いスループットで地域に貢献する診療を支援〜

福岡和白病院

福岡和白病院

 

福岡市東区の社会医療法人財団池友会福岡和白病院(367床)は、救急、循環器、がん医療などで地域の中核病院としての役割を担う。同院では、2016年5月に東芝メディカルシステムズの新世代Area Detector CTである「Aquilion ONE/NATURE Edition」を新たに導入した。第一世代のADCTからリプレイスされた同院でのCTの運用について、富永隆治院長、放射線診断・治療センターの本間 穣センター長、放射線科の永田真悟主任に取材した。

救急医療を核に高度急性期医療を展開

福岡和白病院は、『手には技術、頭には知識、患者様には愛を』を理念として1987年に開院。2005年に現在地に新築移転し、24時間365日の救命救急を中心に高度急性期病院として診療を行っている。心臓・脳・血管センター(HNVC)や外来化学療法センターなど、組織を横断し機能的に提供する体制を構築すると同時に、日常生活への復帰を支援するリハビリテーションと回復期病棟を持ち、急性期から回復期までをカバーする地域中核病院の役割を果たしている。特に、救急医療についてはER救急センターとして断らない救急を実践し、ヘリポートと自前の医療搬送用ヘリを運用するなど力を注いでいる。富永院長は、「地域中核病院として救急医療の提供は重要な役割であり、住民の誰もがいつでも高度な医療を受けられる体制を構築してきました。これは、当グループの創設当初から一貫した理念であり、救急医療とリハビリテーションの提供を基本として事業を展開しています」と説明する。
社会医療法人財団池友会と一般社団法人巨樹の会を運営するカマチグループ(蒲池真澄会長)は、福岡県のみならず佐賀県武雄市や首都圏で7つの急性期病院と14のリハビリテーション病院を開設、そのほか看護師、セラピストの養成学校の運営など全国規模で展開している。首都圏では、2016年4月に厚生連から新久喜総合病院(埼玉県久喜市)を事業継承し、救急医療を核とした診療を展開して地域医療の再生に取り組んでいる。

富永隆治 院長

富永隆治
院長

本間 穣 放射線診断・治療センター長

本間 穣
放射線診断・治療センター長

永田真悟 放射線科主任

永田真悟
放射線科主任

 

PETセンターや3T MRIなどで高度医療を提供

コンパクトでシンプルになったAquilion ONE/NATURE Editionの操作卓

コンパクトでシンプルになった
Aquilion ONE/NATURE Editionの操作卓

同院では、2004年に開設されたPETクリニックのPET/CTや、2014年にオープンしたハイブリッド手術室など、高度医療機器の導入を積極的に進めている。画像診断機器では、320列と80列(Aquilion PRIME)の2台のCTをはじめ、MRIが3T 1台を含む3台、血管造影装置3室、マンモグラフィ、ガンマカメラなどが導入されているほか、CT同室リニアック(稼働準備中)、ガンマナイフなど放射線治療の設備を整えている。また、一般撮影、胃透視、マンモグラフィの3台の健診バスを導入するなど、検診事業にも力を入れている。
主な検査件数(月間)は、CT2000件(うち心臓150件)、MRI1300件、RI50件。本間センター長を含め5名の放射線診断医が、翌日までにほぼすべて(99%)の読影を行い、画像診断管理加算2を取得しているほか、IVRや救急への対応などフル回転している。診療放射線技師は31名で検査業務を担当する。本間センター長は同院の放射線診療について、「高度急性期医療を支える多くの診断・治療機器を導入しており、迅速で正確な検査を提供する体制を整えています」と述べる。

新X線光学系技術でさらなる高画質・低被ばく検査を実現

同院では、2012年に第一世代のADCTであるAquilion ONEを導入した。今回、事業継承した新久喜総合病院にAquilion ONEを移設し、2016年5月からは新世代ADCTであるAquilion ONE/NATURE Editionが新たに稼働している。Aquilion ONE/NATURE Editionは、東芝メディカルシステムズのAquilion ONEシリーズの最上位機種のラインアップの1つであり、同社がADCTで培ってきた技術をさらにブラッシュアップさせた。新しいX線光学系技術“pureViSION Optics”による高速で高画質撮影を可能にすると同時に、ガントリサイズのコンパクト化を図り最小設置スペース19m2を実現するなど、設置環境にも配慮したCTとなっている。
永田主任は新しいADCTについて、「320列からのリプレイスで大きな変化はないのではと思っていたのですが、実際に稼働すると画質向上と被ばく線量の低減、検査スループットの向上、コンパクト化によるワークフローの改善などを実感しています。第一世代からの着実な進化が検査の環境をここまで変えるのかと驚いています」と話す。
Aquilion ONE/NATURE Editionの“pureViSION Optics”は、X線の出力から検出器までを最適化することで被ばく線量の低減と画質向上を両立させている。同院でAquilion ONE(第一世代)とAquilion ONE/NATURE Editionで撮影された同一患者の胸部CT(同じSD)を比較したところ、CTDIvolが13.9から7.2になり、領域別では頭部で40%、胸部46%(心臓30%)、腹部48%の線量低減となった。永田主任は、「同じADCTであり、画像再構成法(AIDR 3D)も変わらないことから、線量には大きな差はないと考えていましたが、大きく削減されていることがわかりました。これは、新しいX線光学技術であるpureViSION Opticsの効果と思われます」と述べる。
また、本体の設置についてもAquilion ONEでは部屋に対して斜めに据え付けられていたが、Aquilion ONE/NATURE Editionでは壁に平行に設置でき、スペースの余裕が生まれたことで、車いすやストレッチャーによる入室がスムーズになり、検査のスループットの向上にもつながっている。

■Aquilion ONE(第一世代)とAquilion ONE/NATURE EditionのCTDI差

Aquilion ONE(第一世代)とAquilion ONE/NATURE EditionのCTDI差

 

SEMAR、vHPなどを駆使して撮影

CTは320列と80列の2台体制だが、Aquilion ONE/NATURE Editionでは、心臓の冠動脈CT、頭頸部のCTA、胸腹部大血管(冠動脈も同時撮影)の連続撮影、小児などの検査を優先的に行っている。心臓CTについては、旧Aquilion ONEでも積極的に行っていたが、リプレイスによってさらにスピードが向上し、検査件数も増えていると永田主任は言う。冠動脈CTは、原則として検査当日に結果説明まで行っており、「Aquilion ONE/NATURE Editionでは、画像再構成が速くなったことでより迅速な画像提供が可能になりました」(永田主任)と評価する。
また、総合診療科の依頼で以前からCTガイド下生検を週2、3件行っているが、Aquilion ONE/NATURE Editionではガントリ開口径が78cmとワイドになったことから、ベッドを大きく下げずに手技が可能になった。また、金属アーチファクトを低減するアプリケーションであるSEMARは、ヘリカルスキャンのデータにも対応したことで適応が広がった。SEMARは、Aquilion PRIMEでも使用可能だが、同院では整形外科でのインプラント後で広範囲の撮影ではAquilion ONE/NATURE Editionを選択している。永田主任は、「前腕や下腿部など広い範囲をカバーする必要があるインプラント後の撮影では、ヘリカルスキャンでSEMARが可能になったことで、Aquilion ONE/NATURE Editionを使っています。SEMARは撮影後のデータに適用可能なため、大腿の人工骨頭周辺や、バリウム検査後の患者さんで虫垂に貯留したバリウムのアーチファクトが出た症例で、SEMARを適用することで周辺臓器の観察が可能になった例を経験しました」とメリットを説明する。
また、異なるヘリカルピッチの撮影を連続して行えるバリアブルピッチヘリカルスキャン(vHP)は、最新バージョンで従来の2フェーズから3フェーズの切り替えに対応した。これによって、心電図同期が必要な心臓近傍を挟んで頭頸部側と腹部側を非同期で撮影するなどのプロトコールの設定が可能になった。永田主任は、「大動脈解離の検査では、心臓血管外科から頸部側の血管状況も確認したいという要望があり、以前のvHPでは眼窩から心臓下端までを心電図同期で、骨盤部までを非同期で撮影していましたが、3フェーズになったことで大動脈弓部から心臓下端までを同期、それ以外を非同期での撮影が可能になりました」と述べる。

■症例:大動脈縮窄症および大動脈弁石灰化

症例:大動脈縮窄症および大動脈弁石灰化

 

新世代ADCTで地域の高度医療提供に貢献

高速・高性能のADCTにリプレイスしたことについて富永院長は、「循環器領域では、冠動脈の診断能が向上したことで、今後CTのみでのスクリーニングが可能になるのではと期待しています」と述べる。永田主任はこれからの取り組みとして、冠動脈石灰化サブトラクション、ステントグラフトの4D撮影によるエンドリークの確認などを挙げ、「各科の医師からもADCTを使った新しい取り組みへの要望が出てきていますので、われわれとしてもそれに応えてチャレンジしていきたいと思います」と述べる。
高度医療の提供で地域に貢献し続ける同院と、新世代ADCTによる今後の展開に期待が集まる。

(2016年9月6日取材)

 

福岡和白病院

社会医療法人財団池友会
福岡和白病院
福岡市東区和白丘2-2-75
TEL 092-608-0001

 

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