Aquilion Innovation(東芝メディカルシステムズ)

2013年4月号

救命救急領域におけるAquilion PRIMEの使用経験

山本浩之(倉敷中央病院 放射線センター)

マルチスライスCTの多列化によって最も恩恵を受けた1つは救命救急である。倉敷中央病院では、地域における急性期基幹病院として、さらに質の高い救急医療を提供するため、2012年9月に新しい救急医療センターをオープンした。センターには、24時間365日安全で迅速なCT検査を実施するために東芝メディカルシステムズの「Aquilion PRIME」を導入した。今回、当院における初期使用経験を紹介する。

[救急医療センターの現状]

2012年度救急医療センターの総受診者数は、6万3659人(1次救急5万5364人、2次救急6725人、3次救急1570人)であり、救急車受入数は8378件であった。このうち、CT検査数は1万2461件であり、5.1人に1人がCT検査を受けたことになる。救命救急でのCT検査で最も重要なのは“検査スピード”である。CTはあくまで検査であり、治療することはできない。よって可能なかぎり、検査台に乗っている時間を短くする必要がある。当院では、24時間体制でCT検査はもちろんのこと、夜間に3D画像作成やMRI検査、血管内治療があっても即座に対応できるように、CT担当当直、MR担当当直、アンギオ担当当直の3名当直体制をとっている。CT検査室は処置室と直結しており、患者移動距離が少なく迅速な検査が可能である。操作室には大型モニタを設置し、医師や看護師など医療スタッフが撮影画像や生体情報モニタ、患者状態を常時確認できるようにしている(図1)。

図1 救急医療センターのCT検査室と操作室

図1 救急医療センターのCT検査室と操作室
CT検査室は処置室と直結。医療スタッフは操作室の大型モニタで、
撮影画像や生体情報、患者状態を常時確認できる。

 

[Aquilion PRIMEの特徴]

Aquilion PRIMEの最大の特徴は、画像再構成アルゴリズム“V-TCOT”や、高密度サンプリングDAS(Data Acquisition System)、そして逐次近似再構成を応用した低線量撮影技術“AIDR 3D”と、最適線量を連続的に自動調整する“Volume EC”を搭載していることである(図2)。0.5mm×80列収集のために新しく開発された画像再構成アルゴリズム“V-TCOT”や、秒間2572viewsの高密度サンプリングDASは、コーンビームアーチファクトを抑制したハイピッチ撮影や高画質を維持した0.35秒/回転の高速スキャンを可能にしている。高速スキャンは呼吸苦で息止めができない患者や、痛みで静止が困難な患者、小児など、厳しい条件下での撮影に有用である。さらに、AIDR 3DとVolume ECを撮影部位ごとに最適に設定することができれば、高画質を維持したままアーチファクトの低減と大幅な被ばく低減が可能である。その他、ガントリー径780mmワイドボア、寝台左右動40mmなど、体位制限の多い救急患者でのポジショニングにも対応している。

図2  OriginalとAIDR 3Dの画像比較

図2  OriginalとAIDR 3Dの画像比較
呼吸困難で両手拳上不可の症例。
AIDR 3Dによって腕からのストリークアーチファクトの低減とノイズ改善が認められる。
撮影条件:120kV/Volume EC(5mm SD7.0)/0.5mm×80/0.35sec/HP111(PF1.388)/AIDR 3D Mild

 

[外傷への適応]

外傷初期診療ガイドライン改訂4版では、外傷患者の治療の緊急性を判断するためにCTによる“FACT(Focused Assessment with CT for Trauma)”という読影方法を推奨している。これは頭部損傷と出血、血腫の確認→肺挫傷、血胸、心嚢血腫を確認→腹腔内出血の確認→骨盤骨折や後腹膜出血を確認→実質臓器損傷の有無を確認という順序で、3分以内に読影を行うものである。FACTを実施するためには、短時間での撮影と画像提供が必要となる。Aquilion PRIMEは、“Realtime helical”によるリアルタイム画像の画質が向上しており、撮影中であってもある程度の出血や異常所見を確認することが可能である。また、画像処理スピードも最大60画像/秒に高速化しており、撮影後のMPR観察や3D画像作成にも即座に対応できるようになった。
当院では、頭部外傷に対してMPRやVRなどの三次元画像を考慮したヘリカルスキャンを積極的に実施している(図3)。撮影時間は約8秒であり、撮影条件はAIDR 3D Weak、Volume EC 5mm SD3.0を設定し、撮影線量の適正化を図っている。一方、高エネルギー外傷における胸腹部CTでは、ハイピッチ(HP111,PF1.388)と0.35秒/回転による高速スキャンを実施している。撮影時間は約5秒であり、息止めができない患者などに対応している(図4)。

図3 外傷性急性硬膜下血腫(上段)と外傷性くも膜下出血(下段)

図3 外傷性急性硬膜下血腫(上段)と外傷性くも膜下出血(下段)
MPR画像を作成することによって、
血腫や出血の場所や範囲が明瞭に確認できる。
撮影条件:120kV/Volume EC(5mm SD3.0)/0.5mm×80/1.0sec/HP51(PF0.637)/AIDR 3D Weak

 

図4 高エネルギー外傷

図4 高エネルギー外傷
a:coronal b:肋骨VR c:骨盤VR d:axial
e:DSA(早期相) f:DSA(遅延相)
肋骨骨折(▶、右第8-11)、骨盤骨折、右第5腰椎横突起骨折あり。造影CTでextravasation(↓)が疑われ、血管造影検査施行。右上殿動脈からextravasation(↓)が数カ所認められ、TAEが行われた。

 

[脳血管障害における3D-CT Angiography + CT Perfusion]

脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血と閉塞性疾患である急性期脳梗塞では、迅速な治療方針決定を目的として、3D-CT Angiography(CTA)による血管形態把握とCT Perfusion(CTP)による脳血流評価を実施している。くも膜下出血では、脳動脈瘤の検出が重要であり、確実なCTAが要求される。CTAを確実に成功させるためには、撮影タイミングが重要な因子となるが、“Real Prep.”によるボーラストラッキング法を用いることにより迅速で確実なCTAが可能である。撮影は、AIDR 3D Standard使用した軌道同期サブトラクション撮影を行うようになり、椎骨動脈や頭蓋底部の血管描出能が向上し、低線量での脳動脈瘤の検出が容易に可能となった。また、重症くも膜下出血では予後予測のためにCTPによる脳血流評価も同時に行っている(図5)。

図5 重症くも膜下出血における3D-CT Angiography + CT Perfusion

図5 重症くも膜下出血における3D-CT Angiography + CT Perfusion
a:単純CT b: CTP c:CTA d:MIP
頭部単純CTで脳底槽および両側円蓋部にびまん性の出血を認めた。CTA、MIPで左IC-PCに後外側向きの動脈瘤を認めた(↑)。CTPでは脳血流に異常が認められなかった。

 

急性期脳梗塞では、t-PA静注療法が発症後3時間から4.5時間に延長されことや、発症8時間以内のMerci/Penumbraシステムを用いた血栓除去術(thrombolysis)が認められたことにより、CTPよる脳虚血評価が重要となっている。CTPは単純CTに引き続き簡便に検査可能であるが、被ばく線量増加が問題となる。当施設では撮影プロトコルにAIDR 3D Strongを使用して、撮影は上矢状静脈洞(SSS)にROI(Region of interest)を設定し、TDC(Time Density Curve)の立ち下がりを目視で確認後、撮影をストップするようにして、可能なかぎり被ばく線量低減に努めている。CTAは大動脈弓部から頭頂部まで軌道同期サブトラクション撮影を行うことにより、閉塞血管や総頸動脈、椎骨動脈など血管造影検査に匹敵する血管形態情報を得ることが可能である(図6)。

図6 急性期脳梗塞における3D-CT Angiography + CT Perfusion

図6 急性期脳梗塞における3D-CT Angiography + CT Perfusion
a:単純CT b:MRA,DWI c:CTP d:頭部CTA e:頸部CTA f:Thrombolysis
頭部単純CTではearly CT signは認められなかった。MRAで右M1 proximalより描出を認めず、DWIで右尾状核から放状冠にhigh SI areaを認めた。CTPは右中大脳動脈領域でCBF低下、MTT延長、CBVは若干上昇。頭部CTAで右M1 occlusionを認めた(↑)。頸部CTAは異常なし。t-PA適応となったが、1時間後のMRIで再開通が認められないため、Merci/Penumbraシステムによる血栓除去術が施行された。

 

[今後の課題]

Aquilion PRIMEの初期使用経験を紹介したが、Aquilion PRIMEには心電図同期スキャンやバリアブルピッチヘリカルスキャンシステムなど、救命救急に有用なツールがまだたくさんある。これらのツールをフル活用できるように当直スタッフの教育の必要性を強く感じている。いずれにしても、救命救急領域における画像診断の中心は確実にCTとなっており、その需要はさらに増加するものと思われる。今後も安全を第一に考えて、業務改善や撮影プロトコルの見直しを行い、Aquilion PRIMEを救命救急に役立てたいと考えている。

 

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