技術解説(シーメンスヘルスケア)

2017年12月号

動画対応DRシステムの最新技術

ハイブリッド手術室対応多軸透視・撮影システム

木原 徹也(シーメンスヘルスケア(株)アドバンストセラピー事業本部Surgery事業部)

2007年,シーメンスは世界に先駆け,ロボティックアームを採用したアンギオ装置「Artis zeego」を発売した。Artis zeegoは,8つの駆動軸を持つロボティックアームを初めて採用し,フレキシブルな動きを実現した装置で,患者のポジショニングに合わせた動作を可能にしたアンギオ装置であった。このコンセプトは,まさにハイブリッド手術室に合致していると評価され,多くのハイブリッド手術室に導入されている。
そして,Artis zeegoの発売から10年後の2017年,ハイブリッド手術室対応多軸透視・撮影システム「ARTIS pheno」を発表した。ARTIS phenoは,Artis zeegoで培った経験を基に開発された,ハイブリッド手術室のための透視・撮影装置である(図1)。

図1 ARTIS pheno外観

図1 ARTIS pheno外観

 

■安全で広い術野スペース

Artis zeegoは,カテーテル検査室用のアンギオ装置としては十分なCアーム開口スペースを持っていたが,手術室の環境では,さらに広いスペースを要望する声が多くあった。Cアームの開口スペースを広げるためには,source image distance(以下,SID)を広げる必要があるが,SIDの拡張と被ばくはトレードオフの関係にある。この問題を解決するために,シーメンスはARTIS pheno専用のX線管とフラットディテクタを開発し,高い装置負荷に耐えながら被ばくを抑えつつ,SIDを拡大することに成功した。これにより,Cアーム開口スペースは95.5cmと広範となり,安全で広い術野スペースを提供している(図2)。

図2 Cアーム開口スペース

図2 Cアーム開口スペース

 

■多様な患者手術体位に対応

ARTIS phenoは,据え置き型X線透視撮影装置としては,唯一,アイソセンター高を変更できるロボティックアームを有し,多様な患者手術体位にて透視・撮影が可能である。これにより術者は,手技や術野に合わせ無理な姿勢を強いられることなく,快適な姿勢で手術を行うことが可能になった(図3)。また,Trumpf Medical社,Getinge Group社の手術台を患者寝台として使用することも可能であり,幅広い手技に対応している。

図3 多様なポジショニングに対応

図3 多様なポジショニングに対応

 

■高い清浄度維持に寄与

日本手術医学会のガイドラインでは,手術室の清掃に関して,「その日の最後の清掃は,手術台周辺を中心に使用した機器も含めて実施する」ことが推奨されている1)。しかし,天井から懸垂されているケーブルなどの清掃は非常に困難であった。そこでARTIS phenoは,天井から懸垂されていたケーブルをすべて装置や床に収納した。これにより,高い位置にあった懸垂物を排除でき,装置本体の清拭を容易にすることを可能にした(図4)。さらに,天井のレイアウトが自由になり,HEPAフィルタや手術用照明器,シーリングペンダント,モニタ,術野カメラなどの設置位置の自由度を向上させている。
また,装置の表面は,抗菌加工と防水加工(IPX4準拠)が施されており,血液や薬剤の装置への浸入を防止し,菌の繁殖も抑制する効果を持っている。

図4 容易な装置清拭

図4 容易な装置清拭

 

ARTIS phenoは,手術室に設置することを前提に作られた初めての装置である。「安全で広い術野スペース」を提供し,「多様な患者手術体位に対応」することにより術者負担を軽減し,「高い清浄度維持に寄与」することにより,今後多くの診療科・手技に安全に使用されることが期待される。

●参考文献
1)日本手術医学会 : 手術医療の実践ガイドライン. 手術医学, 34・(Suppl.), 2013.

 

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コミュニケーション部
TEL 0120-041-387
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