技術解説(シーメンスヘルスケア)

2016年4月号

Abdominal Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

腹部領域におけるコーンビームCTの最新技術

富士溪俊之(アドバンストセラピー事業本部)

技術革新に伴うモダリティの進歩は,従来の検査方法や診断・治療の精度を高めるだけではなく,低被ばくかつ低侵襲な環境の実現,新たな治療支援ツールとして活用されている。血管撮影装置においては3Dイメージング技術の進化により,手技を支援するための「見る3D画像から使う3D画像」へと変遷している。本稿では,進化を続けている最新の3D撮影技術と3D Functional Imaging撮影について紹介する。

syngo DynaCT

シーメンスは,2004年にCアームによるコーンビームCT“syngo DynaCT(DynaCT)”を発表し,広いダイナミックレンジを有するFPD(平面検出器)と多彩なCT補正アルゴリズム,Cアームによるコーンビーム再構成技術を用い,肝実質のような軟部組織を高いコントラスト分解能で描出・表現することを可能とした(図1)。

図1 DynaCT画像

図1 DynaCT画像

 

さらなる技術向上を続け,肝臓のIVRにおいてDynaCTは,腫瘍の濃染の評価や腫瘍に対する栄養血管の同定,術後における塞栓物質集積の評価など,臨床的にも有用な情報を提供し活用されている。従来は,DSA撮影を繰り返しながら栄養血管を同定し,ほかの栄養血管を探すためにさらにDSA撮影を追加していたが,DynaCTはこのワークフローを大幅に改善し,一度の撮影データから複数の栄養血管を三次元的に同定できるだけでなく,腫瘍からカテーテルに対して逆行的にアクセスルートを特定することが可能となる。つまり,手技あたりの撮影回数を減らすことで,被ばくの低減のみならず,使用する造影剤量も相対的に減らすことができ,被検者に対してより低侵襲な治療の環境を実現するためのツールとしても活用されている。

■Functional Imagingへの進化

シーメンスは,前述のDynaCTの根本的な画質改善を実現するだけではなく,「見る3D画像から使う3D画像へ」をコンセプトにさまざまな支援ツールの開発を続けてきた。その中で,肝動脈化学塞栓療法(TACE)などの血管塞栓術におけるナビゲーション機能としてリリースした“syngo Embolization Guidance”は,DynaCTのデータを最大限活用することで,IVRの手技精度および被検者への安全性を向上し,臨床的価値をより高めてきた。
さらに,DynaCTの臨床的価値を高めるため,functionalな情報を付加する新たな撮影機能を開発し,2009年に脳血管内治療領域での先駆けとして,DynaCTを用いた3D Functional Imaging撮影機能となる“syngo  DynaPBV Neuro(旧名:syngo Neuro PBV IR)”(図2)をリリースした。これにより,DynaCTは「見る3D画像から使う3D画像へ」に加えて,「Functional Imagingの活用」として進化を遂げた。

図2 DynaPBV Neuro

図2 DynaPBV Neuro

 

syngo DynaPBV Body

現在,perfusion imagingはMRIやCTで撮影されるようになり,治療成績の向上のため活用されている。しかしながら,現状においては,IVRの手技中にはphysiological informationを得ることができない。
前述のDynaPBV Neuroにより,例えば脳梗塞において支配血管の閉塞による脳実質の虚血領域を3D imagingで同定することができ,再開通後の血液量の分布状態をCT室やMRI室に移送せずに検査室内で得ることができるようになった。
そして,4年の時を経て2013年に,DynaPBV Neuroを腹部領域に適応可能とした“syngo DynaPBV Body”をリリースした。DynaPBV Bodyは,IVR術前や術中において被検者のphysiological informationを取得可能な3D Functional Imaging撮影機能であり,病変と正常組織の血液量の分布をカラーマップとして表示することができる。組織に対する血液の灌流状態を把握し,治療戦略の決定や手技の状況を確認しながらエンドポイントの見極めを行うための支援ツールとして活用できる。
撮影手順(図3)は3D-DSA撮影と同様で,初めにmask runとなる5s DynaCTを撮影し,その後return runを経て造影剤が満たされるしかるべきタイミングでfill runとなる5s DynaCTを撮影する。得られた2種類のボリュームデータから複数の補正処理(図4)を基に動脈入力関数を自動的に算出し,専用の再構成技術を用いて三次元Paraechymal blood volume(以下,PBV)カラーマップを作成する。

図3 DynaPBV Body 撮影手順

図3 DynaPBV Body 撮影手順

 

図4 DynaPBV Bodyの再構成概要

図4 DynaPBV Bodyの再構成概要
(参考文献1)より引用改変)

 

DynaPBV NeuroとDynaPBV Bodyの撮影部位の違いにおいて,特に生理的な動きに関する影響を十分に考慮する必要がある。DynaPBV Bodyでは,新たな補正機能として,mask runとfill run間の体動・呼吸性の変動における非剛体的(non-rigid)な動きに対する補正技術が新たな技術として備わっており,mask run像とfill run像が同じ解剖学的位置情報を持ってレジストレーションされるため,精度の高いPBVカラーマップ像を作成することができる1)
このDynaPBV Bodyを術前・術後に撮影することで,図5のように栄養血管を塞栓した腫瘍に対する血液の灌流状態を把握し,追加塞栓の要否,つまりは治療のエンドポイントの見極めとして活用することができる2)

図5 DynaPBV Body

図5 DynaPBV Body
(参考文献2)より引用転載)

 

さらに,DynaPBV Bodyは,ただ単に血液量の分布を取得するだけの撮影ではなく,同時に血管の3Dデータも取得でき,図6のように一連の撮影から多くの画像情報を得られることがこの機能の大きな特長でもある。
functionalな情報も含めた画像情報を最大限に活用することで,最新の塞栓物質で治療のエンドポイントの判断が難しい場合の判断材料としての活用や,得られた血液量の分布状態から治療効果に対するさらなる付加情報として活用できる。そして,肝実質以外にも,さまざまな分野において3D Functional Imaging撮影への応用が期待される。

図6 DynaPBV Body

図6 DynaPBV Body
(参考文献2)より引用転載)

 

本稿では,現在も技術革新を続けているDynaCTの最新技術について紹介した。シーメンスは,さらなる技術革新を進めるため,2015年に“PURE technology”という新しいプラットフォームをリリースし,“Smooth interaction,Smart performance”のコンセプトの下,smoothで簡便なワークフローにおいて装置性能を最大限smartに発揮するためのさまざまな最新技術が搭載できるようになった。
このPUREプラットフォームをより強固にし,IVRの本質的な目的である“minimally invasive,maximally effective”の実現に貢献していく。

●参考文献
1)Peynircioglu, B., et al. : Quantitative liver tumor blood volume measurements by a C-arm CT post-processing software before and after hepatic arterial embolization therapy ; Comparison with MDCT perfusion. Diagn. Interv. Radiol., 21・1, 71〜77, 2015.
2)syngo DynaPBV Body ; Blood volume imaging opens new prospects for tumor treatment. AXIOM innovations The Magazine for Interventional Radiology, Cardiology and Surgery, 16, 38〜43, 2012.

 

●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
マーケティングコミュニケーショングループ
〒141-8644
東京都品川区大崎1-11-1
ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL:0120-041-387
http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging

TOP