技術解説(シーメンスヘルスケア)

2015年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

ハイブリッド手術室における低侵襲治療を支援する最新の3D経食道エコーと僧帽弁・大動脈弁自動解析─「ACUSON SC2000 PRIME」

平山 秀男(超音波ビジネスマネージメント部)

高齢化社会が急速に進んでいる現在,心臓弁膜症の傾向も変化し,これまではリウマチに起因する僧帽弁変性疾患が多かったが,石灰化などの加齢変性に伴う大動脈弁狭窄症が増加している。このような疾患の変化や医療技術の進歩に伴い,治療の方法は弁置換術から弁形成術や自己弁温存手術へ,さらにはQOL(quality of life)の観点から,TAVI(transcatheter aortic valve implantation:経カテーテル大動脈弁植え込み術)に代表されるようなカテーテルを使った弁膜症治療にも関心が高まってきた。さらに,海外では僧帽弁逆流の経カテーテル治療が開始され,その有用性が報告され始めている。このような時代の変化に対応し,循環器領域用のハイエンド超音波画像診断装置 「ACUSON SC2000」をさらに進化させ,「ACUSON SC2000 PRIME」として販売を開始した。これまでの経胸壁からの1心拍でのFull Volume Imagingや自動解析機能に加え,新たな3D経食道プローブと新たな自動解析機能を追加し,ハイブリッド手術室における低侵襲治療もサポートする。

■Form,Flow,Functionをリアルタイムで

これまで3D経食道エコー検査(以下,3D TEE)において,大動脈弁・僧帽弁を含む広い範囲の3D画像を取得するには,心電図同期による複数心拍で取得した画像データの合成が必要だった。血流情報を含む3Dカラードプラ画像では,さらに多くの心拍による画像データ収集が必要な場合もあり,必要な時にリアルタイムで画像を提供することが困難だった。また,心電図同期に起因する画像のつなぎ目における不連続性を目立たなくするために,人工呼吸器を停止させる場合もあり,患者への負担も無視できなかった。
ACUSON SC2000 PRIMEでは,大動脈弁・僧帽弁を含む広い範囲の3D画像や3Dカラードプラ画像を,心電図同期を用いずにリアルタイムで描出することが可能となり(True Volume TEE Imaging:図1),画像データ取得時に人工呼吸器を停止する必要もない。術後の弁周囲逆流の評価なども広範囲で瞬時に行うことができ,より安全で確実な施術に貢献する。

図1 True Volume TEE Imaging

図1 True Volume TEE Imaging

 

近年では,TAVIに代表される低侵襲治療のガイドとしても3D TEEの有用性が期待されているが,リアルタイムで3D画像を構築できるACUSON SC2000 PRIMEは,まさに最適な装置と言え, デバイスの侵入経路や位置の確認,効果判定までしっかりとサポートする。
海外で開始されている僧帽弁逆流の治療では,正確なデバイス留置のために3D TEEによるガイドは欠かせない。ACUSON SC2000 PRIMEであれば,
2つの2Dリファレンス画像のバイプレーン画像に加えて,左房・左室の両側から観察した3D画像を同時表示でき(Dual V Imaging:図2),より精度の高い治療が可能になる。3Dカラードプラを併用することで逆流の治療効果判定もリアルタイムに行うことができ,術者の治療を妨げず,スムーズで安全な治療に貢献する。

図2 Dual V Imagingによる治療のサポート

図2 Dual V Imagingによる治療のサポート
a,b上段:2Dリファレンスプレーン画像,a,b下段左:左房側から見た3D画像,a,b下段右:左室側から見た3D画像。
治療施行前(a)に比べて,施行後(b)では僧帽弁逆流が明らかに減少しているのがわかる。

 

■治療計画をサポートする弁の自動計測

ハイブリッド手術室における低侵襲治療や外科手術をより安全で確実に施行するには,正確な計測や診断が欠かせない。特に,TAVIの対象となる大動脈弁(図3)は僧帽弁と比較すると小さく,より詳細な計測が必要となる。ACUSON SC2000 PRIMEでは,3D TEEデータからの弁の計測をワンクリックで自動計測でき,僧帽弁でだけでなく大動脈弁まで解析可能な世界で初めてのソフトウェアを搭載している。この新しい弁の自動解析ソフトウェア“eSie Valves”は,操作も非常に簡便で,対象画像を選択した後はワンクリック5秒程度で解析が完了する。

図3 大動脈弁狭窄の長軸・短軸の3D TEE画像

図3 大動脈弁狭窄の長軸・短軸の3D TEE画像
TAVI施行前(a)と比較し,施行後(b)では,弁の開閉運動が改善しているのがわかる。

 

例えば,TAVIを施行する時には,サイズ決定の際に必要となる大動脈の最大弁輪径と最小弁輪径,面積から求めた平均弁輪径,周囲長から求めた平均弁輪径,冠動脈閉塞のリスク回避のために重要となる弁輪部から冠動脈起始部までの高さなどの計測項目が瞬時に自動計測される(図4)。マニュアルによる計測の場合,まずは3D TEEデータから計測に適切な断面を切り出す作業が必要になる。正確な断面の切り出しには時間や経験が必要である。自動計測であれば時間も短縮でき,検査者間による誤差も低減し,安定した再現性の高い計測結果を得ることができる。

図4 eSie Valvesによる大動脈弁解析結果の一例

図4 eSie Valvesによる大動脈弁解析結果の一例

 

■僧帽弁逆流の治療を安全に施行するために

海外で開始されている僧帽弁逆流の治療は,簡単に言えば専用のデバイスを左房内から僧帽弁の中心に侵入させ,僧帽弁前尖と後尖をクリップ様のデバイスで挟み込むことで,僧帽弁逆流を低減させる治療法である。デバイスを左房に侵入させるため,ブロッケンブローにより右房側より心房中隔に穴を開ける。デバイスは,その穴を経由し右房から左房へと進み,左房内でほぼ直角に曲げられてから僧帽弁の中心をめざしていくことになる。デバイスを直角に曲げた時点でデバイス自体が左房壁や僧帽弁などを傷つけないように,僧帽弁輪部からある程度の距離(約4cm)を担保しておくことが必要と言われている。そのため,ブロッケンブローを行う前には,穿刺位置から十分な距離が確保できているかを静止画像から計測し,穿刺位置を決定する。いったん画像を停止させて数か所を計測するため手技を停滞させることになり,十分な距離が確保できていない場合には,再度位置決めと計測が必要になる。ACUSON SC2000 PRIMEでは,この問題を解決するために“Septal Guide”という機能を搭載した。この機能をオンにすると,画面上に半径4cmの円が表示される(図5)。この円はスキャン中でも大きさや場所が自由に変更できるため,穿刺位置を確認しながら適切な位置に円を配置することで,手技を邪魔することなく安全に確実なブロッケンブローを行うことができる。実際にデバイスを進めていくときには,先に述べたDual V Imaging(図2)で僧帽弁の中心に留置場所をリアルタイムにガイドし,カラードプラを併用することで留置前後での逆流度の変化も判定でき,より安全で確実な手技をサポートする。

図5 Septal Guideを用いたブロッケンブローの様子

図5 Septal Guideを用いたブロッケンブローの様子

 

*2015年3月調べ。

 

●問い合わせ先
シーメンス・ジャパン株式会社
ヘルスケアマーケティングコミュニケーショングループ
〒141-8644
東京都品川区大崎1-11-1
ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL:03-3493-7630
http://www.healthcare.siemens.co.jp/medical-imaging

TOP