The Role of 4D imaging in Head and Neck 
頭頸部がんに対する4D Volume Perfusion CTの臨床応用 
的場宗孝(金沢医科大学放射線診断治療学)
<Session Ⅳ Focus on Oncology and Therapy>

2017-11-24


的場宗孝(金沢医科大学放射線診断治療学)

perfusion imagingは,さまざまな腫瘍性病変の診断や治療効果との関連性が多数報告されている。当院では,主に化学放射線療法が予定されている頭頸部がん患者の治療前検索として,シーメンスのDual Source CT(DSCT)「SOMATOM Force」を用いて,全頭頸部領域の4D Volume Perfusion CT(Perfusion CT)を施行している。本講演では,当院での経験を踏まえ,Perfusion CTの有用性を中心に報告する。

Perfusion CTの目的と方法

1.目 的
頭頸部のPerfusion CTの目的は,大きく原発巣の評価と頸部リンパ節の評価の2つがある。
原発巣においては,局在と浸潤範囲の評価に有用であり,ステージング(T因子)や放射線治療計画における領域設定にも役立つ。また,tumor vascularizationの評価では,vascularが多いところは腫瘍細胞が活発で悪性度が高く,少ないところはhypoxiaやnecrosisと考えられるため,vascularの不均一性を考慮した放射線治療計画の立案に役立つほか,治療効果や再発,転移,予後予測のバイオマーカーになりうるとの報告もある。
一方,頸部リンパ節におけるPerfusion CTの目的には,転移リンパ節と良性リンパ節の鑑別があり,ステージング(N因子)や放射線治療計画における領域設定にもかかわってくる。現時点では,画像診断でリンパ節転移を評価するのは難しい部分もあるが,われわれはPerfusion CTを役立てたいと考え,検討を行っている。

2.撮影方法
当院では,2013年からシーメンスのDSCT「SOMATOM Definition Flash」によるPerfusion CTを開始し,2016年からはSOMATOM Forceを用いている。寝台のスムーズな連続往復によるダイナミック撮影である“Adaptive 4D Spiral Plus”を使用し,頭蓋底部から胸郭入口部までを撮影する。造影・撮影プロトコルを図1に示す。
SOMATOM Forceでは,80kV/100kVの低管電圧撮影によって被ばく線量が大幅に低減され,Perfusion CTを臨床でルーチンに使いやすくなった。

図1 4D Volume Perfusion CTの造影・撮影プロトコル

図1 4D Volume Perfusion CTの
造影・撮影プロトコル

 

3.解析方法
当院では,まず“syngo.via”の“syngo.CT Body Perfusion”にて体動や嚥下の有無を確認し,ノイズ低減などの解析準備を行う。次に,“Arterial Input Function(AIF)”にて栄養動脈のtime density curve(TDC)を取得する。画像解析はdeconvolution法を使用し,MIP画像と,パラメトリック画像としてblood flow(BF),blood volume(BV),mean transit time(MTT),permeability surface area product(PS)が表示される。ここまでに要する時間は数分であり,syngo.viaによってperfusion解析が非常に簡便となった。
さらに,Perfusion CTは定量解析も可能である。MIP画像にVOIを設定すると,各パラメトリック画像の同じ位置にVOIが自動でコピーされてTDCが表示されるため,BF,BV,MTT,PSの定量値がきわめて容易に得られる。なお,BF,BVでは腫瘍のvascularityの評価,MTTではperfusion pressureの評価,PSではimmature leaky vesselの評価を行う。

Perfusion CTによる頭頸部がん原発巣の評価

1.病変部位の同定と浸潤範囲の評価
悪性腫瘍では,Perfusion CTのパラメータにある程度のパターンが存在する。腫瘍血管の増生に伴い血液量(BV)が増加するとともに,腫瘍血管は幼弱で染み出しが増加するためPSが上昇する。また,腫瘍血管内は動静脈の短絡が多くなって開存するためBFが上昇し,それによって灌流圧が低下するためMTTは短縮する。ただし,これらのパターンは悪性度などによって変化するため,すべての悪性腫瘍が同じパターンを呈するとは限らない。
症例1(図2)は,右中咽頭がん前壁舌根型(cT4bN0M0)で,PET(a,b)にて右舌根部に大きな強い集積があり,MRIのDWI(d)でも高信号な病変が見られる。Perfusion CT(図2 e〜h)では,腫瘍の血流が増加して,BF,BV,PSの上昇とMTTの低下というパターンを呈しており,病変部の境界もきわめて明瞭である。

図2 症例1:右中咽頭がん前壁舌根型(cT4bN0M0)

図2 症例1:右中咽頭がん前壁舌根型(cT4bN0M0)

 

症例2(図3)は,右下咽頭がん梨状陥凹型(cT2N1M0)である。PET・CT(図3 b)にて強い集積が認められ,MRIのDWI(図3 d)では全体的に高信号で均一な印象であるが,Perfusion CTではBV(図3 f)にて血流の非常に多い部分が認められた。同部はPS(図3 h)とBF(図3 e)も高く,MTT(図3 g)は短縮していたことから,細胞の増殖が活発で,悪性度の高い部位であると判断できる。腫瘍内の悪性度の不均一が確認できれば,放射線治療計画におけるより適切な線量分布設定に貢献すると思われる。
このほか,Perfusion CTは,微小病変の検出や広がり診断,術後のフォローアップなどにも有用である。

図3 症例2:右下咽頭がん梨状陥凹型(cT2N1M0)

図3 症例2:右下咽頭がん梨状陥凹型(cT2N1M0)

 

2.化学療法 / 放射線療法の治療効果予測
Perfusion CTによる化学療法 / 放射線療法の治療効果予測については,治療前評価と治療期間中の中間期評価という2つの方法が報告されている。治療前評価においては,BF,BV,PSが上昇する腫瘍は化学療法の薬剤分布も良く,放射線治療での酸素効果が高いため,高い治療効果が望めると判断できる。また,治療中間期評価においては,治療前に比べてBF,BV,PSが低下し,MTTが延長するという変化が見られる。これは,治療に伴う腫瘍血管の消退や閉塞,動静脈短絡の閉塞によるものであり,このような場合は治療効果が高いとされるが,パラメータの低下は相対的なものであるため,あくまでも参考程度と考える。
症例3(図4)は,上咽頭がん(cT4N2M0)である。治療前PET・CTと造影CT(図4 a)にて強い集積が認められ,治療前Perfusion CT(図4 b)では血流の増加が確認できる。化学放射線療法開始3週間後のPerfusion CT(図4 c)では,腫瘍サイズが縮小して血流が低下しており,治療前に血流の豊富な症例は治療効果が高いことが確認できた。

図4 症例3:上咽頭がん(cT4N2M0)

図4 症例3:上咽頭がん(cT4N2M0)

 

Perfusion CTによる頸部リンパ節の評価

頭頸部がんでは,予後因子であるリンパ節転移の有無の評価がきわめて重要である。これまでに報告されているCT,超音波,MRI,PET・CT,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(USgFNAC)の診断能をまとめると,感度はいずれも70%程度,特異度はCT,超音波,MRIは60〜70%,PET・CTとUSgFNACは95%以上であった。そこで,当院にてPerfusion CTの診断能について検討を行った。
対象は,根治手術もしくは化学放射線療法を施行した頭頸部がん35症例で,短径5mm以上の咽頭後リンパ節およびAJCCのレベルⅠ〜Ⅵのリンパ節とした。評価項目は,Perfusion CTパラメータとリンパ節のサイズとの関連性(長径10mm以上 vs. 10mm未満),および転移リンパ節と良性リンパ節の比較(全体,長径10mm以上群,10mm未満群)とし,Mann-Whitney U-testで評価した。
サイズの影響を見ると,10mm未満のリンパ節転移は10mm以上に比べてBF,BV,PSが有意に高く,小さい方が血流が多かった。また,良性リンパ節ではサイズの違いによる差は見られなかった。全体的な比較では,転移リンパ節は良性リンパ節よりもBFが高く,MTTが短縮していた。また,サイズによる違いを見ると,10mm以上で差があったのはMTTのみで,転移リンパ節,良性リンパ節共に短縮していた。一方,10mm未満では,転移リンパ節の方が良性リンパ節よりもBFとBVが有意に高かった。これらの結果から,転移リンパ節の診断は,10mm以上であればMTTが,10mm未満であればBFとBVがパラメータとして適していると考えた。
さらに,Perfusion CTによる転移リンパ節の診断能についてROC解析を行ったところ,10mm以上でMTTをパラメータとした場合の感度は70.4%,特異度は56%,accuracyは65.3%であった。また,10mm未満でBFをパラメータにした場合の感度は72.4%,特異度は67.6%,accuracyは69.9%,BVをパラメータにした場合の感度は67.7%,特異度は63.5%,accuracyは64.4%であった。これらの結果から,Perfusion CTの転移リンパ節の診断能は他のモダリティと同等であり,単独での評価は難しいため,総合的に判断する必要があるという結論となった(図5)。

図5 頸部リンパ節転移陽性の総合的評価

図5 頸部リンパ節転移陽性の総合的評価

 

まとめ

SOMATOM Forceによる被ばく低減と,syngo.viaによる画像解析の簡便化により,頭頸部がんにおけるPerfusion CTは日常臨床で実施可能な検査となった。Perfusion CTは,原発巣の同定や周囲組織浸潤の評価,腫瘍内の悪性度や虚血部の推定にも有効と考えられ,さらには,化学放射線療法の予後予測のバイオマーカーになりうる可能性も秘めている。
一方,Perfusion CTの転移リンパ節の診断能は,他のモダリティを凌駕するものではないが,総合的な診断に役立つ情報を提供すると思われる。

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