Advanced Visualization System“syngo.via”を用いたOncology画像診断 
高木英誠(仙台市立病院放射線科)
<Session II Latest Stories in Single Source CT>

2015-11-25


高木英誠(仙台市立病院放射線科)

当院では,2014年にシーメンス社の画像診断ITソリューション“syngo.via”を導入し画像診断に活用している。本講演では,Oncology領域におけるsyngo.viaの運用方法,およびsyngo.viaのアプリケーションのうちDual Energy Imagingの最新アプリケーションである“Monoenergetic Plus(Mono+)”と,MM(Multi Modality)Oncologyの“Lung CARE”について述べる。

syngo.viaの特長と運用方法

syngo.viaには画像診断に有用なさまざまなアプリケーションが搭載されている。他社製のビューワや電子カルテ,レポーティングシステムとも連携でき,アイコンをワンクリックするだけで参照可能である。また,2モニタ仕様で読影しやすい,サーバに画像データがアップロードされた時点で設定されたワークフローに則ったデータの自動解析および画像処理が行われる,などの特長を有する。当院では,既存のメインサーバやレポーティングシステムに加え,2014年にsyngo.viaを導入し,読影端末やデスクトップのリンク,各患者の読影端末ビューワのリンクから立ち上げて参照する運用となっている。

Mono+の有用性

1. Dual Energy Imagingのポイント
当院では,シーメンス社製Single Source CT「SOMATOM Definition Edge」を用いてDual Energy Imagingを行っている。140kVの高管電圧と80kVの低管電圧の2回撮影で行うため,胸部,腹部,骨盤などは撮影時に10〜20秒の息止めが必要である。時間分解能が高くないため,造影は後期相のみの撮影に制限される。撮影を成功させるためには,息止めがしっかりできる患者の選択,および息止めの練習と念押しが重要となる。

2.Mono+の特長
Dual Energy Imagingで得られたデータを解析することで,任意のエネルギーのmonoenergetic image(仮想単色X線画像)が作成可能である。実際に,ヨード造影剤ファントムと脂肪ファントムを撮影して得られたmonoenergetic imageのCT値を測定すると,低エネルギーになるに従ってヨードでは大きく上昇し,脂肪では低下,水では不変となる。また,ヨード造影剤ファントムからのビームハードニングが,高エネルギーになるに従い低減することがわかる。臨床では金属アーチファクトの軽減が期待できる。
このように,monoenergetic imagingでは,エネルギーによるコントラストをポストプロセッシングで選択可能であるが,40keVや190keVといった極端に低ないし高エネルギーを選択した場合,ノイズによる画質の低下が大きな問題となっていた。しかし,最新のMono+ではノイズが大幅に軽減されている。実際に,同一部位にROIを取って従来画像のSD値を比較してみると,Mono+ではSD値が大幅に低減していた(図1)。

図1 従来のmonoenergetic image(a)とMono+(b)のSD値の比較

図1 従来のmonoenergetic image(a)とMono+(b)のSD値の比較

 

3.症例提示
症例1は,70歳代,男性の直腸がん術前精査である。中等度の腎機能低下のため造影剤量を大幅に低減し,できるかぎり良好なコントラストを得る目的で,通常のスキャンに加えて骨盤部のみDual Energy Imagingを施行した。Mono+の40keV画像では,Mixed画像と比較してコントラストが向上し,従来の40keV画像との比較でもノイズが大幅に軽減している(図2)。
造影される腫瘍や腸管は,低エネルギー画像においてCT値が大幅に上昇するが,腸間膜の脂肪はCT値が低下するため,CT値の差が大きくなることで腫瘍や腸管と壁外脂肪との境界が明瞭になると考えられる。同様のことが頭頸部がんでも報告されており1),今後の臨床応用が期待される。
症例2は,70歳代,女性の膀胱がん精査である。初回に管電圧100kVpで撮影を行ったが,左全股関節置換後のため,金属アーチファクトにより腫瘍がほとんど見えなかった。骨盤部のDual Energy Imagingを追加したところ,Mono+の190keV画像では,腫瘍の輪郭が判断できるようになった(図3)。
このように,Mono+ではノイズが大幅に改善され,低エネルギーでのヨード増強,および高エネルギーでの金属アーチファクトの軽減が,実臨床で使用可能なレベルとなった。

図2 症例1:直腸がん術前精査(Mono+の40keV画像)

図2 症例1:直腸がん術前精査(Mono+の40keV画像)

 

図3 症例2:膀胱がん精査(Mono+の190keV画像)

図3 症例2:膀胱がん精査(Mono+の190keV画像)

 

Lung CAREの有用性

1.Lung CAREの特長と症例提示
syngo.viaのOncology領域におけるワークフローであるMM Oncologyは,各モダリティの画像データの形態的・機能的解析および評価を半自動的に行う。そのアプリケーションの1つであるLung CAREは,胸部CT画像を解析し,すりガラス状結節(GGN)を含む結節を自動で検出する機能である。読影者は得られた検出結果を基に良悪性を判断する。以下に,当院での使用方法の一例を示す。
症例3は,左腎がんのステージングである(図4)。まず,syngo.viaを立ち上げ,立ち上がるまでに背臥位の局所,リンパ節,肺以外の遠隔転移を確認してからsyngo.viaに移動する。画像がアップロードされた時点でLung CAREの解析は終了しており,読影者は1クリックで検出された結果を得ることができる。ここまでのクリック回数は,syngo.viaの起動を含めてわずか2回である。本症例は多発肺転移であった。
MM Oncologyは,ほかのアプリケーションと組み合わせて使用することも可能である。症例4は,大動脈瘤ステントグラフト留置後(COPD,喫煙歴あり)であるが,“Vascular”というアプリケーションで血管の評価を行ったあとMM Oncologyに移動すると,すでにLung CAREで解析ずみの結節が検出されている(図5)。また,結節の評価の機能も充実しており,過去画像を立ち上げると自動で現在画像のスライス厚を位置合わせし,さらに,結節の径を計測すると,過去の同一結節を自動で認識して計測を行う(図6)。同一結節に関しては,腫瘍体積やRECIST径などの経時的変化をグラフ化して評価することができる。本症例は最終的に肺がんの診断となった。

図4 症例3:左腎がんのステージング(Lung CARE)

図4 症例3:左腎がんのステージング(Lung CARE)

 

図5 症例4:大動脈瘤ステントグラフト留置後(Vascular+Lung CARE)

図5 症例4:大動脈瘤ステントグラフト留置後(Vascular+Lung CARE)

 

図6 症例4:Lung CAREによる結節の評価

図6 症例4:Lung CAREによる結節の評価

 

 

2.当院におけるLung CAREの検証
当院で原発性肺がんと診断された連続33症例,34腫瘍のサイズをT分類に準じて分類し,Lung CAREでの検出率を求めた。全体の検出率は82%,T1(3cm以下)の結節では検出率91%と,良好な成績が得られた。検出できなかった病変は6病変で,いずれも壁や血管に広範に接していた。一方,全周性に結節の形態が保たれているものは良好に検出された。
Lung CAREを使用することで高い再現性のあるデータが得られ,見落としの低減が期待できる。一方,Lung CAREが検出しづらい結節もあるため,現状では読影者によるチェックが必要である。また,アプリケーションの起動に10秒ほどかかるが,検出結果を自動的にPACSに転送することがメーカーによって検討されているとのことであり,今後の改善が期待される。

まとめ

syngo.viaでは画像がアップロードされた時点で解析が始まるため,読影医はストレスなく結果を閲覧可能である。また,Single Source CTでも,条件を選べばDual Energy Imagingを有効に活用可能であり,特にMono+による目的に応じた低エネルギー画像,高エネルギー画像が臨床で実用可能なレベルになっている。Lung CAREにおいても,ストレスなく結果が得られ,読影の一助になると実感している。

●参考文献
1)Lam, S., et al. : Optimal Virtual Monochromatic Images for Evaluation of Normal Tissues and Head and Neck Cancer Using Dual-Energy CT. Am. J. Neuroradiol., 36・8, 1518〜1524, 2015.

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)


【関連コンテンツ】
TOP