Computer Aided Detection
健診領域でのsyngo.viaの活用 
西村 崇(医療法人社団バリューメディカル バリューHRビルクリニック)
<Session III Synergies in Oncology CT>

2014-11-25


西村 崇(医療法人社団バリューメディカル バリューHRビルクリニック)

当クリニックは,企業の健康保険組合を中心に健診サービスを提供しており,年間受診者数は2万人以上,1日の画像処理件数は300〜350例にのぼる。2010年12月の開院当初から画像診断ITソリューション“syngo.via”を導入したが,2011年,稼働率が世界第1位となった。本講演では,健診領域におけるsyngo.viaの活用について紹介する。

バリューHRビルクリニックにおけるsyngo.via運用の特徴

健診サービスの提供を目的としていたことから,当クリニックでは開設当初からフィルムレス,ペーパーレスに向けた画像診断システムの構築を行ってきた。主なモダリティは,CTをはじめとするX線関連の検査機器,超音波診断装置のほか,内視鏡,眼底検査,心電図も管理対象としているため,処理件数がきわめて多い。
当クリニックのデータフローとシステム構成を図1に示す。健診システムを主体とし,そこからオーダ情報が健診データ収集システムとMWMに発行される。受診の進捗はICタグで管理しており,受診するとMWMサーバからaccession numberなどが各モダリティに送られる。個人情報取得後,すべての画像情報がsyngo.viaのサーバに送信される。syngo.viaでは,指定したワークフローであらかじめ画像処理が行われ,読影医は,その結果画像を各端末から参照できる。前処理が済んでいるため短時間での読影が可能であり,経時的な所見の比較も容易に行える。

図1 データフローとシステム構成

図1 データフローとシステム構成

 

肺がん健診用アプリケーション“Lung CARE”の有用性

健診の現場においてsyngo.viaが最も能力を発揮するのは,肺野領域であると考える。syngo.viaのアプリケーション“MM Oncology”は,各種モダリティ画像の形態的・機能的解析と評価を行う。当クリニックではそのなかの肺がん健診用ワークフロー“Lung CARE”を使用することで,現在と過去の画像から比較したい病巣を選択するだけで,自動で位置合わせされた画像を読影できる環境となっている。
症例1は,52歳,女性。小さな結節性病変の経過観察中に,CTにてconsolidation(浸潤影)と思われる病変が認められた(図2 a)。この病変にマーキングをしておけば,フォローアップの際に同じ断面の画像が瞬時に画面上に並列表示されるため,比較が容易である。本症例では,6か月後の画像で病巣の消失が確認された(図2 b)。

図2 症例1:Lung CAREによる経時的画像比較

図2 症例1:Lung CAREによる経時的画像比較

 

症例2は,47歳,女性。結節性病変の経過観察中に,CTにてすりガラス状陰影が認められた(図3 b)。病変にマーキングをすると,過去の同じ断面の画像が表示され(図3 c),3か月後のフォローアップの際にも同様に表示される(図3 a)。同じ断面の画像が並列表示されるため,病変の変化が簡単に観察可能である。病変にマーキングさえしておけば,比較するべき部位が位置合わせされた状態で瞬時に表示されることも,syngo.viaの特長である。

図3 症例2:Lung CAREによる経時的画像比較

図3 症例2:Lung CAREによる経時的画像比較

 

“Auto Segmentation”機能による病変のサイズおよび体積計測

syngo.viaのMM Oncologyには,病巣の輪郭や最大径,体積を自動計測し,過去画像とともに並列表示するAuto Segmentation機能があり,肺野領域における結節性病変の変化を見るのに有用である。
症例3は,58歳,男性。肺がん検診のためのCTにて右のS5胸壁に接して結節性の病変が認められた(図4 a)。体積が自動計測で表示されており,半年後に経過観察画像の計測結果と比較したところ,やや大きくなっていた(図4 b)。この時点で専門医に紹介したが,半年間の経過観察の結果,炎症性の変化と診断され,現在は当クリニックにて毎年1回健診を行っている。この症例でも,病巣をマーキングしておけば,すぐに過去と現在の画像が並列表示されるため,経時的比較には非常に有用である(図5)。
syngo.viaの経時的比較における課題としては,CT画像は4回前の検査分まで並列表示可能で,表示そのものは簡単に行えるが,過去のバージョンアップ時に病巣抽出のための閾値が変更されているため,過去画像でのAuto Segmentationの再測定を行わなければならないことである。また,次回の検査でスムーズに比較するためには所見を整理しておく必要があり,所見数が多いと整理に時間がかかってしまうことも,課題として挙げられる。

図4 症例3:Auto Segmentationによる病変の測定・認識

図4 症例3:Auto Segmentationによる病変の測定・認識

 

図5 症例3:Auto Segmentationにおける過去・現在画像の並列表示

図5 症例3:Auto Segmentationにおける過去・現在画像の並列表示

 

“Pulmo 3D”による肺気腫の定量化

近年の肺野領域の健診において,もうひとつ重要なのが肺気腫の評価である。syngo.viaに最近搭載された肺気腫の定量化のためのアプリケーションであるPulmo 3Dにて評価した症例を示す。
症例4は,39歳,男性。喫煙歴19年,健診にて咳などの症状を訴えていた。スパイロメトリでは,肺活量(%VC)が119%で問題はなく,1秒率がやや低い72%であったが,CT画像上,経年変化は見られなかった。Pulmo 3Dでは,閾値を設定して3D画像を作成し(図6),肺気腫の指数をパーセントで表している(図7)。分葉ごとにその数値が示され,本症例では右肺上葉(UR)に最も多く低吸収域が認められた。
このように,syngo.viaでは肺気腫を定量化して経過観察を行うことも可能であり,今後,臨床応用の広がりが予想される。

図6 症例4:Pulmo 3Dによる肺の3D画像作成

図6 症例4:Pulmo 3Dによる肺の3D画像作成

 

図7 症例4:Pulmo 3Dによる肺気腫の定量化

図7 症例4:Pulmo 3Dによる肺気腫の定量化

 

まとめ

健診領域におけるsyngo.viaの活用例を紹介した。syngo.viaのワークフローをうまく活用することで,病巣の経時的な比較が容易に行え,安定した診断精度が確保できると考えている。

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)


TOP