技術解説(日立製作所)

2016年11月号

放射線治療の技術動向

トモセラピーにおける強度変調放射線治療について

強度変調放射線治療を行うために専用設計されたトモセラピー「TomoHDシステム」は,従来のCアーム型リニアックと比べて構造について大きく異なる。その機能と強度変調方法について紹介する。

■2つの照射モード

トモセラピーの照射方法は2通りあり,1つは「ヘリカル(螺旋)照射」である(図1)。寝台を連続的に動かしながら,リングガントリを連続的に回転させることにより照射が行われる。治療計画時にピッチを設定し,線量や強度変調度に伴いガントリの回転速度が決定される。
もう1つは,「ダイレクト(固定多門)照射」である(図2)。文字どおり,ガントリを固定して固定多門照射を行うが,ヘリカル照射と同様に寝台を連続的に動かしながら照射を行う。上記のように「ヘリカル照射」と「ダイレクト照射」を使い分けることにより,幅広い症例に照射が可能である。

図1 ヘリカル(螺旋)照射

図1 ヘリカル(螺旋)照射

図2 ダイレクト(固定多門)照射

図2 ダイレクト(固定多門)照射

 

■強度変調方法

リニアックで発生したX線は,プライマリコリメータでファンビームに成形され,体軸方向を可動式コリメータにより症例に応じて絞られる。その後,バイナリーマルチリーフコリメータ(以下,MLC)により強度変調が行われる。バイナリーMLCとは,櫛状に並べられた10cm厚タングステン性のコリメータで(図3),64枚ある各リーフは圧縮空気によって打ち出され,開閉にかかる時間はわずか0.02秒と高速である。そのため,照射したくない部位が照射野内に入ってきた際に,即座にリーフを閉じられるというメリットが生まれる。透過線量は0.5%以下と少ない。
各リーフは,ガントリ1周につき51パターンで開閉する。その開時間は治療計画時に決定され,それぞれの違った値を持っている。例えば,1つのリーフはある角度で100ms開き,隣のリーフは200ms開く。次の角度では,それぞれの開時間は800ms,0msといった具合だ。このようにして,1セグメント中の照射野内においても,X線の強度を変調することができる。つまり,従来のMLCが行っていた照射野形状を決めるための機構というよりも,モジュレータ(強度変調機構)の意味合いが強い(図4)。
また,スリップリング方式を採用したリング型ガントリにより連続回転が可能なため,ヘリカルピッチに応じてオーバーラップしながら線量投与を行う。少なくとも,ヘリカルピッチを0.3にすれば(辺縁を除き),3回は同じ場所に強度変調をかけることができる〔ダイレクト照射の場合は体軸方向の照射幅につき10パターン(ヘリカルピッチ0.1相当)が標準〕。
前述のバイナリーMLCによる強度変調とヘリカルピッチにより,数万という強度の違うビームの組み合わせによる照射が可能となる。

図3 高速バイナリーMLC

図3 高速バイナリーMLC

図4 バイナリーMLCによる強度変調のイメージ

図4 バイナリーMLCによる強度変調のイメージ

 

トモセラピーは,AAPM TG-148に準拠したCTディテクタなどを利用してビームのパフォーマンスを検証できるTQAソフトウェアや画像誘導放射線治療(IGRT),治療計画装置を含め,トータルシステムとして,強度変調放射線治療の効率化が可能であると考える。患者にはもちろん,医療従事者の方々にもやさしい高精度放射線治療の普及の一助になれれば幸いである。

 

【問い合わせ先】
ヘルスケアビジネスユニットX線治療システム営業本部
TEL 03-6284-3745
URL http://www.hitachi.co.jp/healthcare

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