技術解説(日立製作所)

2016年11月号

放射線治療の技術動向

日立の粒子線治療システム

日立は,これまでに陽子線治療システムを国内に筑波大学附属病院陽子線医学利用研究センターをはじめ3件,米国にMDアンダーソンがんセンターをはじめ3件納入し,これらの施設ではトータル1万3000名を超える方々が治療されてきた。また,国内で陽子線治療施設1件,重粒子線治療施設1件,米国で陽子線治療施設1件を建設中である。2016年新たに,香港養和病院,シンガポール国立がんセンターから陽子線治療システムを受注した。

■日立の粒子線治療システムの技術的特徴

日立は,スキャニング照射を中核としたシステムを提案している。スキャニング法は従来のブロードビーム法と比べ,患部への線量の集中が可能であり二次粒子の発生も少ない。また,飛程補償体(ボーラス)などの患者用具が不要なため,治療時間を短縮でき,ランニングコストも低減できる。特に多門最適化(multi field optimization:MFO)により,正常組織への不要な照射を極力減らした治療が可能である。図1は多門最適化の例である。各門ともターゲットに対して不均一な線量分布で照射しているが,合成した線量分布はターゲット内で均一になっている。ターゲット付近にあるorgan at risk(OAR)に対する線量も極力低減できている。
陽子線治療システムの加速器には,北海道大学病院(以下,北大)向けに開発した小型シンクロトロンを採用した。また,重粒子線治療システムの加速器についても小型化をめざした加速器を大阪に導入する。陽子線用の回転ガントリについては,顧客ニーズに合わせ,標準型360°,小型360°,190°回転型と3種類の中から提案する。
位置決め用イメージングシステムについては,標準の2軸のX線撮像装置のほかにコーンビームCT(以下,CBCT),同室CTなどを選択可能である。イメージレジストレーションには2軸X線撮像に対応した2D/2Dモードのほか,治療計画のCT画像から多数のCT再構成シミュレーション画像(digital reconstructed radiography:DRR)を生成し位置決め時のX線画像と比較して自動的に位置ズレ量を算出する3D/2Dモード,CBCTや同室CTに対応した3D/3Dモードを提供可能である。
照射の高精度化については,放射線治療全体として画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy:IGRT)を高度化する技術開発が進められており,北大との共同開発においては陽子線治療用の照射装置における動体追跡技術,およびCBCT撮像技術を開発し臨床に適応している。動体追跡と陽子線スキャニングを組み合わせたシステムについては薬事法に基づく製造販売承認を2014年8月に取得し,同年12月より臨床に適応している。また,日々の患者の腫瘍の状態を把握し,より高精度な位置決めを実現する手段として,回転ガントリに搭載したX線撮像システムを利用しCT撮像する技術を開発した。本技術は,従来の位置決め,あるいは前述の動体追跡用に撮像する撮像装置を用い,回転ガントリを回転させることでCT画像を得るものである。
陽子線治療システムは今後大病院だけでなく,中小の病院や都市部の土地の狭い場所での需要が高まると考えている。そのために,北大向けシステムで開発した小型加速器と小型ガントリの組み合わせにより,ガントリ1室で設置面積を極力少なくしたシステムを開発している。
日立は,粒子線の治療計画ソフトウェアを開発している国内唯一のメーカーである。装置側で新技術が開発された際に,それに合わせて治療計画ソフトウェアで新技術を取り扱えるようにすることにより,新しい技術をタイムリーにお客様に提供してゆく。

図1 多門最適化の例

図1 多門最適化の例

 

■今後の展望

今後の粒子線治療システム市場の動向として,より広い顧客層を対象としたシステムが必要となる。したがって,今後も顧客との協創を通じた最先端の技術開発を進めるとともに,その先進技術をより容易に,かつ簡便に適用できるシステムの開発が不可欠である。その実現に向けて,単なる治療システムの開発に限定せず,治療前後のプロセスや患者・スタッフの動線も考慮した全体システムの開発を社内外の協力を得て推進してゆく。

 

【問い合わせ先】
粒子線治療マーケティング部
TEL 03-6284-3741
URL http://www.hitachi.co.jp/healthcare

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