技術解説(日立製作所)

2015年9月号

MRI技術開発の最前線

日立1.5T超電導MRI装置「ECHELON OVAL type ORIGIN5」

八杉 幸浩((株)日立メディコ 国内CT・MR営業本部)

■新製品の概要

日立の超電導MRI装置「ECHELON」シリーズは,「ECHELON Vega」(2006年発売)から高磁場装置における高機能撮像技術と高い画質を実現したことで,国内外において評価をいただいている。今回投入した新製品「ECHELON OVAL type ORIGIN 5」(図1)は,高いハードウエア性能に加え,豊富な独自開発のアプリケーションを搭載した最新のワイドボアMRI装置である。新たに搭載された撮像機能は以下のとおりである。

図1 ECHELON OVAL type ORIGIN5

図1 ECHELON OVAL type ORIGIN5

 

(1) これまでの頭部拡散強調画像の撮像機能を改良した,アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患や脳腫瘍の悪性度診断に有用と期待されている,脳の微細構造の撮像機能“diffusion kurtosis imaging(DKI)”
(2) MRIにとって最も問題となる検査中の動きの影響を低減する撮像機能“RADAR”に頭部血管を撮像するTOF-MRA機能を追加
(3) 肝臓における血流状態を可視化する腹部血管の非造影撮像機能“BeamSat VASC-ASL”
(4) 乳がんの治療効果判定に有用と期待される“Breast MRS”計測機能

このほかに,心臓内部の血流速度の画像化や心電図同期の不要な撮像手法の搭載といった心臓撮像機能の充実など,全身にわたりさまざまなアプリケーションを搭載した。MRI検査にとって必要な基礎“ORIGIN”をしっかりと磨き上げ,高画質と高機能を実現している。
本稿では,いち早く製品に搭載されたDKIと日立独自の撮像機能であるRADARについて解説する。

■DKI

今回新たにECHELON OVAL type ORIGIN5に搭載したDKI撮像機能は,新しい拡散イメージング手法で,これまでにない脳神経系の微細構造情報を取得できると期待されている。
DKIは,3種以上のmulti-b factorと,15軸以上のMPGパルスを印加した計測で得られる拡散画像を解析し,従来にはない新たな指標を得る解析手法である。
図2に示す従来のDWI,DTIの解析情報に加え,交差神経の描出,白質病変,神経細胞変性など,脳神経組織の微細構造に起因する情報が取得できる可能性がある。

図2 DWI撮像機能の進化

図2 DWI撮像機能の進化

 

この簡単な撮像原理を図3にて解説する。脳卒中や腫瘍の診断で高い有用性が示されているDWI,DTIは,水分子は自由に運動する(正規分布に従う自由拡散)という前提で各種解析を実施している。これに対しDKIでは,体内の水分子がさまざまな要因で動きに制限を受ける(正規分布から逸脱した制限拡散)という前提で解析を実施する。DKIには,生体組織の微細構造による制限拡散が反映されていると考えられ,微小変化の計測が可能となる。

● 正規分布からの逸脱度合いが「尖度=kurtosis」
● 「尖度」が大きい=水分子の受ける制限が強い。
● 制限の強さは,水分子周辺の環境に起因→微細構造を反映

図3 DKIの撮像原理

図3 DKIの撮像原理

 

DTIによるFA(fractional anisotropy)マップとDKIによるMK(mean kurtosis)マップの画像例を図4に示す。
FAマップは水分子の動きやすさの方向依存性(異方性)をマッピングしたもので,組織構造が神経線維のように異方的なものが高信号となる。これに対し,MKマップは水分子の動きの制限度合いをマッピングしたものであり,方向は関係なく制限が強い組織構造が高信号となる。このため,FAマップでは信号低下する交差神経もMKマップでは明瞭に描出でき,異方性が小さい灰白質も高コントラストな画像が得られる。

図4 FAマップとMKマップの比較

図4 FAマップとMKマップの比較

 

■All Round RADAR

RADARは,多数のシーケンス,全受信コイル,任意断面での撮像に対応し,使いやすさを追究した体動アーチファクト低減機能である。RADARとパラレルイメージングの高速撮像技術“RAPID”の併用を可能とした“Enhanced RADAR”では,撮像時間の延長なく,モーションアーチファクトの低減も達成している。
今回,TOFシーケンスおよびGrE(gradient echo)シーケンスに対応し,頭部ルーチン検査で必要な全シーケンスでRADARが併用可能な“All Round RADAR”となった。
GrEシーケンスでは,傾斜磁場パルスのわずかな誤差でエコー信号ズレが発生する。直交系サンプリングでは,信号ズレが各エコーで同様のため画質への影響が生じないが,RADARでは放射状に計測するためズレの影響がアーチファクトとなる。このため,GrEシーケンスにRADARを適用するには,より高精度の補正技術が必要となる(図5)。

図5 RADAR信号補正精度の向上

図5 RADAR信号補正精度の向上

 

RADARによるTOF-MRAとGrE T2WIの画像例を図6に示す。これは意図的に動きを与えた状態での画像であるが,RADARの適用により,頭部血管の末梢まで明瞭に描出されている。

図6 RADAR画像例

図6 RADAR画像例

 

■そのほかの主な特長

1.楕円型ワイドボアの採用で快適な検査空間を実現
体格の大きな被検者や狭い所を苦手とする被検者にとっても開放感をより感じられるように,幅74cmの楕円型ボアを採用することで検査空間を拡張した。

2.63cmワイド寝台を採用
楕円型ワイドボアで広がった横幅を有効に利用したワイド寝台を採用した。ゆったりと検査できるだけでなく,撮像部位が磁場中心になるように横に移動して撮像が可能で,画質も向上できる。

3.受信コイルをシステム化
「WIT(Workflow Integrated Technology) RFコイルシステム」は,頭部から体幹部の撮像において寝台天板に設置した受信コイルを外すことなく,撮像したい部位の受信コイルを載せ替えるだけで簡便に最適な感度分布で撮像できる。

 

●問い合わせ先
株式会社日立メディコ
国内CT・MR営業本部
〒101-0021
東京都千代田区外神田4-14-1
秋葉原UDX 18階
TEL:03-3526-8306
http://www.hitachi-medical.co.jp/

TOP