Report 
第6回Body DWI研究会
TRILLIUM OVALユーザーによるBody DWIの撮像条件検討における新たな試みを報告

2017-4-25


図1 今村病院外観

図1 今村病院外観

第6回Body DWI研究会が2017年2月12日(日),当番世話人の林田佳子氏(産業医科大学病院放射線科講師)の下,アクトシティ浜松にて開催された。今回は,「各社ユーザーからのプロトコールと症例提示」「『画像診断』リフレッシャーコース解説」「ランチョンセミナー」「臨床セッション1:臨床ニュースと骨転移診断」「臨床セッション2:緩和ケアとDWIBS」「症例報告:さまざまなパターンを学ぶ」「臨床セッション3:肺癌・乳癌・頭頸部癌とWB-DWI」の7セッション計20題の講演が企画され,代表世話人の高原太郎氏(東海大学工学部医用生体工学科教授)による総括と閉会の辞で幕を閉じた。

「各社ユーザーからのプロトコールと症例提示」では,日立製作所ユーザーとして如水会今村病院(図1)放射線科部長の落合礼次氏より「日立社製3T MRIにおけるBody DWIの取り組み」と題して,最新の3T MRI装置「TRILLIUM OVAL」を用いた撮像条件検討の報告があった。Body DWIは,磁化率変化の影響を受けやすい3T装置では1.5T装置に比較し画像取得が難しいと知られており,3T装置を用いた画質向上は大きなテーマである。

落合氏は画質改善のために,(1) 画像のつなぎ合わせ目の対策,(2) B1の対策,(3) 画像展開不良の対策,(4) 被写体の動きによるアーチファクトの対策,(5) 脂肪抑制の対策,(6) 上腕の対策,の6つの問題点と解決策を説明した。ここでは,Body DWIの画質で特に重要である(1) 画像のつなぎ合わせ目の対策と(5) 脂肪抑制の対策について紹介する。

(1) 画像のつなぎ合わせ目の対策として,日立のイメージスティッチング機能によるオプティカルフローを用いたひずみ対策機能と,各ステーションのWW/WLのAuto調整機能の紹介があった。これはテーブルの移動に伴う画像の辺縁に生じる“画像ひずみ”を“位置ズレ”と見なし,補間計算によりひずみを修正して画像の位置を自動認識し,WW/WLをAuto調整した上で結合する機能である。

(5) 脂肪抑制の対策は,RF duration機能により90°と180°のRFパルス照射時の傾斜磁場を大きく変更し,スライス方向のケミカルシフト量を変更することで水励起を行う。本手法は,従来の90°と180°のRFパルス照射時の傾斜磁場を反転する手法に比較し,磁場の不均一に強い特徴がある。そのためSTIRと併用することで頭部から骨盤部まで均一な脂肪抑制効果が得られる。また,RF duration機能と併用することで,より脂肪を抑制する新しい取り組みを紹介した。まず,各ステーションのDWI計測において積算回数を半分とすることで計測時間を半分にし,同一スライス断面で受信バンド幅を変更して,2種類の画像を取得する。受信バンド幅が異なるため,画像面内のケミカルシフトアーチファクトの位置が異なる画像を取得できる。これらの画像を加算することで,ケミカルシフトアーチファクトを目立たなくすることができる。日立MRI装置のMulti b計測機能は,b valueごとに積算回数を調整できるため,時間の延長を少なくすることができる(例えば,b value=0の計測においては積算回数を1回,b value=1000の積算回数は8回と設定が可能)。このため本手法は,時間の延長がほとんどなく使用しやすい(図2)。

図2 条件検討前後のBody DWI画像比較

図2 条件検討前後のBody DWI画像比較

 

Body DWI検査は全身の検査が可能で,治療効果判定や病変の検出に優れている。また,骨シンチグラフィやPET検査に比較し医療費が抑えられ,患者の費用負担も少なくすむ。さらにBody DWI検査は,PET検査やRI検査などのように放射性同位体を標識した高価な製剤を使用しないため,当日に急な事情で検査ができなくなり,用意した薬が無駄になって施設が費用をロスするなどのリスクがない。放射性同位体を標識したブドウ糖の集積を観察するわけではないため,患者を安静にさせる必要はなく,患者の拘束時間も短縮できる。その上,血糖値の高い患者にも使用できる。

最後に落合氏は,Body DWI検査は,MRIの検査枠さえ空いていれば検査オーダを出した当日にあらゆる患者で低侵襲的に全身のがん検索ができる検査であり,今後,さらに広がっていく可能性があると締めくくった。


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