セミナーレポート(日立製作所)

日本超音波医学会第91回学術集会が2018年6月8日(金)〜10日(日)の3日間,神戸国際会議場(兵庫県神戸市)などを会場に開催された。8日に行われた株式会社日立製作所共催のランチョンセミナー4では,東京医科歯科大学肝臓病態制御学講座教授の朝比奈靖浩氏を座長に,大阪市立大学医学部肝胆膵病態内科学准教授の森川浩安氏と同講師の打田佐和子氏が,「肝疾患の診断から治療〜進化したElastographyとRVSの活用〜」をテーマに講演した。

2018年9月号

日本超音波医学会第91回学術集会ランチョンセミナー4 肝疾患の診断から治療 〜進化したElastographyとRVSの活用〜

肝疾患の診断から治療 〜進化したElastographyとRVSの活用〜

森川 浩安(大阪市立大学医学部肝胆膵病態内科学・先端予防医療学)

森川 浩安

大阪市立大学医学部附属病院 先端予防医療部附属クリニックMedCity21は,公立大学では初めての人間ドック施設として,一般的な健診事業に加え,予防医療の推進に寄与するさまざまな研究やバイオバンクの整備などを行っている。本講演では当クリニックにおける肝疾患の現況と,エラストグラフィの進化の歴史や特長,および肝疾患診断における有用性を報告する。

肝疾患の現況

当クリニックの健診受診者における肝機能(ALT)異常の割合は,男女共に25%と,人間ドック学会の年次報告から推定される肝機能異常の割合と同等であった。また,C型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性の割合は,全国平均の約0.4%に対し,当クリニックでは直近の集計で0.6%とやや高いが,その内訳は治療ずみおよびHCV-RNA陰性が大半であり,治療対象者は年々減少している。大阪市立大学医学部附属病院のデータでも,治療者数は減少に転じており,近年では徐々にC型肝炎の囲い込みができつつあると言える。一方,C型慢性肝炎においては,直接作用型抗ウイルス薬(DAA)治療後であっても肝発がんを念頭に置き,線維化進行例を慎重に経過観察していくことが重要である。
次に,当クリニックで腹部エコーにて脂肪肝と診断される割合は約29%と全国平均的であったが,「FibroScan」(Echosens社製)のCAPで脂肪肝の病理S1グレードに相当する>240dB/mには50%以上が該当する。日本の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)約1000万〜2000万人のうち,発がんの可能性のある非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は約100万〜200万人と少ないが,やはり囲い込みが重要である。また,NAFLDおよびNASHの予後に最も影響すると言われる線維化の診断には,エラストグラフィが有効である。当クリニックの脂肪肝患者のうち,ALT異常は36%に上ることから,今後は健診受診者においても,脂肪と線維化の測定が重要である。

肝エラストグラフィの進化

超音波診断装置は,エラストグラフィが搭載されたことで,形態学的情報に加えて組織性状(硬度・弾性度)の情報が得られるツールとなった。日立の超音波診断装置には,strain imagingの“Real-time Tissue Elastography(RTE)”とshear wave imagingの“Shear Wave Measurement(SWM)”の2種類が搭載されている。

1.RTEの進化
RTEは,用手的加圧により,軟らかい組織は歪みが大きく,硬い組織は歪みが小さいことを空間微分して色分けし,画像化する。線維化の進行に伴う組織弾性像の変化のポイントとして,(1) 色のバラツキが大きくなる,(2) 相対的に低歪み領域が増加する,(3) まだらな画像パターンになる,ということがわかっている。
また,RTEは用手的加圧を行い,連続した画像表示であるため,開発当初から計測結果の客観性が課題とされていた。そこで,RTE導入施設の共同研究によりLF index(LFI)が作成された。LFIは,C型肝炎患者と健常ボランティアから算出した9つの特徴量を,組織学的線維化診断に照らして肝線維化を予測する重回帰式を構築して得られる値である。RTEでは現在,LFIの解析結果が検査時にリアルタイムに表示されるようになり,肝線維化診断においてFibroScanに匹敵するデータが得られるようになった。
さらなる利便性と客観性の向上をめざした進化として,2014年には,従来リニアプローブでのみ可能であったRTEがコンベックスプローブにも対応し,Bモード撮像時のRTEが可能となった(図1)。2017年には,心拍や大動脈の拍動を受けた肝臓の動きの方向が矢印で表示され,最適な測定状態がアシストされるようになった(図1)。さらに,同年,“RTEフレーム自動選択機能”の搭載によって,計測に最適なエラストグラフィ画像が自動で表示されるようになり(図2),客観性が大幅に向上した。

図1 RTEのコンベックスプローブへの対応

図1 RTEのコンベックスプローブへの対応

 

図2 RTEフレーム自動選択機能

図2 RTEフレーム自動選択機能

 

2.SWMの概要と有用性
日立が2015年に開発したSWMは,プッシュパルスで生体組織を振動させることで剪断弾性波を発生させ,その伝播速度(Vs)を計測する技術である(図3)。SWMでは,Vsの測定結果の信頼性がVsNとして表示される。VsNは,1回の測定でROI内部の複数ポイントのVsを計測し,測定が妥当でない値は省いた上で計測に用いられたサンプル数の割合をVs有効率として数値化するため,有効サンプル数が多いほどより的確な結果が得られる。Vs値測定はヒストグラム表示されるほか,統計値としてVs値の四分位範囲(inter quartile range:IQR)も表示される。Vs値は,他社の複数のshear wave imagingと比較しても,良い相関が得られていた1)。ただし,原理は同じでも,診断に対する値は共通でないことに注意を要する。

図3 SWMの概要

図3 SWMの概要

 

3.新しい肝疾患の評価法“Combi-Elasto”
日立のエラストグラフィの新機能として,2017年末,「ARIETTA 850」にCombi-Elastoが搭載された。Combi-Elastoは,RTE,SWMの2種類のエラストグラフィの融合,および減衰率(attenuation)から脂肪化の程度を推定する指標(ATT)をワンボタンで同時に測定可能にした仕様で,LFIやVsに,線維化関連指標のF indexと炎症関連指標のA indexが付加されている。
当クリニックにて,2018年3月〜4月にCombi-ElastoとFibroScanの両方を施行した健診受診者117例について検討した。VsNについて,70%以上を有効(通常は60%以上が有効)として検討した結果,非有効例の特徴はBMI,腹囲,体脂肪面積が大きく,収縮期血圧が高い患者であった。shear wave imagingであっても,肥満例の診断結果については慎重に扱う必要がある。FibroScanとの比較では,VsおよびF indexとの良好な相関が見られるが,LFIは相関が低かった。

4.脂肪測定(ATT)
ARIETTA 850では,最近話題の脂肪化の程度を表すとされる減衰率診断(ATT)が測定可能となった(図4)。日立のATTは,周波数の異なる2周波の受信信号の振幅差の傾きから減弱係数を推定する。ATTについて,開発段階における3施設,351例での検討では,肝生検での組織脂肪化分類でS0とS1の有意な区別はつかなかったが,他のグレードの区別はついた。さらに,生活習慣病関連マーカーの中性脂肪と相関があったことが報告されている2)
前述の当クリニックの健診受診者117例のうち,VsNが有効であった95例を対象にATTについて検討した。その結果,BMI上昇および飲酒量の増量に伴いATT値が有意に上昇した。また,通常USにおける脂肪肝の指標(肝腎コントラストなど)から,脂肪肝なし,軽度,中等度以上に分けてATT値と比較したところ,脂肪肝の進行に伴いATT値の上昇を認めた。FibroScan-CAPや中性脂肪との相関は見られなかったものの,腹囲や頸動脈中膜内膜複合体肥厚(IMT)との相関が見られた。
現状,脂肪肝診断にはATTのみでは不十分であり,今後,さらなる検討が必要であると考える。

図4 ARIETTA 850におけるATTの測定

図4 ARIETTA 850におけるATTの測定

 

まとめ

エラストグラフィの実用化によって,超音波診断装置は形態学的情報を得るツールから,組織性状の情報を得るツールへと進化した。また,日立のエラストグラフィは,Combi-Elastoが可能となったことで,検査の利便性と診断能の向上が図られた。一方,脂肪肝診断におけるATTの利用については,今後の発展が期待される。
超音波診断における定量化評価は,客観的評価を伝える情報として必要であると考える。

●参考文献
1)Yada, N., et al., Oncology, 89(suppl. 2), 53〜59, 2015.
2)Tamaki, N., et al., Hepatol. Res., 2018(Epub ahead of print).

 

森川 浩安(Morikawa Hiroyasu)
1993年 鹿児島大学卒業。2000年 大阪市立大学大学院修了。2007年 同大学肝胆膵内科講師。2014年〜同大学先端予防医療学准教授。

 

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