セミナーレポート(日立製作所)

第105回日本泌尿器科学会総会が2017年4月21日(金)〜23日(日)の3日間,城山観光ホテル(鹿児島市)などを会場に開催された。22日に行われた株式会社日立製作所共催のランチョンセミナー27では,九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野教授の江藤正俊氏を座長に,九州大学病院泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科助教の出嶋 卓氏と九州大学大学院医学研究院先進画像診断・低侵襲治療学共同研究部門教授の浅山良樹氏が,「泌尿器癌に対する新たな診断・治療戦略」をテーマに講演した。

2017年8月号

第105回日本泌尿器科学会総会ランチョンセミナー27 泌尿器癌に対する新たな診断・治療戦略

泌尿器癌における超音波を用いた新たな診断・治療戦略

出嶋  卓(九州大学病院泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科)

出嶋  卓

本講演では,超音波診断装置の進歩,超音波とMRIを融合したfusion biopsy,そして,手術における画像の進歩として,当院で施行している腎部分切除における手術ナビゲーションについて述べる。

超音波診断装置の進歩

超音波の歴史は,1880年の圧電効果の発見に始まり,1942年に脳,49年には胆石と,医学応用が進められてきた。その後,57年にドプラ法が,82年にはカラードプラ診断装置が開発され,超音波による診断・治療は大きく進歩した。
泌尿器科領域では,腎臓,膀胱,前立腺,精巣,副腎を対象に,腫瘍,結石,水腎症などの診断において超音波が重要な役割を担っている。また,処置・手術においては,経皮的腎生検,超音波ガイド下前立腺生検,密封小線源治療,腎部分切除術に超音波が用いられている。現在は,前立腺エコーでリアルタイムバイプレーン対応プローブも開発され,冠状断,矢状断を並列してリアルタイムに同時表示することも可能になっており,生検や小線源治療において果たす役割は大きい(図1)。
2003年に日立メディコ(現・日立製作所)が製品化したReal-time Virtual Sonography(RVS)は,CT,MRI,超音波のボリュームデータを用いて,超音波画像に対応した断面の再構成画像(MPR)をリアルタイムに構築,並列表示するアプリケーションである。RVSにより,腹部領域においてはRFAなどのナビゲーションや肝切除術における微小病変の同定,泌尿器領域においてはMRIガイド下ターゲット生検でのがん陽性率向上など,確実で効率の良い検査・治療が可能になると期待できる。前立腺癌の診断においては,RVSでMRIと経直腸的前立腺超音波(TRUS)を同時に表示することで,fusion biopsyが可能になる。

図1 リアルタイムバイプレーン対応プローブCC41R1,CC41R

図1 リアルタイムバイプレーン対応プローブCC41R1,CC41R

 

超音波とMRIの融合:fusion biopsy

1.前立腺におけるMRIの重要性
前立腺MRIについては,診断の単純化と標準化を目的としたProstate Imaging and Reporting and Data System(PI-RADS)が提唱され,それを基にデータ収集や予後評価が進められており,前立腺MRIの診断効率が上昇している。また,最新のEuropean Association of Urology(EAU)guideline 2017のGuideline for imagingでは,再生検前のMRIは有効であることが示され,再生検では系統的前立腺生検に加えてMRIターゲットバイオプシーが推奨されていることから,fusion biopsyの有効性が認められていると言えるだろう。初回生検陰性の再生検では,TRUSのみでの生検と比べてMRIターゲットバイオプシーが有効であるとの報告1)もある。
前立腺のfusion biopsyに関する論文発表は,2010年には1例だったが,その後増加を続け,2015年には38例と飛躍的に伸びていることから,前立腺MRIがスタンダードになりつつあり,fusion biopsyのニーズも増加していることがうかがえる。

2.MRI fusion biopsy
前立腺のMRI fusion biopsyでは,まずMRIのDICOM形式のボリュームデータを超音波診断装置に取り込む。MR画像は,特にT2強調画像と拡散強調画像の有用性が高い。次に,MR画像と超音波画像の位置合わせをするためのマーキングを行う。基準線と基準点の設定は,内尿道口を通る断面で行うのが最もわかりやすい(図2)。また,ターゲットがある場合は,拡散強調画像の高輝度信号領域にマーカーを設定する。そして,RVSでMR画像と超音波画像の同一断面を表示し,磁気位置センサユニットを用いて超音波画像の位置情報を得て,系統的生検やターゲット生検を施行する。RVSではリアルタイムのTRUSにMR画像が常に追従して同一断面が表示されるため,矢状断で位置合わせを行った後,実際の生検では冠状断でターゲットを確認しやすい場合にも同じ断面が表示され,ターゲットをきちんと認識することができる(図3)。
Fusion biopsyには,(1) ターゲットをきちんと認識できる,(2) 生検時の穿刺部位を正確に記録できるため,待機療法などでの再生検時に初回生検と比較できる,といった利点がある。なお,初回生検時では系統的生検とfusion biopsyの間で有意差が示されていない報告も多く認められることから,今後のデータの集積が待たれる2)

図2 位置合わせの流れ

図2 位置合わせの流れ

 

図3 位置決め時と生検時のRVS

図3 位置決め時と生検時のRVS

 

手術における画像の進歩:腎部分切除における手術ナビゲーション

ロボット支援腎部分切除術(RAPN)が2016年に保険収載され,以前に比べて適応が拡大している。腫瘍サイズが大きい,埋没型,腎門部など,手技の難しい症例への適応が増加しており,手術計画や術中画像補正の重要性がいっそう高まっている。当院ではRAPNに手術ナビゲーションを用いており,その概要とナビゲーションが有効だった症例を紹介する。

1.当院の手術ナビゲーションの概要
手術ナビゲーションでは,始めに術前CT画像から3D画像を構築する。当院では3D画像の構築に,オープンソースソフトウエア“3D Slicer”を用いている。マーキングでは,手術台と手術支援ロボット「da Vinci Surgical System(da Vinci)」(Intuitive Surgical 社製)の内視鏡に赤外線センサを装着し,赤外線で2つのセンサを感知して距離を計測する。そして,手術で3D画像と内視鏡画像を同期させ,内視鏡の動きを自動追跡してナビゲーションするシステムとなっている。

2.症例提示(図4)
RAPNと自動追跡型手術ナビゲーションの組み合わせが有用だった一例を紹介する。3Dナビゲーションは,腫瘍の大きさや位置関係を把握できるという有効性に加え,血管をあらかじめ同定できるという利点がある。症例(72歳,男性)は,右腎に径5.5cmの腫瘍があり,RENAL Nephrometry Score(RNS)は9aであった。3D画像により,腫瘍の背側に動脈があることを事前に把握できたため,先に血管の処理を行った上で,da Vinciの内視鏡画像と術中エコーを確認しながら,腫瘍切除を進めることができた。da Vinci操作を行うコンソール時間は100分,阻血時間は13分,出血量は100mLであった。
このようにナビゲーションを用いることで,腫瘍だけでなく血管情報も確認することができ,より難しい症例においても手術の安全性が向上する可能性がある。また,手術ナビゲーションでは,腎周囲剥離の際の補正も行うため,切除範囲を正確に認識することができ,surgical margin陽性となる症例も減少すると期待される。

図4 症例:右腎にRNS 9aの腫瘍(72歳,男性)

図4 症例:右腎にRNS 9aの腫瘍(72歳,男性)

 

●参考文献
1)Schoots, I.G., et al. :Magnetic resonance imaging-targeted biopsy may enhance the diagnostic accuracy of significant prostate cancer detection compared to standard transrectal ultrasound-guided biopsy;A systematic review and meta-analysis. Eur. Urol., 68, 438〜450, 2015.
2)Baco, E., et al. :A randomized controlled trial to assess and compare the outcomes of two-core prostate biopsy guided by fused magnetic resonance and transrectal ultrasound images and traditional 12-core systematic biopsy. Eur. Urol., 69, 149〜156, 2016.

 

出嶋  卓(Dejima Takashi)
2003年 佐賀医科大学卒業。2012年 九州大学大学院修了。2013年 バンクーバー前立腺センターのpostdoctoral fellow。2015年 九州大学病院。2017年より同院泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科助教。

 

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