セミナーレポート(日立製作所)

第52回日本肝癌研究会が2016年7月1日(金),2日(土)の2日間,虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)にて開催された。1日に行われた株式会社日立製作所共催のランチョンセミナー5では,愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学教授の日浅陽一氏を座長に,大阪府立成人病センター肝胆膵内科副部長の榊原 充氏が「バイポーラRFAにおける新たな潮流〜3D Sim-Navigatorと平行穿刺アタッチメントのマリアージュ〜」をテーマに講演した。

2016年10月号

第52回日本肝癌研究会ランチョンセミナー5

バイポーラRFAにおける新たな潮流 〜3D Sim-Navigatorと平行穿刺アタッチメントのマリアージュ〜

榊原  充(大阪府立成人病センター肝胆膵内科)

榊原  充

第52回日本肝癌研究会が2016年7月1日(金),2日(土)の2日間,虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)にて開催された。1日に行われた株式会社日立製作所共催のランチョンセミナー5では,愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学教授の日浅陽一氏を座長に,大阪府立成人病センター肝胆膵内科副部長の榊原 充氏が「バイポーラRFAにおける新たな潮流〜3D Sim-Navigatorと平行穿刺アタッチメントのマリアージュ〜」をテーマに講演した。

バイポーラRFAの普及に伴い,その手技を支援する超音波診断装置にも新たな潮流が生まれている。本講演では日立製作所社製超音波診断装置の2つの大きな技術として,平行穿刺アタッチメントと“3D Sim-Navigator”を紹介し,その2つを組み合わせた活用の有用性と展望を述べる。

平行穿刺アタッチメントを用いた複数本穿刺

1.平行穿刺法の有用性
従来,既存のバイポーラRFAシステムを用いて複数本穿刺を行う場合には,超音波プローブに取り付けた穿刺アダプタに針を1本しか装着できないため,1本穿刺するたびにプローブをいったん体表から離して針を交換する必要があるほか,ドジメトリテーブル通りの平行穿刺は困難,凝固域が安定しない,などの課題があった。そこで,こうした課題の解決に向け,当院にて,一度に2本の針を装着できる平行穿刺アタッチメントを開発した。これにより,プローブを毎回体表から離す必要がなくなるほか,常に同じような平行穿刺が可能となり,結果として凝固域が安定する。穿刺の手間は1本穿刺とほぼ変わらず,かつ2本の穿刺針を見ながら凝固域の広がりを経時的に観察できるというメリットもある。

2.平行穿刺法における凝固域の検討
平行穿刺アタッチメントを使用すれば,凝固域の高さ,幅,厚みが毎回同じ形で計測できると考え,実際に検討を行った。その結果,2cm電極針(T20)2本の場合は,高さ2.9cm,幅2.9cm,厚み2cmと,Cool-tip 2cm針(コヴィディエン社製)よりやや大きい凝固域が得られ,Cool-tip針を十分に代替可能と思われた。一方,3cm電極針(T30)2本の場合は,高さ3.6cm,幅3.6cm,厚み2.4cmと,十分な厚みが得られなかった。このため,T30を用いて平行穿刺を行う場合は,3本穿刺が必要と考える。

3.平行穿刺法を応用した3本穿刺法:2+1法
2つのプローブを用いて2本の平行穿刺と1本穿刺を組み合わせて行う3本穿刺を「2+1法」と命名した。この時,日立製作所社製の超音波診断装置に搭載されている“Real-time Biplane”機能を用いることで,2つのプローブの画像を並列表示可能にする(図1 左)。実際に穿刺を行ってみたところ,3本穿刺に要した時間は約1分30秒で(図1),焼灼が不十分なところはリアルタイムに針の位置補正も可能であり,治療後のCT画像では十分なマージンを取って焼灼できていることが確認できた。

図1 2+1法における実際の穿刺

図1 2+1法における実際の穿刺

 

3D Sim-Navigatorの基本機能

3D Sim-Navigatorは「ARIETTA 70」(日立製作所社製)に搭載されており,複数本穿刺のシミュレーションとナビゲーションを可能とする。“Real-time Virtual Sonography(RVS)”をベースに開発された技術で,(1) 穿刺ラインに直交し,腫瘍ROIの中心部を通るラインを厚み方向に展開したボリュームデータの断面像“C-plane画像”,(2) 仮想穿刺針を3D空間上に配置する“3D Body Mark”,(3) 複数本穿刺時に過剰な電極間分離を回避する“電極間距離計測”という3つの特長を有する。
3D Sim-Navigatorを用いたT30でのRFAシミュレーションの基本的な流れは次の通りである。まず,1本目の穿刺ラインに沿って仮想針を設定すると電極針の絶縁体と針先を示す2つの×印が表示される。2本目,3本目も同様に仮想針を設定するが,この時,3本の針先を二等辺三角形の頂点となるようC-plane画像を見ながら配置すると,きわめて均等な針間距離が得られる。同時に針間距離も表示され,ドジメトリテーブルに沿った間隔になっているかどうかが確認できる(図2)。

図2 3D Sim-Navigatorを用いたRFAシミュレーション(3本目の穿刺)

図2 3D Sim-Navigatorを用いたRFAシミュレーション(3本目の穿刺)

 

3D Sim-Navigatorと平行穿刺のマリアージュ

1.有用性と課題
当院では現在,「HI VISION Preirus」(日立製作所社製)を用いてRFAを施行しており,3D Sim-Navigatorは平行穿刺アタッチメントに対応したプロトタイプをワークステーションにて使用している。2本の平行穿刺ラインが表示されるほか,平行穿刺への対応として1回の画像静止で2本の仮想針が表示されるため,外側針からの穿刺も安心して施行可能である。
また,C-plane画像は平行穿刺法との親和性が非常に高い。前述の通り,T30での2本平行穿刺では凝固域が厚みの足りない楕円球となるが,楕円球の大きさは使用する針の組み合わせごとに一定というメリットもある。この厚み方向をC-plane画像が示してくれるため,凝固不足が厚み方向のどちらに生じるかを予測し,3本目の配置を決定することができる。
一方,課題として呼吸性移動の問題が挙げられる。そこで,この課題の解決をめざし,当院なりの治療ワークフローを検討した。

2.治療ワークフローの検討
まず,シミュレーションではRVSの同期を行った上で,RVS画像とC-plane画像を表示し,平行穿刺ラインを検討する。理想的な穿刺ラインが決定したら,そのラインが表示されたRVS画像を左側に表示し,右側に表示したリアルタイムの超音波画像を参照しながら,プランニング通りの穿刺が可能かどうかを確認する。可能であれば両者の静止画をリファレンス画像として保存し,3本目も同様にリファレンス画像を作成。針間距離・絶縁体間距離の計測も行い,3Dデータでシリーズ保存する。治療当日は,理想の穿刺ラインが表示されたRVS画像,もしくは超音波画像を左側に,右側にはリアルタイムの超音波画像を表示し,左側の画像を参照しながら3本の穿刺を行う。その後,2+1法を用いてReal-time Biplane表示にて焼灼を行う。

3.実証試技
上記ワークフローの有効性を確認するため,実証試技を行った。
症例は,50歳代,男性。2013年に肝細胞がん(HCC)が初発し,外側区域切除が行われた。その後,S5/6の肝表面肋骨裏に直径25mm(コロナ領域も含めると29mm)の比較的大きな単発のHCC異所再発が認められ,RFA目的で当科を紹介受診した。超音波検査では,腫瘍が3肋間にまたがって確認されたため,腫瘍を北半球と南半球に分け,T30 3本にて扁平二等辺三角形配置による変則ダブルトライアングル法で焼灼を行った。
シミュレーションは前述の方法にて人工腹水を併用して治療前日に行い,当日はリファレンス画像を参照しながら,まずは北半球の穿刺を行った(図3,4)。その後,画面表示をReal-time Biplaneに切り替え,凝固域の広がりを見ながら穿刺位置を微調整しつつ焼灼した。続いて南半球も同様に穿刺(図5),焼灼を行い,最後に凝固域の分裂がないことを確認した。治療後のCTでは,凝固域がほぼ球形を成し,コロナ濃染も含めて十分なマージンを形成できていることが確認できた。

図3 実証試技における北半球の1本目の穿刺

図3 実証試技における北半球の1本目の穿刺

 

図4 実証試技における北半球の平行穿刺

図4 実証試技における北半球の平行穿刺

 

図5 実証試技における南半球の穿刺

図5 実証試技における南半球の穿刺

 

展 望

3D Sim-Navigatorはシミュレーションツールとしてきわめて有用なほか,ファントムを用いて穿刺や仮想針を置くなどの反復練習が可能であるなど,教育ツールとしての付加価値もある。さらに,熟練者の穿刺データの共有あるいは穿刺困難例の見本供与などデータのやり取りが可能になれば,教育の幅も広がると考えられる。また,モノポーラ針の,特にオーバーラップ法における穿刺シミュレーションでも非常に大きな武器となる。
平行穿刺アタッチメントおよび3D Sim-Navigatorの平行穿刺対応版も現在開発が進められており,近い将来の製品化が期待される。

 

榊原  充 (Sakakibara Mitsuru)
1996年 大阪大学医学部卒業。 同年 同第一内科入局。国立大阪南病院消化器科,大阪大学大学院医学系研究科分子制御治療学,同大学医学部附属病院消化器内科,同未来医療センターなどを経て,2011年 大阪府立成人病センター肝胆膵内科医長。2012年〜同副部長。

 

●そのほかのセミナーレポートはこちら(インナビ・アーカイブへ)

【関連コンテンツ】
TOP