セミナーレポート(日立製作所)

第41回日本超音波検査学会学術集会が2016年6月10日(金)〜12日(日)の3日間,仙台国際センター(宮城県仙台市)にて開催された。11日に行われた株式会社日立製作所共催のランチョンセミナー3では,住友病院診療技術部超音波技術科の尾羽根範員氏を座長に,東北大学乳腺・内分泌外科准教授の鈴木昭彦氏が「乳がん検診の実情と超音波検診導入への展望」を,静岡県立静岡がんセンター生理検査科の岡山有希子氏が「精査施設におけるマルチモダリティの活用」をテーマに講演した。ここでは,岡山氏の講演内容を報告する。

2016年9月号

第41回日本超音波検査学会学術集会 ランチョンセミナー3 乳房超音波の検診と精査の現状

精査施設におけるマルチモダリティの活用

岡山有希子(静岡県立静岡がんセンター生理検査科)

岡山有希子(Okayama Yukiko)

がんセンターである当院は,乳がん検診で異常を指摘された受診者の二次検査(精査)で超音波検査を施行している。精査施設での超音波検査の役割には,“良悪性の診断”“広がり診断”“術前化学療法の効果判定”“術前マーキング”がある。本講演では,さまざまな手法を活用した精査施設での超音波検査について述べる。

良悪性の診断

良悪性の診断では,Bモードの観察が何より重要で,ゲインや周波数,フォーカスを適切に調整することで,ほとんどの病変で診断が可能になる。判断に迷う場合に,血流の情報や硬さの評価を追加する。血流については,日立製作所製の超音波診断装置では,カラードプラに加えて“eFLOW”を用いることで,カラーのはみ出しの少ない精度の高い血流情報が得られる。また,硬さを評価する“Real-time Tissue Elastography(RTE)”は,腫瘍の広がりの範囲を確認するために用いることが多い。

1.造影超音波
血流の情報については,2012年に乳房腫瘤性病変に対して保険適用となったソナゾイドによる造影超音波も用いられており,良悪性の診断のほか,広がり診断,術前化学療法の効果判定に役立つと期待されている。
造影超音波の腫瘍の染影パターンは,良性では均一で,悪性では不均一となることが多い。しかし,良性で悪性の染影パターンを示したり,その逆のパターンを呈することもあり,注意が必要である。良性で悪性の造影パターンを呈するのは,乳腺症,乳腺症型線維腺腫,糖尿病性乳腺症(不均一に造影),肉芽腫(不染域)などであり,悪性で良性の造影パターンを呈するものには,DCIS,LCIS(均一に造影),硬癌(造影されず)などがある。
図1は肉芽腫で,Bモード(a)では濃縮囊胞のように見えるが,造影超音波(c)では腫瘍の体表側だけが造影される不均一パターンを示した。生検を行ったところ,造影された部分は炎症性の肉芽組織で,不染域はコレステリンの結晶であることがわかった(d)。図2は,Bモード(b)で悪性,造影超音波(a)で良性,病理も良性だった症例である。Bモードでは多角形から分葉状の低エコー腫瘤で,粘液癌あるいは充実腺管癌を疑ったが,造影超音波では均一に造影され,病理では線維腺腫と診断された。
造影超音波は,通常の超音波画像と同様に組織を反映した像を呈するため,造影パターンのみによる良悪性の診断ではなく,総合的な診断を行うことが重要となる。

図1 造影超音波:良性で悪性の染影パターンを示した症例

図1 造影超音波:良性で悪性の染影パターンを示した症例

 

図2 造影超音波:US=悪性(b),造影=良性(a),病理=良性だった症例

図2 造影超音波:US=悪性(b),造影=良性(a),病理=良性だった症例

 

広がり診断(セカンドルックエコー)

次にセカンドルックエコーによる広がり診断について述べる。セカンドルックエコーは,主病変以外に初回の超音波検査で指摘のなかった病変をMRIやマンモグラフィで指摘された場合,その病変の検出を試みることである。図3は,A領域の腫瘤以外にMRI(b)で乳輪部に造影腫瘤を指摘された症例で,セカンドルックエコー(a)で8mm大の低エコー腫瘤が認められ,乳頭腺管癌と診断された。乳輪部や乳頭直下は初回の超音波検査では見落としやすく,セカンドルックで指摘されやすい領域である。

図3 セカンドルックエコー

図3 セカンドルックエコー
MRI(b)で乳輪部に造影腫瘤を指摘。セカンドルックエコー(a)でも同部位に8mm大の低エコー腫瘤を認め,乳頭腺管癌と診断された。

 

1.Fusion imaging(RVS)
セカンドルックエコーでも発見できない場合には,仰臥位で撮影したMRIとのfusion imaging(Real-time Virtual Sonography:RVS)で検索を行う。RVSは,MRI,CT,USのボリュームデータを用いて,プローブに取り付けられた磁気センサと磁気装置の位置情報をリンクさせることで,超音波画像と同一断面の再構成画像をリアルタイムに表示する方法である。当院では,RVSを行う際には仰臥位でMRIを撮像し,同じ姿勢で検査を行っている。
図4は,MRI(a)で右乳房の外側上方の腋窩に近い部分に病変が指摘され,RVS(b)で確認した。超音波のみでは指摘困難な等エコー域が描出され,針生検によって小葉癌と診断された。通常,RVSの位置合わせは乳頭を基準に行うが,病変が腋窩に近い場合など離れている場合は,腋窩動静脈や近傍の特徴的な血管で位置合わせを行う場合もある。
RVSの活用としてはそのほかに,他の疾患で撮影したCTで指摘された病変の観察(CT画像と同期)や,前回の超音波検査で指摘された病変が描出しづらい場合,前回の画像と同期する場合がある。
図5は,大腸がん術後に肺転移があり,化学療法を施行中にCTで乳腺腫瘤を指摘された症例で,CTとのRVSを行った。経験の浅い検査者であっても,RVSを利用することで自信を持って診断が可能になる。
超音波画像との同期の方法は,初回検査時にRVSモードにて,対象病変から目印となる乳頭までを一定のスピードでスキャンしてボリュームデータを収集する。次回の検査時にこのデータを呼び出し,乳頭で位置合わせをして同期を開始する。図6のように,前回検査と今回の画像が並べて表示され,同じ断面で比較が可能になる。これによって,化学療法や生検によって不明瞭となった病変の描出や,乳腺超音波検査を研修中の補助ツールとして利用可能と考えられる。病変が乳頭から遠い場合には位置合わせが難しい,観察断面が限られるなどの課題があるが,今後,4Dプローブなどを用いてデータ収集が可能になれば解決可能と考えられる。

図4 MR画像を用いたRVSによるセカンドルックエコー

図4 MR画像を用いたRVSによるセカンドルックエコー
a:MR画像 b:RVS画像 c:病理画像画像

 

図5 RVSでのCT画像との同期

図5 RVSでのCT画像との同期
大腸がん術後肺転移で加療中,CTで乳腺腫瘤を指摘され,RVSで生検を行った。

 

図6 前回検査のUSボリュームデータとのRVS

図6 前回検査のUSボリュームデータとのRVS
前回の画像と同一断面で並べて比較することで,大きさの変化などを正確に把握できる。

 

術前化学療法の効果判定と術前マーキング

術前化学療法は,2種類のレジメンを用いることが多く,1種類目終了後と2種類目終了後に超音波検査で効果判定を行う。そのほか,治療中に触診で腫瘤の増大が認められた場合や,著効して手術までに腫瘤が消失しそうな場合に,超音波ガイド下でマーキングを行うこともある。
超音波ガイド下の術前マーキングは,部分切除を行う場合に重要な役割となる。検査の際には,腕の上げ方,身体の傾きなど,実際の手術と同様の体位で行うことが重要である。従来は,プローブと体表の間にクリップなどを伸ばしたものを置いて音響陰影をつくり,これをガイドとして体表にマジックでマークを描いていた。日立製作所製のプローブ(18MHz高周波リニアプローブ)では,プローブ先端にスケールが刻まれており,そのスケールに合わせたラインが超音波画像上に表示されるため,簡単に正確なマーキングが可能になる(図7)。

図7 術前マーキングにおけるプローブのアシストライン機能の活用

図7 術前マーキングにおけるプローブのアシストライン機能の活用

 

まとめ

乳房精査施設における超音波のさまざまな機能を用いた検査を紹介した。特に,RVSを用いることでMRIやCTで指摘された病変の多くを超音波でも指摘することが可能になっており,術式の決定などQOLの向上につながっている。

 

岡山有希子(Okayama Yukiko)
2002年 大阪大学医学部保健学科検査技術科卒業,同年 静岡県立静岡がんセンター生理検査科勤務。

 

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