技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2014年9月号

Step up MRI 2014-静音化技術の動向と臨床応用

SILENT SCANの技術的特徴と今後の展望

清水 俊博(MR営業部)

“SILENT SCAN”は,2012年の北米放射線学会(RSNA)においてGEヘルスケアが発表した「世界で初めて*1,音のしない*2MRI検査」を可能とした最先端の技術である。これは騒音を小さくするのではなく,発生させないことを目的とした,これまでとはまったく異なる静音化技術である。本稿ではSILENT SCANの技術について紹介する。

■静音化技術と無音化技術SILENT SCANの違い

MRI検査における騒音は,傾斜磁場コイルに流れる大きな交流電流に起因している。この交流電流によってコイル自身がローレンツ力を受け,それが強く振動することで騒音を発生させている。
これまでには,コイルを真空層に封じ込めて騒音を抑える技術やコイルに流れる交流電流の切り替えを緩やかにして騒音を低減する技術“Acoustic Reduction Technology(ART)”が開発され製品に搭載されてきた。これはある程度の静音の効果を上げて,現在でも使用されている。しかし,SILENT SCANは,原理も静音化の効果もこれまでの技術とはまったく別物である。
SILENT SCANでは,振動の原因となっている交流電流を使用せず,直流電流をコイルに流すことで振動をなくし,スキャンしない状態(MRI検査室の環境音)と比較して,わずか3dB以下というほぼ騒音を発生させない画期的な技術である。

■SILENT SCANを構成する3つの技術

SILENT SCANは,3Dラジアル法をベースとする専用のソフトウエア“Silenz”と,傾斜磁場コイルへの安定した電流供給が可能な“高安定電源システム”,ゼロエコー時間(以下,TE)を実現可能な超高速RFスイッチングを搭載した“RFコイル技術”の3つの技術で成り立っている(図1)。
図2は,上段が一般的な3D撮像法,下段がSILENT SCAN(Silenz)のシーケンスチャートである。通常の3D撮像法では,傾斜磁場コイルに交流電流を流してからCartesian型にk-spaceを充填するのに対して,Silenzでは傾斜磁場コイルに直流電流を流しながら,まるでウニのような3Dラジアル型にk-spaceの原点から外側へ放射状にデータを充填し,その後各種処理を行って画像化している。
また,SILENT SCANは音がしない以外に,もう一つ大きな特長がある。それはTEがほぼゼロとなる点である。図2に示すように,通常の撮像法ではTEが数msかかるのに対して,SILENT SCANでは非常に短いRFパルスの励起後,すぐに信号のサンプリングを開始し,k-spaceの原点からデータを埋めていくため,TEは実質ゼロとなる。このゼロTE技術により,SILENT SCANのMRアンギオグラフィ(以下,SILENT MRA)では,血流によるボクセル内の位相分散や磁化率のアーチファクトの影響を抑えることができる。SILENT MRAの臨床応用については,「DV24アプリケーションの臨床応用」において紹介しているので,ぜひご参照いただきたい

図1 SILENT SCANを構成する技術

図1 SILENT SCANを構成する技術

 

図2 シーケンスチャートの比較

図2 シーケンスチャートの比較

 

■今後の展望

SILENT SCANは,現在*330以上の施設にて稼働しており,小児ルーチン検査への適応やSILENT MRAの積極的な活用など,各施設における臨床検査の特色に合わせて役立てられている。
今後は撮像機能の拡張や他製品への搭載など,さらなる臨床検査におけるSILENT SCANの普及をめざしている。

*1:2013年10月調査
*2:環境音+3dB以下
*3:2014年7月現在

Discovery MR750w 3.0T
医療機器認証番号:223ACBZX00061000
販売名:ディスカバリーMR750w
Optima MR450w 1.5T
医療機器認証番号:223ACBZX00032000
販売名:オプティマMR450w

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