技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2014年4月号

Head & Neck Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

頭部・頭頸部領域でのアプリケーション

内海 一行(MRセールス&マーケティング部)

本稿では,近年のGE社製MRIの頭部,頭頸部領域における製品レベルでの話題について,アプリケーションを中心に概説する。

■FOCUS

図1 FOCUS(局所励起)の概略

図1 FOCUS(局所励起)の概略

“FOCUS”は,2D RF Excitationを利用した局所励起技術である。局所励起においては,撮像対象の任意の部分だけを励起し撮像領域とすることができる(図1)。これにより,撮像領域を絞って撮像した際,その外側に被写体が(たとえ位相方向に)あったとしても画像の折り返しは起こらない。FOCUSは,DWIやDTI撮像と併用され,そのメリットを発揮する。DWIやDTIで使用されるEPIでは,Ky方向にデータを収集するスピードが画像の歪みに影響する。FOCUSではこれを高めることが可能なため,従来よりも低歪みなDWI,DTI撮像が可能となる。また,パラメーターの設定次第では,従来よりも高空間分解能な撮像を行うことも可能である(図2)。FOCUSは撮像領域を選ばないため,脊髄や脳幹部をはじめ,体幹部を含めて臨床応用が期待される。なお,FOCUSは3T装置のみならず,1.5T装置(Optima MR450w)にも搭載することが可能である。

図2 FOCUSの画像例 DWIの撮像時間は3〜4分

図2 FOCUSの画像例
DWIの撮像時間は3〜4分

 

■SILENT SCAN

近年,3T装置の臨床への普及は目覚ましく,さまざまな領域で3Tのメリットを活用可能となった。一方,3T装置は1.5T装置に比べて傾斜磁場コイルにかかるローレンツ力が大きく,MRIの弱点の1つと言える撮像音「グラディエントノイズ」は増加傾向にある。ここで,2012年のRSNAでGEが発表した“SILENT SCAN”は,その撮像音を消し去り(環境音+3dB以下),まさにSILENTと呼ぶにふさわしい検査環境を提供する技術として大きな話題となった。2013年後半からは臨床装置へのSILENT SCANの搭載が始まり,実際に使用開始された施設からは,その技術に対して驚きの声をいただいている。
SILENT SCANの最大のハイライトは,Silenzと呼ぶ特殊なデータ収集方式である。今まで生体から収集するMR信号に位置情報を付加している傾斜磁場は,短時間にプラス・マイナスの切り換えを行っており,これが100〜3000Hzの周波数帯域の大きな撮像音を生み出している。Silenzでは,この傾斜磁場の切り換えを必要とせずにデータを収集し画像化に成功した。例えて言えば,今までの撮像法は傾斜磁場コイルに交流様の電流を流し傾斜磁場を頻回に切り替えてのデータ収集,Silenzは直流様の電流を流しほぼ一定の傾斜磁場を用いてのデータ収集を行っており,これが直接静音化につながっている。Silenzを可能としたのは,ハードウエア的には傾斜磁場コイルに安定した電流を継続して供給できる新設計の電源系と,RFコイルを送信状態から受信状態へきわめて短時間にスイッチする“Ultra-fast RF switching”である(図3)。これに特殊なパルスシーケンスと画像再構成のソフトウエア技術が加わる。撮像の静音化は,SilenzにとどまらずPROPELLERの改良型シーケンスなど複合的に開発を進め,検査全体の静音化に取り組んでいる(図4)。
現在,SILENT SCANの実臨床での適応が始まり,小児領域での有用性が検討されている。今後このSILENT SCANがさまざまな患者にとってより優しい検査を実現することを期待したい。

図3 SILENT SCANの要素技術 Silenz:ハード&ソフト技術の融合

図3 SILENT SCANの要素技術
Silenz:ハード&ソフト技術の融合

 

図4 SILENT SCANを用いた快適な検査

図4 SILENT SCANを用いた快適な検査

 

■3D ASL

3D ASLは,造影剤を使用しない非侵襲的なパフュージョンイメージングである。すでに国内においても1.5T,3T装置含め,200以上の臨床・研究施設での稼働実績をいただいている。3D ASLは,pCASLと呼ばれる連続波(RF)を用いた血流のラベリング,巧みに計算されたバックグラウンドサプレッション,スパイラル状の3D FSEを用いたリードアウトといった独自技術を採用し,高いSNR,再現性が高く安定した画質,脳底部における歪みの少なさ,何より簡便であるといった点で,臨床で使いやすいアプリケーションとなっている(図5)。PLD(Post Labeling Delay)の正しい選択と解釈など,3D ASLの特性を押さえた上で,今後も臨床ツールとして定着し,さらに発展していくことが期待される。

図5 3D ASLのシェーマ

図5 3D ASLのシェーマ

 

■3D PROMO

図6 3D PROMOのSpiral Navigator アキシャル,コロナル,サジタルのスキャンで三次元の動きを検出。

図6 3D PROMOのSpiral Navigator
アキシャル,コロナル,サジタルのスキャンで三次元の動きを検出。

生体の「動き補正」に“3D PROMO”という新技術が加わった。すでに普及している動き補正技術PROPELLERは,2D FSEによるRadial収集であり,レトロスペクティブに被写体の動きの補正を行う技法であった。今回開発された3D PROMOは,Cubeにおけるプロスペクティブな動きの補正技術である。Cubeをはじめとする3Dスキャンは,高い空間分解能を有するが,撮像時間が2Dスキャンに比べて長く,その間の被写体の動きはアーチファクトとなって画質を低下させる。このアーチファクトを低減するために,3D PROMOでは,Cubeのデータ収集の前に短時間のスパイラルスキャンをアキシャル,コロナル,サジタルで走らせて,三次元的な被写体の回転,並進運動を検出する(図6)。ここで得られた被写体の動きから,次に行われるCubeのデータ収集時の被写体の動きを予測し,それに合わせた傾斜磁場を印加して実際のデータ収集が行われる。データ収集後,次のスパイラルスキャンが続くが,ここでは被写体の動きが予測した通りだったかどうか検証される。予測値と大きく異なっていた場合は,収集したデータは使用されずに再収集を行う。この,動きの検証に使用されたスパイラルスキャンのデータは,その次のCubeのデータ収集の動きの予測にも使用される。図7は,Cube FLAIRにおける通常撮像と3D PROMOを用いた比較例である。

図7 3D PROMO適用例 通常のCube FLAIRとの比較:Optima MR450w 1.5Tにて▲部分の小さな病変まで明瞭にとらえる。

図7 3D PROMO適用例
通常のCube FLAIRとの比較:Optima MR450w 1.5Tにて▲部分の小さな病変まで明瞭にとらえる。

 

 

代表的な4つのアプリケーションについて概説させていただいた。すべてのアプリケーションは,「診断精度の向上」「患者さんの快適性の向上」,また本稿では触れることがなかったが「検査効率の向上」というGEの開発コンセプトに基づいたものである。
最後に,文中のSILENT SCANに関しては誌面ではお伝えしづらいので,ぜひ,弊社のWebやYouTubeでの動画コンテンツ(SILENT SCAN,JAPANでのキーワード検索)で実際の音の違いを体感いただければ幸いである。

 

*ディスカバリーMR750 医療機器認証番号:221ACBZX00095000
*ディスカバリーMR750w 医療機器認証番号:223ACBZX00061000
*オプティマMR450w 医療機器認証番号:223ACBZX00032000

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
MRセールス&マーケティング部
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:042-585-9360
www.gehealthcare.co.jp

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