技術解説(富士フイルム)

2018年7月号

FUJIFILM TECH FILE 2018

1回のX線撮影で骨粗鬆症診断に必要な画像を取得可能! 〜デジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Dual」の開発

河西 将範(富士フイルム株式会社メディカルシステム事業部)

はじめに

骨粗鬆症は,骨の強度が弱くなり,骨折リスクが高まる病気である。近年の高齢化に伴って,国内の骨粗鬆症患者数は増加しているが,治療を受けている患者は,その20%程度しかいないといわれている。骨粗鬆症患者の早期発見はQOL(Quality Of Life)の向上につながるため,取り組むべき課題の一つと考える。骨粗鬆症の診断では,骨の形状を確認するための一般X線撮影に加えて,DXA法*1による腰椎および大腿骨の骨密度測定が推奨されている*2。現在,一般X線撮影と骨密度測定は,別の装置で行われるため,被検者は装置間を移動しなければならず,また骨密度測定の際に位置決め(以下,ポジショニング)をし直し,その体勢を数十秒間維持する必要がある。
本稿では,一般X線撮影とDXA法による骨密度測定の機能を持つデジタルX線画像診断装置「FUJIFILM DR CALNEO Dual(カルネオ デュアル)」(以下,CALNEO Dual)の特長を紹介する。

1回の一般X線撮影で「質」の異なる2種類のX線を検出可能

今までのDRパネルは,X線の“量”を検出し画像化を行っているが,本来のX線情報にはX線の“質”がある。この“質”はX線の持つエネルギー分布に依存し,“質”すなわちX線エネルギー分布の異なる2種類のX線から得た画像を利用することで,骨強調画像と軟部組織画像に分離するエネルギーサブトラクション(以下,ES)技術や,骨密度を測定するDXA法のアプリケーション機能を実現できる。しかし,従来のDRパネルではX線の“量”情報しか集めることができなかったため,このようなアプリケーションの実現には,X線のエネルギー分布を変えて2回の撮影が必要となり,被検者の体動や被ばく量に課題があった。
今回,厚さ16mmの17インチサイズカセッテDRの中に,特性が異なるX線検出部を2つ重ねた構造を採用し,エネルギー分布の異なる2つのX線画像を1回のX線撮影のみによって取得し,ES技術やDXA法の実現を可能としたCALNEO Dualを開発した(図1)。立位,臥位撮影台に挿入可能なカセッテサイズ(17×17インチ,厚み16mm)の中に納められた2種類のX線検出部には,CALNEOシリーズに搭載されているISS方式*3のほかに,X線を低ノイズで検出することを可能とした電気回路を搭載している。これにより,CALNEO Smart Cシリーズと同等のX線変換効率を実現した。

図1 CALNEO Dualの構造

図1 CALNEO Dualの構造

 

1回の一般X線撮影で骨強調画像と軟部組織画像を取得可能,適用部位も拡大

2つのX線検出部を用いることにより,従来の一般X線撮影と同等線量の1回の撮影のみでES技術を適用でき,骨強調画像と軟部組織画像を分離することが可能になった。
ES技術は,今まで主に肺がんの結節や石灰化の検出に有効であるとされてきたが,椎体などの骨領域では,撮影時に体内で発生する散乱線によってコントラストが下がり,骨の形状などが観察しづらいという課題があった。
CALNEO Dualは,当社がX線のデジタル化において長年にわたり培ってきた,撮影時に生じる散乱線の影響を低減する技術や,粒状性の悪化を抑制しながらコントラストを高める技術などを適用し,骨組織の分離精度を高めることで,鮮明な骨強調画像を提供する(図2)。今後,CALNEO DualのES技術が,胸部撮影に加え,胸椎,腰椎などの撮影にも使われることを期待する。

図2 CALNEO Dualで撮影,分離した画像(腰椎正面)

図2 CALNEO Dualで撮影,分離した画像(腰椎正面)

 

一般X線撮影装置でDXA法による骨密度測定を実現し,撮影ワークフローを大幅に改善

骨密度測定の専用装置では,散乱線の影響を避けるため,照射領域をスリット状に絞り,X線の照射とスキャンを繰り返して撮影する。撮影には数十秒間を要し,その間,体動が生じないように被検者は同じ体勢を維持しなければならない。
CALNEO Dualは,一般X線撮影と同様に,測定領域に対して各部位にX線を面状に1回照射するだけで,骨密度測定用の画像を取得できるため,撮影時間の短縮や被検者の身体的負荷軽減に貢献する。また,一般X線撮影装置で一般X線画像の撮影とDXA法による骨密度測定ができるため,装置間の移動が不要になるとともに,ポジショニング回数を減らすことができる(図3)。

図3 CALNEO Dualがもたらす撮影ワークフローの改善

図3 CALNEO Dualがもたらす撮影ワークフローの改善

 

一般X線撮影と骨密度測定を1台のコンソールで制御

一般X線撮影用のコンソールに骨密度測定機能を搭載することにより,検査オーダの入力から一般X線撮影と骨密度測定まで同一のコンソールで実施できる(図4)。また,骨密度測定には,一般撮影と共通の画像処理である画像拡大機能や白黒反転機能なども使用できる。操作手順をガイドする機能を搭載しているため,検査業務をサポートできる。

図4 骨密度測定の操作画面

図4 骨密度測定の操作画面

 

おわりに

CALNEO Dualが骨粗鬆症の検査を効率化し,被検者の身体的負担を軽減することを期待している。富士フイルムは,今後もさまざまな医療現場のニーズに先進・独自の技術をもってお応えし,さらなる画像診断の効率化と医療の質の向上に貢献していく。

*1 Dual Energy X-ray Absorptiometry法の略称。エネルギー特性の異なる2種類のX線情報を用いて骨密度を測定する方法。
*2 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より。
*3  ISS(Irradiation Side Sampling)方式。従来型のカセッテDRと反対側のX線入射面側にセンサーを配置し,X線の入射面側よりX線から変換された光信号を読み取る方式。

商標について
・本報告中にある「CALNEO Dual」「CALNEO Smart C」は,富士フイルム(株)の商標または登録商標です。
・その他,本報告書で使われているシステム・製品名は,一般的に各社の商標または登録商標です。

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