技術解説(富士フイルム)

2017年7月号

FUJIFILM TECH FILE 2017

SYNAPSE VINCENT Ver.5における新機能

大島 俊介(富士フイルムメディカル株式会社 ITソリューション事業本部 事業推進部 3D営業技術グループ)

はじめに

三次元画像解析ワークステーション「SYNAPSE VINCENT」(VINCENT)は2008年に販売を開始した。富士フイルムのデジタルカメラの顔認識技術に利用されている“Image Intelligence”技術を用いた高速・高精度な画像処理アルゴリズムによる骨除去を代表とする臓器抽出機能や,消化器,循環器向け解析アプリケーションから開発,販売をスタート。同時接続数の増加を目的としたアプリケーションサーバのクラスター化や,呼吸器,泌尿器,頭頸部領域の解析アプリケーションの搭載など,日々変化する市場動向を注視しながらさまざまな機能を追加してきた。
富士フイルムメディカルでは,2017年4月14日〜16日に開催された国際医用画像総合展(ITEM2017)でVINCENT Ver.5を展示したが,本バージョンでは主に放射線科,整形外科領域における解析アプリケーションの追加,およびMRIに対する機能拡張を行っている。本稿では,これらの新機能に搭載されている技術について紹介する。

IVRシミュレータ(CT用アプリケーション)(W.I.P.)

肝動脈化学塞栓療法(Transcatheter Arterial ChemoEmbolization:TACE)に代表されるようなInterventional Radiology(IVR)手技前に,治療対象となる腫瘍への栄養血管の解剖学的位置,また栄養血管の本数を同定することは,IVR手技中の造影剤投与量,被ばく線量の低減に効果的であると言われる。VINCENT Ver.5で搭載した“IVRシミュレータ”では,造影CT画像から疑似透視画像を作成し,腫瘍の半自動抽出,栄養血管の自動,手動抽出を行うことで,IVRの手技に必要な情報を表示する(図1)。

図1 IVRシミュレータで早期動脈相のCT画像から肝腫瘍に

図1 IVRシミュレータで早期動脈相のCT画像から肝腫瘍に
到達する栄養血管をシミュレーションした画像例
造影効果の高い脈管領域を自動,半自動で抽出し,複数の栄養血管の同定や塞栓対象となる血管を明瞭に観察できる最適なX線管球角度(ワーキングアングル)を手動で設定する。IVRシミュレータを用いることで,従来の血管造影単独で行われるIVRと比較し低被ばく,少ない造影剤量でマイクロカテーテルの先端を進めることができる。

 

膝関節解析(MRI用アプリケーション)(W.I.P.)

膝関節における外傷性軟骨欠損症,または離断性骨軟骨炎を適応症例とした自家培養軟骨移植術が,2013年から保険適用となった。保険適用条件の一つとして“軟骨の欠損領域が4cm2以上”であることが挙げられているが,現状では関節鏡を患部に挿入し患部の状態を確認しながら欠損領域を計測する必要がある。
VINCENT Ver.5で搭載した“膝関節解析”では,本症例の患者に対し撮像された三次元T2強調画像,プロトン密度強調画像から,半自動的に大腿骨,大腿骨側軟骨,半月板,脛骨,脛骨側軟骨を抽出し,軟骨領域の定量評価を行える(図2)。
VINCENTの膝関節解析が内視鏡検査における患者負担を軽減させ,膝軟骨において多くの再生医療現場で活用できればと考えている。

図2 膝関節解析の画面例

図2 膝関節解析の画面例
a:軟骨厚み表示(赤色を呈するほど軟骨厚が薄い)
b:欠損領域の計測結果。異なる検査日の結果を比較して観察できる。

 

4Dフロー(MRI用アプリケーション)(W.I.P.)

心血管領域では,従来の2D Phase Contrast法を用いた平面の血流解析に加え,3D Phase Contrast法で収集された画像を解析し,血液の逆流,心臓内のシャントの有無,側副血行路の同定などに研究目的として利用されることがある1)。VINCENT Ver.5で搭載した“4Dフロー”では,3D Phase Contrast法を複数の時相で撮像した画像を用いて,四次元の血流情報の可視化を行える(図3)。

図3 4Dフローの画面例(左から右へ再生)

図3 4Dフローの画面例(左から右へ再生)
VINCENTクライアント上で血流情報を再生して観察できる。流速は疑似カラーで確認できるようになっている。

 

RTアシスト(CT,RT,PT,MRI用解析アプリケーション)(W.I.P.)

さまざまな施設で,汎用・解析アプリケーション(頭頸部,胸部,循環器,消化器領域など)に搭載されている臓器抽出機能を利用し,術前シミュレーション用画像の作成が行われている。VINCENT Ver.5では,この長年培ってきた臓器抽出機能を,放射線治療計画情報の作成に必要なリスク臓器(Organ At Risk:OAR)の輪郭作成へ応用した“RTアシスト”を開発した。
頭頸部,胸部領域の治療計画を作成する時に必要なOARを,VINCENTのプリセット機能から1クリックで作成できる。また,放射線治療後の外科的手術時に術前カンファレンス,患者へのインフォームドコンセント目的で線量分布図の観察,Dose Volume Histogram(DVH)の作成機能も搭載している(図4)。

図4 RTアシストの画面例

図4 RTアシストの画面例
a:VINCENTのプリセット機能を利用して1クリックで体表,心臓,気管支(気道),肺,脊髄のマスク領域を自動抽出後,OARを作成した例。作成したOARはRT-Structure Setとして放射線治療計画システムへストレージする。
b:線量分布図の一覧表示例。複数照射したおのおのの線量分布図を院内のVINCENTクライアントで閲覧できる。また,異なる照射日時の検査を剛体,非剛体位置合わせした積算線量分布図の閲覧も可能である。
c:DVH例。OAR(RT-Structure Set),線量分布図(RT-Dose)からDVHを作成し,院内カンファレンスなどでOAR,GTVなどに投与された積算線量などを相対値として表示する。

 

MRI関連の機能拡張(W.I.P.)

前述した各種解析アプリケーションの追加に加え,既存のアプリケーションに対し,MRI関連の機能拡張を行っている。3Dビューワに搭載している脳実質抽出に内頸動脈を含めた抽出を行う機能(図5),乳腺解析(図6),開頭シミュレータ/テンソル解析にMRI腫瘍の半自動抽出機能などを追加している。

図5 MRA自動抽出結果例

図5 MRA自動抽出結果例
異なるメーカーのMRI装置においても,頭部MRA画像(4症例)に対しウイリス動脈輪を中心とした抽出を行うことができる。また,マクロ機能から1クリックで血管領域を含む抽出,MIPレンダリングの表示まで行うことができる。

 

図6 乳腺解析の腫瘍抽出例

図6 乳腺解析の腫瘍抽出例
腫瘍の長径を指定することで三次元抽出を行う。腫瘍の体積,Fast- Washoutなど造影パターンを比率として算出する。

 

おわりに

VINCENT Ver.5では,放射線科領域やMRI関連の機能の改良を主に行っている。今後も市場動向を注視し,患者に有益なアプリケーションを医療現場に提供し続けていきたい。

●参考文献
1) Dyverfeldt, P., et al.:4D flow cardiovascular magnetic resonance consensus statement. J. Cardiovasc. Magn. Reson., 17, 72, 2015.

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