技術解説(富士フイルム)

2016年3月号

US Today 2016

院内感染リスクの低減を考慮した“ものづくり”

山崎 延夫(富士フイルムメディカル(株)内視鏡・超音波事業本部)

2007(平成19)年4月に施行された改正医療法により,院内感染対策がすべての医療施設にとって法的順守事項に位置づけられた。一方で,医療機器を介した感染事例の報告は絶えない。当社は医療機器メーカーの使命として,医療機器および機器の操作者を介しての感染リスクの低減を考慮した“ものづくり”を追究している。

■操作部に全面タッチパネルを採用した超音波画像診断装置

医療機器の操作部にキーボードやボタン,トラックボールなどを配置することは,操作をしやすくするために必要とされる一方で,操作部にできる凹凸や隙間は機器の清掃・消毒・滅菌の妨げとなり,時として感染のリスクにさらされることがある。
富士フイルムソノサイト社製ハイエンド超音波画像診断装置「X-Porte(エクス-ポルテ)」(図1)は,操作部を全面タッチパネルにし,キーボードやボタン操作を一切排除した。スワイプ,フリック,ピンチなどマルチタッチジェスチャを採用。ナビゲーションに従って画面を指先で操作するだけで患者情報の入力,走査モードの選択などの操作を,ハードボタンやトラックボールがなくても簡単に行うことができる。さらに,メニュー画面のレイアウトを使いやすいようにカスタマイズすることもでき,診断の効率化が期待できる。
操作部は一枚ガラスで覆われ,清掃がしやすく機器内部に液体が侵入する心配もない構造になっている。さらに,操作部にカバーをかけた上から,手袋を装着したままでも操作が可能で,清潔野に機器を置くことができる。
X-Porteは機器を介した感染リスクの低減を追究した超音波画像診断装置である。

図1 全面タッチパネルを採用した超音波画像診断装置X-Porte

図1 全面タッチパネルを採用した超音波画像診断装置X-Porte

 

■世界初の銀系抗菌剤を配合して抗菌性能を付加した超音波検査用ゼリー

超音波検査用ゼリーを介した細菌の感染を防ぐため,ゼリーを体に塗布する際に,容器を肌に接触させないことや,検査後のプローブに付いたゼリーをよく拭き取ることが必要である。また,一般的な超音波検査用ゼリーは,ゼリー内の細菌の増殖が抑えられるように防腐剤を配合している。しかし,近年の研究では,防腐剤が配合されていても,細菌がゼリーの中で一定期間生き続けることが報告されている。
「F JELLY PLUS(エフ ジェリー プラス)」は,富士フイルムが写真フィルムで培った,銀に関する知見を生かし,世界で初めて,銀系抗菌剤を配合して抗菌性能を付加した超音波検査用ゼリーである。本製品は,防腐剤と抗菌剤をバランス良く配合することで,多種類の細菌に対して高い抗菌性能を発揮することができる。ゼリーが細菌に接触しても,30分で細菌を99.99%以上減少させることを確認した(図2)。万が一,本製品の容器内に細菌が入ってしまった場合や,拭き残してしまったプローブ上のゼリーに細菌がついている場合でも,抗菌性能を発揮することで,超音波検査用ゼリーを介した院内感染のリスク低減が期待できる。
また,超音波検査用ゼリーは直接肌に触れるものであり,化粧品と共通の成分が多く使われている。富士フイルムが化粧品の開発で培った知見を生かして,超音波検査用ゼリーに求められる使用感をゼロから見直し,拭き取り後にべたつかない処方を検討。富士フイルムの化粧品にも配合実績がある,保水力が高い浸透性コラーゲンを配合しながら,保湿剤の配合量を必要最小限に抑え,拭き取り後のべたつきを低減した。ゼリーの伸びやすさや,プローブを走査した際の潤滑性といった基本性能も備えている。

図2 超音波検査用ゼリーF JELLY PLUSの抗菌性能

図2 超音波検査用ゼリーF JELLY PLUSの抗菌性能

 

*一般的名称:汎用超音波画像診断装置(40761000)
医療機器のクラス:管理医療機器,特定保守管理医療機器
販売名:SonoSite X-Porteシリーズ
医療機器認証番号:225ADBZI00146000

 

【問い合わせ先】
マーケティング部
TEL 03-6419-8033
URL http://fms.fujifilm.co.jp

TOP