FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来

2015.7.18 in 浜松 講演『CRからFPDへの導入経験と物理的評価』より

CALNEO Goの運用とFPD撮影を考慮したRIS 連携の最適化

名倉義和(聖隷三方原病院画像診断部)

聖隷三方原病院は,病床数934床,救急外来患者数68 人/日,ドクターヘリ出動数477件/年を誇り,2015年3月には静岡県により県内初となる高度救命救急センターの指定を受けた。これに伴い,画像診断部では,従来の一般撮影・TV部門,Angio・CT部門,MRI部門などに加え救急部門が発足。同年4 月には救急室用にポータブルX 線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO Go」,5月には病棟でのポータブル撮影用に「FUJIFILM DR CALNEO flex」2式(「FUJIFILM DR CALNEO Smart C47」2枚,「FUJIFILM DR CALNEO C mini Wireless SQ」1枚)を導入し運用を開始した。

RIS 連携の変更

病棟へのCALNEO flexとFPDの導入に伴い,放射線情報システム(RIS)の仕様をDR向けに一部変更した。CRでは,病棟撮影から戻り,RIS 端末でCRカセッテごとに「検査開始」を押し,CRコンソール上からMWM で患者・オーダ情報を取得後,画像を読み取り,「検査終了」とする流れとなる。一方,CALNEO flexでは,撮影前にコンソール上でMWM 接続で患者・オーダ情報を取得する必要がある。そのため,CR運用向けのRIS 仕様では複数検査を登録するためには「検査開始」と「検査保留」を繰り返す必要があり,1日50 件以上のポータブル撮影を行う当院では業務効率が低下する。そこで,以下のような流れとした。まず,CALNEO flex (No.1,2)専用の2台のRIS端末からそれぞれの検査(A,B…)を受付し,この段階でRISサーバに検査予約が入るようにした。病棟での撮影時には各コンソールからMWMを介して検査情報を取得できるようになる(図1)。この仕様の変更により,病棟から検査情報の取得,画像の送信が簡便にできるようになり,大幅に検査効率が向上した。

図1 CALNEO flex 2台でのRIS連携

図1 CALNEO flex 2台でのRIS連携

 

CALNEO Goの導入・使用経験

一体型の移動型デジタルX線撮影装置のCALNEO Goは,当院では救急室(ER)に導入し,CRカセッテに代わり初療室での高エネルギー外傷などの撮影に使用している。図2はERの構成図だが,初療室を中心に高精細モニタを組み合わせた端末を設置し,検査オーダと画像参照が可能な環境を整えている。
CALNEO Goは,MWM接続による患者情報やオーダ情報の取得に加えて,APRコード(後述)による撮影条件の設定が可能な仕様を備えている。本体に液晶モニタがあり撮影したその場で画像参照が可能で,撮影後はLANポートに接続して画像を自動的にPACSへ送信できる。また,胸部,腹部撮影にVirtual Gridを使用することで,撮影効率が大幅に向上した。これらのワークフローの改善によってスループットが向上し,迅速な救命処置につながり救急科医師からの評価も非常に高い。
当院では,RIS撮影コードごとの撮影マスタ作成の際に,APR(Anatomical Programming)コードを入力した。MWM接続で患者・オーダ情報を取得し,RIS撮影コードにひも付けされた撮影メニューが選択されると,そのAPRコードを用いてマスタで入力した撮影条件が自動的に選択されセットされる。これによって,検査ごとに撮影条件を設定することなく迅速な撮影が可能で,適正な撮影条件での撮影が可能になっている。

図2 救急室(ER)におけるシステム構成

図2 救急室(ER)におけるシステム構成

 

症例提示:コードブルーへの対応

救急科医師からの依頼で,容態が急変しバイタルが低下した患者の気管挿管の際に,位置確認のために行った胸部ポータブル撮影のシーンを紹介する。撮影して画像確認後,救急科医師から「挿管位置が深いため,後ほどICU からオーダを追加する」との指示があったが,「挿管位置を変更後に再撮影がすぐに可能です」と伝えてFPDを抜かずに再撮影を行い,挿管が完了した。
このように急変時や緊急事態において,CALNEO flexの撮影後すぐに画像確認ができる即時性は,一段階早く処置・治療に移ることを可能とし,患者の救命に大きく貢献している。

まとめ

救急室(ER),病棟にてCALNEO flexとCALNEO Goでの運用を開始したことで,業務効率が向上し,医師の声に応える成果を上げ,日常業務において安定稼働を続けている。なお,CALNEO Smartには,内蔵メモリに100枚の画像保存が可能な“メモリモード撮影機能”が搭載されているが,当院ではその運用法をまだ確立していないため,今後も継続して機器の性能・機能を最大限に生かす運用を検証していきたい。

 

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