FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来

2015.7.4 in 釧路 講演『FPD導入における期待と効果』より

EIによる線量管理と被ばく低減の取り組み

遠藤祐孝(釧路赤十字病院放射線科部)

釧路赤十字病院(診療科19科,病床数489床)では,「FUJIFILM DR CALNEO flex」と,「FUJIFILM DR CALNEO C 1417 Wireless」,「FUJIFILM DR CALNEO C mini Wireless SQ」の2枚のFPDに,「Console Advance」が導入されている。手術室の撮影に先行導入したところ,画像確認までの時間が大幅に短縮し,業務効率アップに貢献している。画像の表示までが9秒程度と,IPに比較し1/5〜1/6短縮されていることがその理由であり,一般撮影における検査時間の短縮にもつながっている。
1検査にかかる時間をIPとFPDで比較すると,利用開始直後でも約19%短縮されており,ここで得られた時間を撮影後の画像確認・調整,また,患者応対に充当することで,より質の高い検査へとつながっている。

EI値を利用した適正線量管理の取り組み

FPD導入後,従来より30%以上線量を下げた撮影条件での検査が可能になっているが,その効果を継続的かつ安定的に保つためには線量管理が重要である。
今回,Console AdvanceでExposure Index(EI)の取得が可能になったことから,EIによる適正線量管理に取り組んだ。EIは,被写体透過後の検出器への到達線量の指標であり,被写体の被ばく線量を直接表すものではないが,線量の過多や過少を把握する1つの指標として利用できる。
EIT(Target Exposure Index)を決めるために,一定期間試験運用を行い実績値から求める方法を採用した。2015年4〜5月の1か月間,腰椎領域(正面,側面,斜位)を対象にCALNEO C 1417を使用して,メーカー公称の30%減の線量を目標として,初期データの収集を行った。DICOM画像から必要なタグ情報を抽出するために,フリーソフトウエアの“YAKAMI DICOMツール集 ver1.4.5.0. Table Maker”(京都大学大学院医学研究科放射線医学講座・八上全弘氏作成)を使用した。取得したデータからヒストグラムを作成して分布を確認し(図1),EIの中央値を求め,画像に問題がないか確認した上で,EITとして設定した。この撮影条件で3週間データを収集し,四分位数を用いて初期データと比較したところ,EIの中央値に大きな変化は見られず,この時点においてのEITには妥当性があると考えられた。ただし,診療放射線技師による画像の目視確認では,EITよりやや低い値でも支障なしとの意見もあった。また,線量の過不足が自身の印象と同様に数値に表れるとの意見もあり,今後,指標として受け入れやすいEIを利用した線量管理について,対象部位を増やしていくことが課題と考えている。

図1 EI値のヒストグラム

図1 EI値のヒストグラム

 

EI値を利用した被ばく低減効果の判定

さらに,今回のデータを基にして,線量低減の効果を確認した。EI値の四分位数のQ1からQ3を理想の範囲とし,この範囲で使用された撮影条件を再度四分位数として抽出した(図2)。経験上,患者の体型は最小値が小柄,最大値が大柄と判断され,q1からq3の範囲はおおよそ標準体型であると考えられる。標準体型の腰椎正面におけるIPでの撮影条件は100msと設定していることから,FPDでの中央値82msおよび平均値92msは,線量の低減効果の値だと推察できる。このことからFPDによって10〜20%の被ばく低減効果が得られていると考えられた。
目標とした30%に満たなかった理由としては,IPと混在した運用のため,業務の流れによって撮影条件の使い分けが困難な場合があったことが考えられる。限定的にFPDを使う撮影室を固定した運用を行ったところ,期間内で30%を達成することが可能であった。また,前述の目視確認でのEIT値のぶれもこれに相当すると考えられる。一方,FPDを特定の撮影室のみで使用することは,その特徴を損なう場合もあることから,IPとの混在環境での適切な運用を検討しているところである。
EIを利用した線量管理は,被ばく低減,画質の向上の両方に安定的な効果をもたらす重要なツールであり,患者利益に対する保証でもある。したがって,その利益を損なわないために,継続した線量管理が必要と考えられる。
FPDに期待された,“時間短縮”“被ばく低減”“画質向上”は,確実な導入効果を実感しており,EI値の利用を含め今後さらなるFPDの活用を図っていきたいと考える。

図2 EI値四分位数からの被ばく低減効果の判定

図2 EI値四分位数からの被ばく低減効果の判定

 

*EI・DI・EIT値取得のために設定を一部改変

 

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