FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015 Report デジタル画像処理技術がもたらす未来

富士フイルムメディカル株式会社では,創立50周年記念イベントとして全国各地で「FUJIFILM MEDICAL SEMINAR 2015」を開催した。2015年8月7日(金)には,大阪市北区のブリーゼプラザ小ホールで,“一般撮影システムの更なる飛躍に向かって”が行われ,中前光弘氏(奈良県立医科大学附属病院中央放射線部)がVirtual Gridの技術的特性について講演した。

2015.8.7 in 大阪

究極の画像処理Virtual Grid 〜その全貌を解明する〜

中前光弘(奈良県立医科大学附属病院中央放射線部)

当院では2014年7月,グリッドレスでも高コントラストな画像の撮影を可能とする富士フイルムメディカルの新画像処理ソフトウエア“Virtual Grid”を一足早く導入し,積極的に使用している。本講演では,その技術的特性についての検証結果を報告する。

Virtual Gridの特長

Virtual Gridは,同社独自の“散乱線推定技術”と粒状性成分を抑える画像処理技術によって,画質の向上と線量低減を可能にする(図1)。Virtual Gridでは,Console Advanceのメンテナンスモードで,撮影管電圧(kV),撮影線量(mAs),撮影距離(cm)を事前に設定することが必要である。パラメータの設定では,グリッド比(3:1,6:1,8:1,10:1)を選択できるほか,密度や中間物質などきめの細かい選択が可能になっている。

 

 

図2は,グリッドなし(NoGd)とVirtual Grid(ViGd,グリッド比10:1相当)で撮影した胸部ファントム画像の比較であるが,ViGdの方が高いコントラストを得られている。また,ViGdのグリッド比を変化させてプロファイルカーブを比較したところ,グリッド比が大きいほど散乱線除去効果も大きくなった。

 

 

検証1:Virtual Gridの基礎特性

ViGdの基礎特性について,人体ファントムを用いて検討を行った。NoGd, ViGd,グリッドあり(Gd)での画像を取得し,それぞれについてS値(濃度補正値),L値(ラチチュード),Exposure Index(EI)を比較した。さらに,画素値を相対値で比較するため,S値=約250,L値=約3(固定)とし,画素値総和(画像全体の画素値の総和)とNMSE(normalization mean square error)を算出した。NMSEとは,基準画像に対する評価画像の平均二乗誤差(MSE)を正規化したものであり,0に近づくほど基準画像と評価画像の差がないことを示す。

1.S値,EI,L値の比較
NoGd,ViGd 3:1,ViGd 6:1,Gd 3:1,Gd 6:1について,mAs値を変化させてS値の変化を見たところ,いずれもmAs値の上昇に伴いS値は低下していた。グリッド比が高いほどS値は高く,ViGdとGdの3:1および6:1はそれぞれほぼ同じ値を示し,NoGdが最も低かった。
EIは検出器の到達線量を反映しているため,mAs値の上昇に伴いEIも上昇する。Gd6:1が最も低く,Gd3:1,NoGdの順で高くなった。なお,NoGdとViGdは元画像が同じなので,EIも同じ値となる。
L値はmAs値の上昇に伴って小さくなり,NoGdが最も小さく,グリッド比が高いほど大きくなった。

2.画素値総和とNMSEの比較
次に,管電圧60〜90kVにおける画素値総和を算出した。mAs値の上昇に従って画素値総和も大きくなるが,ViGdとGdはほぼ同じ挙動を示していた(図3)。さらに,グリッド比3:1のViGdとGdについて,管電圧を変化させて比較したところ,管電圧が高くなるほど画素値総和も大きくなりグリッド比6:1と同様であったが,画素値総和は6:1が小さかった。つまり,6:1の方がより散乱線を除去できていることが証明された。

 

 

最後に,管電圧80kVにおけるNMSEの比較であるが,グリッド比6:1では「Gd-ViGd」の値はきわめて0に近く,GdとViGdの画像には差がないことがわかった(図4)。

 

 

検証2:撮影条件と設定の乖離

検証1の結果から,ViGdは実グリッド使用時と変わらない基礎特性を持つことが明らかになったが,次に,基準条件で撮影した画像とViGdの設定パラメータ(mAs)を変化させた場合に,画像処理効果がどのように変化するのか検討した。ViGdの散乱線除去効果は,設定mAsが基準条件より低ければ弱く,高ければ強く影響し,コントラストが変化すると考えられる。
まず,基準条件(4mAs)で撮影したNoGd画像を基準画像とし,設定パラメータ(mAs値)を変化させたViGd画像(乖離画像)を作成。さらに,基準画像から乖離画像を差分した画像(差分画像)も作成する。基準画像,乖離画像,差分画像のそれぞれで部位別(肺野,縦隔,心臓)にROIを設定し,部位別の画素値総和,差分画素値総和,NMSEを算出した。

1.画素値総和の比較(図5)
ViGd画像の画素値総和は,肺野,心臓,縦隔の順に小さくなり,グリッド比は3:1,6:1,10:1の順に小さくなった。また,基準条件より低い設定mAsの方が高い設定mAsよりも画素値総和が大きく,散乱線成分の除去量が少ないことを意味していた。

 

 

2.差分画像の画素値総和の比較(図6)
グリッド比10:1での差分画像の画素値総和の比較では,乖離の影響は縦隔,心臓,肺野の順に小さくなり,基準条件から乖離するほど値が大きくなる傾向があった。また,画素値総和と同様に,基準条件より低い設定mAsの方が高い設定mAsよりも差分画像の画素値総和が大きく,より強い影響を受けていた。グリッド比6:1,3:1でも同様であり,グリッド比が小さくなるほど値は小さくなった。

 

 

3.NMSEの比較(図7)
グリッド比10:1での部位別のNMSEを見ると,やはり基準条件から乖離するほど値が大きくなり,高い設定mAsに比べて低い設定mAsの方が値が大きく,基準画像からの変化が大きかった。また,乖離による変化は縦隔が最も大きかった。なお,グリッド比が小さくなるほど,乖離の影響は小さくなった。

 

 

4.乖離による注意点
設定mAsが小さいと散乱線除去効果が弱くなり,画像のコントラストが低下するため,ViGdでは設定mAsに合った条件で撮影することがより重要になると考えられる。また,グリッド比が大きいほど乖離の影響が大きいので,撮影部位に合ったグリッド比を選択する必要がある。

Virtual Grid使用上の注意点

ViGdとGdの検出器到達線量(グリッド比6:1)を比較すると,ViGdでは肺野で2倍,縦隔では6倍となる。そのため,ViGdでは,画像が黒潰れを起こすことがある。過線量によって画素値飽和を来すとViGdでも情報を取り出すことは困難であり,撮影線量の設定には注意が必要である。
また,ViGdでは撮影距離も処理に影響を及ぼす。基準画像の撮影距離を120cmとし,距離を変化させてNMSEの変化を見たところ,距離が近づくに従って設定値よりも撮影線量が多くなり,乖離の影響が大きかった。ViGdの活用に当たっては,その特性をしっかり把握した上で,今まで以上に撮影線量の標準化(適正化)を進めることが重要である。

使用経験から見たVirtual Gridの有用性

当院スタッフの使用経験から見たViGdの有用性をまとめると,(1) ViGdはGdと同様の散乱線除去効果がある,(2) グリッドがないので重量が軽くなり取り回しが便利,(3) 肺野の濃度ムラが発生しない(安心),(4) 撮影後にグリッド比を変更可能なため,例えば胸部は6:1,腹部は10:1と使い分けが可能,(5) 胃管チューブなど体内挿入物の視認性の向上,などが挙げられる。ViGdの特長を生かしながら,今後も積極的に活用していきたい。

 

1987年 徳島大学医学部附属診療放射線技師学校卒業。同年 奈良県立医科大学附属病院入職。県立五條病院を経て,1993年 奈良県立医科大学附属病院。2010年〜同中央放射線部係長。

 

 

 

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