技術解説(キヤノンメディカルシステムズ)

2014年4月号

Head & Neck Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

東芝社製CT:頭部・頸部イメージングにおける最新機能Update

堤  高志(CT営業部CT技術担当/臨床アプリ研究開発センター臨床アプリ開発担当)

東芝社製CTにおける頭部・頸部イメージングは,0.5mmスライスによる高分解能の形態画像の取得を端緒に進んできた。さらに,「Aquilion ONE」の登場による全脳灌流画像や4D画像のルーチン検査での収集など,多くの特徴的な装置およびアプリケーションの開発を進め,頭部・頸部領域においてもさまざまな臨床的知見を得てきた。
本稿では,頭部・頸部CTイメージングにかかわる最新のハードウェア・ソフトウェアの進歩について述べることとする。

■ハードウェアの進歩

1.Aquilion ONE/ViSION Edition

「Aquilion ONE/ViSION Edition」は,新たに各コンポーネントを設計した第二世代のエリアディテクタCTである。従来以上に散乱線の影響を抑制することができるQuantum-Vi検出器,最速0.275sec/rotのスキャンを可能にしながら,さまざまなスキャンモードでチルト撮影が併用できる高剛性ガントリ,耐遠心力性能と高速回転化に伴う出力向上を実現したX線管とジェネレータが搭載されている。また,画像再構成の高速化(最速5sec/Volume)や,逐次近似応用再構成法であるAIDR 3Dの標準搭載など,エリアディテクタならではの4D検査とルーチン検査のワークフローの向上,被ばく線量低減を両立するフレキシビリティに富んだ装置となっている。

2.HyperViewer

CTスキャナのみならず,画像表示に関しても新たなデバイスを開発し,「HyperViewer」として上市した。
通常,3Dモニタでは専用のグラス(メガネ)を装着する必要があるが,HyperViewerはこの専用グラスを必要とせず,裸眼で立体視をすることができるインテグラルイメージング方式のディスプレイシステムである(図1)。Aquilion ONE/ViSION Editionからのボリュームデータを東芝社製医用画像ワークステーションである「Vitrea」に転送・処理後,HyperViewerに処理過程ファイルを転送することで立体データに展開することが可能である。また,HyperViewer上で高速にリアルタイムレンダリングを行うことで,3D画像のみならず4D画像にも対応し,さらに切削処理やフュージョン処理,自由な角度からの観察など,さまざまな処理を可能としている。
大きな臨床的メリットとしては,もともと持っている高精度なボリュームデータの奥行き情報を表現できる点,解剖学的な位置関係が立体感を持って複数人数で共有できる点が挙げられる。特に,微細な構造物のおのおのの位置関係を瞬時に視認する必要がある脳神経外科領域では,術前・術中の画像表示デバイスとして大きな期待が寄せられている。

図1 インテグラルイメージング方式

図1 インテグラルイメージング方式

 

■新たな臨床アプリケーション

1.SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction)

CTにおいて,金属アーチファクトは宿命とも言える課題であった。複合要因で発生するアーチファクトであるため,克服するには多くの問題に対処する必要がある。東芝では,“SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction:シーマー)”を開発し,最新ソフトウェアに搭載した。これは,ボリュームスキャンデータに対して逐次近似法を用い,Back ProjectionとForward Projectionを繰り返し,金属アーチファクトを抑制するアルゴリズムである(図2)。

図2 SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction

図2 SEMAR(Single Energy Metal Artifact Reduction

 

図3に,頭部CTA画像を提示する。脳動脈瘤コイル塞栓後のフォローアップでは,従来,コイルからの金属アーチファクトが多く発生するためCT画像の画質を担保することが困難であったが,SEMARを適用することでコイルからの強いストリークアーチファクトの発生が抑制できており,血管の視認性が大幅に向上していることが確認できる。
頭部・頸部領域でのメリットとしては,ほかに歯科充填物からのアーチファクト低減による頭頸部画質向上や,頸部CTAにおける血管視認性向上が挙げられよう。

図3 コイル塞栓術後例

図3 コイル塞栓術後例

 

2.生データベースデュアルエネルギー

従来も,画像データベースのデュアルエネルギー解析によりIodineマップや結石性状解析を行うことが可能であったが,最新のソフトウェアでは生データベースのデュアルエネルギー解析が可能となった。
このアプリケーションによる臨床的有用性は多いが,その中でもVirtual Monochromatic Imageは,デュアルエネルギー解析を画質向上に用いることができるという点で特徴的である。これは,2種類の管電圧データから仮想単色X線画像を生成することができるというものである。多色のX線を用いると,特に骨に囲まれた頭蓋内の画像は,ビームハードニングによるダークバンドやカッピングなど,さまざまなアーチファクトが発生することが知られているが,仮想単色X線画像を生成することにより,これらのアーチファクトの発生を抑制することが可能となり,画質改善につながると言える。
また,生データベースデュアルエネルギー解析による特長として,ほかにもビームハードニングによるアーチファクトが低減することによるIodineマップの精度向上や,実効原子番号や電子密度画像による物質弁別の可能性などが挙げられる。これらの解析により臨床的に期待される点は,出血と造影剤の判別や,脂肪組織の性状診断などが考えられる。

3.4D脳血流解析(Vitrea Work station)

Aquilion ONEのDynamic Volume Scanで得られる4Dボリュームデータを解析する方法は,従来,本体に搭載された4Dデータ用各種アプリケーションを使用するのが一般的であった。
一方で,CT本体から離れた場所でも4Dデータの解析を行うニーズがあったのも事実である。今回,東芝社製医用画像ワークステーションであるVitreaに,頭部4Dボリュームデータを解析するためのアプリケーションとして“4D脳血流解析”が搭載可能になった。これは,頭部の経時的な血流変化をボリュームデータとして高速に解析を行い,全脳灌流画像マップと4D画像を同時に出力可能なソフトウェアである。
解析の流れとしては,4Dボリュームデータをアプリケーションに読み込ませるのみで,AIF(Arterial Input Function)やVOF(Venous Output Function)は自動で抽出されるため,短時間で再現性の良い全脳灌流画像解析が可能である。灌流画像はMPR画像やVR画像でも診断できると同時に(図4),特徴的な機能としてROIテンプレートが準備されている。これは,脳表および正中線を自動で認識し,4種類のROIテンプレートおよび鏡像を自動で置くことができるものである。これまでROIを手動で設定し,左右比を計測する必要があったが,この作業を簡略化することができる。迅速な治療方針立案が必須の脳卒中救急の現場で,有用なツールとなると考えられる(図5)。
さらには,自動位置合わせ併用のサブトラクション処理も4Dデータに適用されるため,血管の4Dデータも同時に取得することができる。灌流画像の裏づけとしての4D血管データを有効に活用できるものと期待される。

図4 4D脳血流解析(MPR結果画面)

図4 4D脳血流解析(MPR結果画面)

 

図5 4D脳血流解析(ROIテンプレートの一例)

図5 4D脳血流解析(ROIテンプレートの一例)

 

これまで述べてきた通り,東芝では装置本体のみならず,他部門との連携を深め,新たな表示デバイスの開発なども積極的に進めている。また,臨床応用ソフトウェアに関しても,さまざまな場面での画質向上や,さらに高い付加価値を持つ解析画像,実臨床でのワークフローを良好なものにするためのアプリケーション開発など,多面的に推進している。
今後も,4Dデータをさらに有効活用するためのアプリケーションや,さらなる被ばく線量低減に向けたユニークな開発を進めていく所存である。

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ(株)
広報室
TEL 0287-26-5100
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