Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2019年3月号

高周波プローブによる安定した高精細画像で乳がん診断の総合判定を支えるAplio i800 〜技師と放射線科医によるダブルチェックで精度の高い超音波検査を実施〜

聖路加国際病院

聖路加国際病院

 

乳がん診療で豊富な実績を持つ聖路加国際病院は、放射線科内に超音波検査室を設置し、技師と放射線科医によるダブルチェック体制で、乳房超音波の精密検査を行っている。同院では、放射線科医長で乳房画像診断室室長の角田博子医師が中心となり、マンモグラフィ、超音波、MRIの総合判定による乳がん画像診断を実践。2017年10月、超音波検査室にキヤノンメディカルシステムズ社製超音波診断装置「Aplio i800」の高周波(4.0~18.2MHz)、超高周波(8.8~24.0MHz)プローブによる高画質画像が、強力なツールとして加わった。Breast Solution第2回目は、Aplio i800が臨床にもたらすメリットについて、角田室長と放射線科チーフ・河内伸江技師、松岡由紀技師に取材した。

ブレストセンターを設置し患者に寄り添う乳がん診療を実践

角田博子 室長

角田博子 室長

聖路加国際病院(病床数520床)は1902年の設立以来、キリスト教精神の下、患者に寄り添う医療を実践してきた総合病院である。乳がん診療においては、2005年にブレストセンターを設立し、乳腺外科医、腫瘍内科医、放射線科医、病理医、コ・メディカルなどが連携して、質の高い診断と治療を効率的に行うチーム医療体制を整えている。多くの経験と実績を誇るブレストセンターでは現在、年間の乳がん手術件数は約1000件に上る。
ブレストセンターには、他院で乳がんと診断された患者や、同院附属の予防医療センターや他の検診から要精密検査で紹介された患者、フォローアップの患者などが来院する。ブレストセンターを画像診断の面から支える放射線科医や技師を束ねるのが、放射線科・乳房画像診断室の角田博子室長だ。角田室長は、マンモグラフィ、超音波、MRIを駆使する乳がん画像診断に精通したエキスパートとして知られ、乳腺超音波診断においては、検査の標準化や普及、人材育成に尽力しながら、臨床の最前線で活躍している。毎週水曜日はブレストセンターで外来も行っており、同院の乳腺外科医だけでなく、地域の開業医からも厚い信頼が寄せられている。
同院の乳がん画像診断について、角田室長は、「ブレストセンターを受診した患者に対しては、必要に応じてマンモグラフィ、超音波検査、MRIを行い、放射線科医が各検査のレポートを作成します。それに加えて、すべてのモダリティの結果を総合判定する総合画像診断のレポートも作成し、主に超音波のレポートに添付して主治医と共有しています」と説明する。

ダブルチェックと総合判定で精度の高い画像診断を提供

超音波検査については、ブレストセンター内でも行っているが、診断の難しい症例や診断確定後の精密検査、また、術前検査や化学療法の効果判定は、放射線科内にある超音波検査室で実施している。超音波検査室では、火・木曜日の午前中と月曜日の一部を乳房検査日に設定。マンモグラフィと乳房超音波の認定を持つ診療放射線技師である放射線科チーフの河内伸江技師(上の写真左)と松岡由紀技師(同真中)を中心に、診療放射線技師4名、臨床検査技師11名(予防医療センター所属)、計15名の女性技師が交代で検査を担当している。検査日には3台ある超音波診断装置をフル稼働させ、技師が検査を行った上で、角田室長が全例をダブルチェックしている。
超音波検査では、技師がマンモグラフィやMRIの画像をチェックした上で、基本となるBモードに加え、カラードプラ、エラストグラフィを実施。その後、角田室長が技師の検査画像と他モダリティ画像を確認し、Bモードで観察を行った上で、必要に応じてカラードプラ、エラストグラフィを追加する。詳細な観察となるため、午前中での検査数は最大25名ほどだ。
乳がんの総合画像診断における超音波検査室の位置づけについて、角田室長は次のように述べる。
「放射線科内に超音波検査室があることで、放射線科医が診療放射線技師、臨床検査技師を統括し、マンモグラフィ、MRIなどの画像を参照しながら超音波検査を施行して、総合的な判定を行うことができます。モダリティ別や専門別に所見が発生する施設では、不一致があった時に診断に困ることもあると聞きます。乳がん画像診断では、すべての画像に精通し、互いを参照して総合判断をすることが非常に大事です。当院は、私が赴任する以前から、放射線科医がすべての画像を見て総合的な判断を行う体制が整っていました」

放射線科超音波検査室では、技師と角田室長によるダブルチェックを実施

放射線科超音波検査室では、技師と角田室長による
ダブルチェックを実施

 

 

超高周波プローブで明瞭なBモードを実現したAplio i800

2017年10月、放射線科超音波検査室の超音波診断装置のうち1台を、キヤノンメディカルシステムズの「Aplio XG」から「Aplio i800」へと更新した。Aplio iシリーズは、送受信ビームの形状を均一に細く、高密度にする“iBeam Forming”や、断層像の厚みを均一に薄くする“iBeam Slicing”により、鮮明で高精細な画像を実現している。また、超広帯域の周波数帯域と、スライス厚み方向への超音波音場の制御を実現した新開発の“iDMSプローブ”を使用できるようになり、Bモード画質が大きく向上している。
角田室長は、乳がん診療における超音波の役割について、「良悪性の鑑別は、マンモグラフィと超音波を基本に総合判定を行います。診断確定後の術前検査では、超音波で広がり診断や部分切除・全摘出の検討、切除部分のマッピングを実施しており、化学療法の効果判定では、MRIと超音波を組み合わせて診断します。また、生検のガイドとしては超音波が最も有用です。超音波は精密検査として有効に働くモダリティで、基本となるBモードの画質は非常に重要です」と述べる。
プローブについては、超音波検査室では乳腺用として高周波プローブ「PLI-1205BX」(4.0~18.2MHz)と超高周波プローブ「PLI-2004BX」(8.8~24.0MHz)を活用している。Aplio i800のBモード画質について河内技師は、「基本は18MHzのプローブを用いていますが、浅いところから深いところまで全体的に確認する時に、非常に安心感があると感じています」と評価する。また、超高周波プローブの臨床的有用性を、角田室長は次のように説明する。
「乳房の薄い患者さんや皮膚に近いところを見たい場合には24MHzの超高周波プローブに切り替えますが、Bモードが非常にきれいです。Bモード画像ではクーパー靭帯にどのくらい進展しているか、浅在筋膜浅層との関係がどうなっているかなど、細かいところを見ていきますが、超高周波プローブでは浅部を明瞭に観察できるため、その後の診断精度がかなり深まります」
またAplio i800では、高精細なBモード画像をベースに、カラードプラや“iSMI”といった血流画像の画質も向上している。角田室長は、主にカラードプラとパワードプラを組み合わせて、血流の多寡や形態を中心に観察しており、「化学療法の効果判定では、奏効し線維化が進む病変はBモードで低エコーに描出されても血流が低下してくることがわかっています。Aplio i800は、特にパワードプラの感度が高く画像がきれいで、血流を評価しやすいです」と話す。

超高周波プローブ「PLI-2004BX」(左)、高周波プローブ「PLI-1205BX」(右)

超高周波プローブ「PLI-2004BX」(左)、
高周波プローブ「PLI-1205BX」(右)

 

 

活用に向けた評価に取り組むShear wave Elastography

エラストグラフィは、Strain Elastographyを主に用いているが、病変の深さや肋骨との位置関係でStrain Elastographyで観察できない場合には、Shear wave Elastographyを併用している。
Aplio i800のShear wave Elastographyについては、現在、初期段階の評価に向けたデータ収集を行っているところだ。担当する松岡技師は、「超音波検査室で検査する症例は悪性が多いのですが、良性の症例を集めて悪性とのカットオフ値などを探っていきたい」と話す。角田室長は、「Shear wave Elastographyは臨床で実際に役立ちますが、まだ新しい技術なので、どういった症例でStrain Elastographyと違いが出てくるのか、どのように活用するといいのかなど、検討を重ねていく予定です」と述べた。

■Aplio i800による臨床画像

Aplio i800による臨床画像

 

メーカーとユーザーの協力で進化する超音波診断装置

Aplio i800は導入後に調整が重ねられ、リアルタイム性や粒状性、コントラストなど、納得のいく画質を作り込んでいった。角田室長は、画質の調整は確実な診断のために大切なプロセスであり、メーカーのサポート力が問われる部分だと指摘する。
「その点で国内メーカーのキヤノンメディカルシステムズは対応も早く、要望に対して、その都度適切に調整してもらえました。超音波診断装置は、以前と比べて大きく進歩し、臨床で有効に使えるようになりましたが、画質や簡便性を両立させながらもっと改良されていくでしょう。臨床のユーザーの声をメーカーに伝えていくことで、開発が進むことに期待しています」
同院はこれからも、各モダリティの利点を踏まえた総合判定に真摯に取り組み、乳がん診療をリードしていく。

(2019年1月16日取材)

聖路加国際病院

学校法人聖路加国際大学
聖路加国際病院
東京都中央区明石町9-1
TEL 03-3541-5151
http://hospital.luke.ac.jp

 

 モダリティEXPO

 

●そのほかの施設取材報告はこちら(インナビ・アーカイブへ)

TOP