技術解説(AZE)

2015年4月号

Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点

マルチモダリティ時代の心臓CT解析 虚血性心疾患に対する多彩な画像解析アプローチ

阪本 剛(マーケティング部)

CTの進歩によって冠動脈診断が可能なデータが取得できるようになり,一般の臨床において広く普及すると同時に解析技術も同様に大きく進歩した。なかでも,短時間で画像中から冠動脈のみを抽出し,読影を容易にするCPR(曲面再構成表示)によって,効率的かつ迅速な冠動脈の画像診断が可能になった。現在では,冠動脈CTを中心にさまざまなデータを統合させ,虚血性心疾患に対するアプローチが多様な展開を見せている。

■洗練された冠動脈解析技術

64列CTによる冠動脈狭窄の診断能は,感度89%,特異度96%,陽性的中率78%,陰性的中率98%とされており,なかでも陰性的中率の高さにおいて有意冠動脈病変を除外し,侵襲的な冠動脈造影検査を最小限に抑えることが可能であるとされている1),2)。当社でも10年近く前より冠動脈を解析する技術が開発されており,常時技術更新により高速化・高精度化が図られている。開発当初は一つひとつの冠動脈起始部と分岐部を追跡のスタートポイントとして指定する必要があり,冠静脈など不要な物体にまで追跡が及ぶことがあった。現在の“冠動脈解析ソフトウェア”では,冠動脈の指定も不要で,すべて自動で血管を認識することが可能である(図1)。臨床データへの適応が進むにつれ,開発側も血管構造の理解を深めることで静脈などの不要物に追跡が及ばないように制御することが可能になった。
この冠動脈解析ソフトウェアは,モダリティから画像を受信したタイミングでバックグラウンド解析を行うことが可能であり,わずか20秒程度ですべての冠動脈枝の追跡を終了させることができる。この際,冠動脈の中心線は石灰化の影響を考慮して内腔を追跡し,血管構造から心臓以外の構造物(左房や肺血管など)をあらかじめ除外することも可能である。血管名称も自動で付与される。ますます洗練された技術開発により,CTにおける冠動脈診断は,まさに次のステージに進もうとしている。

図1 冠動脈解析ソフトウェア

図1 冠動脈解析ソフトウェア
CTデータからすべての冠動脈を抽出しCPRを作成。保存用にプリセットされたプロトコルを指定することで必要な画像データを一括で作成できる。

 

■虚血心筋に対するマルチモダリティ統合技術

冠動脈CTに対する解析技術が洗練されていく一方で,冠動脈CTをプラットフォームとした虚血心筋解析も進歩するようになった。従来より虚血性心筋症の判定にゴールドスタンダードとして用いられてきたアイソトープ(RI)検査(SPECTデータ)は,虚血の有無を判定することに有利であるが,冠動脈走行は加味されないため虚血の責任血管を正確に同定することは難しいケースも存在する。また,冠動脈CTから得られる情報はCTの特性上,高度石灰化を有する冠動脈が有意狭窄を伴うかどうかを判断することは難しい。これらを解決するため,われわれは冠動脈CTデータと負荷/安静時の心筋SPECTデータを融合表示させる技術“Fusion EXソフトウェア”(図2)を開発した。これにより,CTの高い空間分解能と,SPECTの高い虚血検出能を組み合わせることで,両者のメリット・デメリットを補い合うことが可能である。解析に要する時間はおよそ30秒であり,その間に冠動脈の解析も終了する。ユーザーによる操作は不要の「全自動システム」であり,よりいっそうの臨床普及を期待している。
本解析における従来の問題点「CTとSPECTの位置関係の照合」は,当社が開発した技術“アトラスレジストレーション”によって解決されている。これは,CTとSPECTの仲介データを介することで再現性および定量性を確保可能な技術である3)。この技術では,CTとSPECTのメーカーの違い,またはCTとSPECTの撮影施設の違いなどによる影響を受けないため,あらゆる施設で解析を実行することが可能である。さらに,本機能はMRIやPETなど,他種の形態画像または機能画像をも融合可能であるため,シチュエーションに応じてさまざまに応用することが可能である。
得られた解析結果は,負荷データと安静データを基にwash-out rateや治療可能な虚血部分の表示機能(reversibility),定量化された心筋血流量データにおける心筋血流予備能(myocardial flow reserve:MFR)の表示など,心筋のカラー表示やブルズアイマップの表示をさまざまに切り替えることが可能である。また,冠動脈解析によって得られた血管構造をブルズアイ表示上に投影することも可能である。これによって,ブルズアイにおける信号情報から責任血管を把握することが容易になると考える。

図2 Fusion EXソフトウェア

図2 Fusion EXソフトウェア
冠動脈CTと心筋SPECTを自動統合し,結果をブルズアイとともに表示する。同時に冠動脈の抽出も行われており,30秒程度で心筋灌流情報と冠動脈の形態情報とを比較評価可能である。

 

■新しい虚血心筋解析のアプローチ

マルチモダリティ画像解析によって互いのデメリットが解消され,メリットを多く享受することができるようになった。このようにして,虚血性心疾患に対してさまざまなアプローチを検討することは有意義であると考える。その一方で,単一モダリティにおいてどこまで情報が引き出せるかの検討も重要である。例えば,CT分野における虚血心筋の描出は,ATP(アデノシン3リン酸2ナトリウム)により心筋に負荷を与えた状態にて造影剤が心筋を通過する瞬間を撮影することで心筋虚血を検出する取り組みが存在する4)。さらに,近年では心筋の特徴である拍動による心筋へのメカニカルストレスに着目することで,負荷を与えない安静時でも冠動脈に有意狭窄が存在すれば左室収縮期において心筋内膜に虚血が生じ,CTで検出が可能であることが示唆されている5),6)。このような研究の進歩に伴い,われわれは,心筋の左室内膜のみを抽出して強調表示を行う機能を開発した。本機能は,冠動脈の解析終了後に1クリックの操作のみで表示の切り替えが可能であり,血管走行と同時に評価することで,前述のマルチモダリティでの融合画像に匹敵する結果を得られるのではないかと期待している。
また,われわれは,有意冠動脈狭窄が心筋に与えうる影響について検討するために,“肝臓解析”で利用されているボロノイ分割法を心筋に適用することで,血管が持つ灌流領域を推定する機能を開発している7)。この機能を用いれば,冠動脈走行を基に心筋の領域を分割するため患者固有の解剖構造に対応可能である。図3では,右冠動脈の病変によって下壁内膜に生じたCT値の低下と,計算によって推定された右冠動脈の領域が表示されている。このように,冠動脈病変が心筋に与えうる影響を検討することで,薬剤や血管再建など治療方針を改めて検討することが可能になると期待している。

図3 心筋内膜表示と心筋領域分割(右冠動脈狭窄病変)

図3 心筋内膜表示と心筋領域分割(右冠動脈狭窄病変)
心筋虚血は心筋内膜側から生じることに着目し,内膜面のみを抽出。CT値の低下部位を簡便に表示する。さらに,右冠動脈の持つ灌流域を推定し,その結果と比較することが可能である。

 

本稿では,冠動脈CTを軸にマルチモダリティへと展開する解析技術と,近年注目される新しいアプローチを紹介した。虚血性心疾患に対する画像解析のアプローチはますます多様になり,さまざまな所見が定量化されゆく時代になると考えている。このような取り組みが心臓という領域をスタートに,呼吸器や消化器などさまざまな分野に展開していくことを期待している。

●参考文献
1)Schroeder, S., Achenbach, S., Bengel, F., et al. : Working Group Nuclear Cardiology and Cardiac CT ; European Society of Cardiology; European Council of Nuclear Cardiology. Cardiac computed tomography ; Indications, applications, limitations, and training requirements ; Report of a Writing Group deployed by the Working Group Nuclear Cardiology and Cardiac CT of the European Society of Cardiology and the European Council of Nuclear Cardiology. Eur. Heart J., 29, 531〜556, 2008.
2)Hoffmann, M.H., Shi, H., Schmitz, B.L., et al. : Noninvasive coronary angiography with multislice computed tomography. JAMA, 293, 2471〜2478, 2005.
3)檜垣 徹, 金田和文, 波多伸彦 : SPECTアトラスデータを用いた心臓CT/SPECTの位置あわせ手法. 医用画像情報学会誌, 27・4, 105〜110, 2010.
4)Kurata, A., Mochizuki, T., Koyama, Y., et al. : Myocardial perfusion imaging using adenosine triphosphate stress multi-slice spiral computed tomography ; Alternative to stress myocardial perfusion scintigraphy. Circ. J., 69, 550〜557, 2005.
5)梶谷文彦 : 冠循環. 日本生理学雑誌, 66・6, 188〜196, 2004.
6)Matsuoka, H., Nagao, M., Kawakami, H., et al. : Detection of Myocardial Ischemia Using 64-Slice MDCT. J. Jpn. Coll. Angiol., 50, 157〜162, 2010.
7)Kurata, A., et al. : Coronary CTA Based 3D myocardial segmentation using voronoi’s method. Eur. Radiol., 25・1, 49〜57, 2015.

 

●問い合わせ先
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