次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2016年12月号

No. 176 AZE VirtualPlace 風神を利用した腱・靭帯の3D-CT画像作成へのチャレンジ

磯貝 征寛(JA愛知厚生連知多厚生病院放射線技術科)

はじめに

整形外科領域における腱や靭帯の画像診断は,軟部組織のコントラストに優れたMRIや超音波検査を用いることが主流であるが,近年のワークステーション(以下,WS)の発展とともにCT画像を利用した三次元画像での描出方法も検討されてきている。立体構造を把握しやすい3D-CT画像の有用性は認められつつあるが,コントラストの低いCT画像から三次元画像を作成し,臨床的価値のある画像として提供するには,腱・靭帯描出用の撮影プロトコールの構築とWSでの最適なオパシティカーブの操作が必要な条件となってくる。
当院では,2015年10月にAZE社製WS「AZE VirtualPlace 風神」(以下,AZE VirtualPlace)を導入した。それまでもしばしば手指の屈筋腱や伸筋腱の描出の依頼があり,CT画像を用いたボリュームレンダリング(以下,VR)画像の作成にチャレンジしてきたが,以前から使用しているWSでは周囲組織と区別して描出することが困難であった。AZE VirtualPlace導入を機にCT撮影プロトコールの一部見直しを行い,困難であったVR画像での描出が可能となった症例を紹介する。

CT撮影プロトコール

VR画像での腱・靭帯の描出を目的としたCT撮影を行う場合,画像ノイズの少ない画像を得ることが重要である。通常,骨・関節の診断を目的とした場合は120kV,30~60mAs程度で撮影を行っているが,腱・靭帯描出を目的とした場合は100~200mAsまで線量を上げて画像ノイズを少なくする必要がある(図1)。
また,135kVの高管電圧を使用すると,FOV中心付近にある腱・靭帯のCT値低下に比べて周囲の筋肉のCT値低下が大きくなるため,相対的にコントラストを上昇できる。検査部位にもよるが,VR画像を作成する上で腱・靭帯と筋肉の分離がしやすくなる(図2,3)。

図1 撮影条件と手指屈筋腱の描出能の差異 骨のVR画像であれば30mAsで十分に作成可能であるが,腱の描出は難しいため線量を上げる必要がある。

図1 撮影条件と手指屈筋腱の描出能の差異
骨のVR画像であれば30mAsで十分に作成可能であるが,腱の描出は難しいため線量を上げる必要がある。

 

図2 120kVにおける屈筋腱と周囲組織のCT値

図2 120kVにおける屈筋腱と周囲組織のCT値

図3 135kVにおける屈筋腱と周囲組織のCT値

図3 135kVにおける屈筋腱と周囲組織のCT値

 

WSでのオパシティカーブの操作

AZE VirtualPlaceでは,VRで使用しているカラーマップの配色がCT値のヒストグラムにも反映されており,この配色を見ながらオパシティカーブを調整できるため,反映されるVR画像の変化が理解しやすい。
オパシティカーブの操作というとWSに慣れていないとやや抵抗を感じるところだが,少しずつ慣れてマスターしていくと症例ごとに画像の調整が可能となり,VR画像の出来上がりへの影響は大きい。

前十字靭帯不全断裂─術前および術後のCT

左膝前十字靭帯不全断裂の再建術を行った症例を紹介する。術前のCT検査はMPR画像と骨の3D画像が主な目的となり,術後のCT検査は骨孔の位置評価が主な目的となるが,本症例ではVR画像を用いて術前後の前十字靭帯の評価も行った(図4,5)。
術前のVR画像では,前十字靭帯の大腿骨付着側が菲薄し明瞭に描出されておらず,不全断裂の所見を示している。また,前十字靭帯断裂の間接所見として,脛骨の前方偏位や後十字靭帯のたわみも観察された。
術後では再建靭帯のCT値が周囲の軟部組織よりやや高く,靭帯自体が太いためVR画像で明瞭に描出できた。このようなVR画像が得られれば患者説明にも有用である。
術前のVR画像で断裂部が菲薄であったが,これに関してはWS上で表示ができていないのか,断裂を示す所見として表示されないのかを見極められるような画像を作成しなければならない。そのためには,靭帯の走行に対して最適な角度でカットし前後の情報も漏らさないことと,やはり画像ノイズの少ないデータを基にVR画像を作成し,オパシティカーブの調整で靭帯を明瞭に表現することが重要になる。

図4 左前十字靭帯再建術術前のVR画像とオパシティカーブ

図4 左前十字靭帯再建術術前のVR画像と
オパシティカーブ

図5 左前十字靭帯再建術術後のVR画像とオパシティカーブ

図5 左前十字靭帯再建術術後のVR画像と
オパシティカーブ

 

まとめ

今回の症例を通して,腱・靭帯における画像診断で3D-CT画像も有用であることを整形外科医からも評価いただき,モダリティの選択肢としてCT検査も加えることができた。
腱・靭帯周囲の軟部組織はCT値差の少ない領域であり,オパシティカーブに対してVR画像が敏感に変化する。このため一定のテンプレートを使用するだけでなく,画像データに合わせたオパシティカーブの微調整を行うことがVR画像作成上のポイントである。
今後,CT装置およびWSの性能向上が期待される中,さらなる画質の向上と適応範囲の拡大にチャレンジしていきたい。

●参考文献
1)日本放射線技術学会撮影部会 : X線CT撮影における標準化〜GALACTIC〜(改訂2版). 放射線医療技術学叢書(27), 京都, 日本放射線技術学会, 2015.
2)上谷雅孝 : 骨軟部疾患の画像診断. 東京, 学研メディカル秀潤社, 2008.

【使用CT装置】
Aquilion64(東芝メディカルシステムズ社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 風神(AZE社製)

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