MicroDose SI × 医療法人社団武蔵野会 TMG宗岡中央病院
従来の常識を覆す低被ばくで高画質マンモグラフィを提供し乳がん検診で地域医療に貢献 —スペクトラルイメージングによる乳腺密度情報の活用も検討

2016-1-5

フィリップスエレクトロニクスジャパン

マンモグラフィ


左から梶谷智則技師,長谷川真美技師,渡邊亮二技師長

左から梶谷智則技師,長谷川真美技師,渡邊亮二技師長

埼玉県志木市のTMG宗岡中央病院は,地域医療を支えるという使命を旧市民病院から引き継ぎ,2015年9月に新病院をオープンした。10月からは健診部門も本格稼働し,検診事業にも力を入れることで,地域住民の健康に寄与する病院をめざしている。新病院開院を機に,マンモグラフィ装置をフォトンカウンティング技術とマルチスリットスキャン技術を搭載し,スペクトラルイメージングも可能なフィリップスエレクトロニクスジャパンの「MicroDose SI」に更新した。従来のデジタルマンモグラフィとは一線を画す原理と機構で,低被ばくと高画質を高いレベルで両立した装置による乳がん検診が始まっている。導入のねらいと経緯,初期使用経験について,佐藤 滋院長,放射線科の渡邊亮二技師長と長谷川真美技師に取材した。

佐藤 滋 院長

佐藤 滋 院長

渡邊亮二 技師長

渡邊亮二 技師長

長谷川真美 技師

長谷川真美 技師

 

市民病院の役割を継承し地域住民の医療を支える新病院がオープン

TMG宗岡中央病院は,前身である志木市立市民病院の事業を継承する形で2014年4月に開院した。開院後,新病院が建て替えられるまでの間は,隣接した総合健診センター棟で内科,外科,整形外科,小児科の外来診療を継続し,2015年9月に地上4階建て,病床100床(一般60床,回復期リハビリテーション40床)の新病院がオープンした。
同院が属する戸田中央医科グループ(Toda Medical Group:TMG)は,1962年に開院した戸田中央病院(現・戸田中央総合病院)に始まり,現在,首都圏に27の病院,6つの介護老人保険施設などを展開する。急速に高齢化が進む中,住民が住み慣れた地域で生活し続けていける環境を整えるため,医療,保健,介護,福祉サービスを有機的につなげた地域完結型医療の提供に取り組んでいる。
埼玉県志木市は,市の南西部を走る東武東上線で池袋まで約20分,また,東京メトロの直通運転も始まるなど都内へのアクセスが良好で,ベッドタウンとして人口が増加し続けている。しかし,医療機関は沿線地域に集中しており,駅から離れた宗岡地域の医療は旧市民病院が支えてきた。佐藤滋院長は,その重責を引き継ぐ病院として,同院の理念と運営方針を次のように話す。
「当院は開院して間もないため,まずは地域住民の信頼を得て受け入れてもらえるように,日々診療に取り組んでいます。地域からのニーズが高い小児科,人工透析も含めた外来診療と救急医療,また,一般病棟に加えて回復期リハビリテーション病棟も整え,地域に根ざした医療を提供するとともに,最新鋭の検査機器を活用した検診を実施して,地域住民の健康に寄与する“地域に愛され,信頼され,選ばれる病院”をめざします」
新病院開院により,10月から健診部門も本格的に稼働を始めた。放射線検査を担う放射線科には,現在,診療放射線技師3名が在籍する。それぞれが認定資格を持ち,精度の高い検診が提供可能となっている。1階に外来とは別に健診エリアを設け,自治体の健康診断やがん検診,特定健診などを実施しており,将来的には人間ドックの実施も検討している。
健診でも使用する検査機器は,新病院の開院時にCT,X線透視装置,マンモグラフィ装置を更新。CTは80列マルチスライス装置を導入し,低線量肺がんCT検診も行っている。検査機器の更新にあわせて,市民病院時代から稼働していたPACSもリプレイスされた。加えて,新しく電子カルテシステムを導入し,診療環境の充実が図られている。そのような中,乳がん検診での活用を軸に選定されたマンモグラフィ装置が,新技術フォトンカウンティングとマルチスリットスキャン技術を用いたフィリップスエレクトロニクスジャパンの「MicroDose SI」である。

マルチスリットスキャニング方式のため検出器と圧迫板は弧を描くユニークな形状

マルチスリットスキャニング方式のため
検出器と圧迫板は弧を描くユニークな形状

丸みを帯びた装置フォルムは受診者に優しい検査を提供

丸みを帯びた装置フォルムは
受診者に優しい検査を提供

 

第一条件の“低被ばく”に応える装置として選定されたMicroDose SI

新病院の検査機器の更新においては,旧市民病院からの事業継承時にTMGグループ他院から異動してきた渡邊技師長が中心となって装置選定を行った。マンモグラフィ装置についても,2014年の夏から検討が始められた。渡邊技師長は,装置選定においては,低被ばくであることが第一条件であったと述べる。
「当院では,マンモグラフィは検診での使用がメインとなりますので,佐藤院長の方針の下,低被ばくであることを最も重視しました。旧健診センターで稼働していたCR装置と比べると現在のFPD搭載デジタルマンモグラフィは十分に低被ばくですが,MicroDose SIはさらに抜きんでていました」
MicroDose SIは,被ばく線量低減をめざして開発された検出技術“フォトンカウンティング技術”を実装した次世代のマンモグラフィ装置である。フォトンカウンティング技術は,単結晶シリコン(Si)検出器に入射するフォトン(光子)から発生するパルス信号の数をカウントし,ピクセルあたりのフォトン数の差を濃度差として画像化するもので,従来のデジタル装置で行われるA/D変換がないことから電気的ノイズを抑制することができる。また,乳房の前後に配置された2つのコリメータにより,斜入するX線と被写体からの散乱線をほぼ完全に除去する“マルチスリットスキャン技術”を採用している。これらの技術により,従来の画像生成法と比べて高画質化を実現するとともに,線量の大幅な低減が可能になっている。
TMGグループでは,マンモグラフィ検査は女性技師が担当して行っているが,選定時には検査を担当することになる長谷川技師が入職前であった。そこで渡邊技師長は,MicroDose SIについて,国際医用画像総合展(ITEM)で実機を見学していたTMGグループ放射線部の女性技師に意見を求め,また,すでにMicroDose SIを導入しているグループ他院にヒアリングを行った。
「女性技師からは,低被ばくで,かつ画素サイズ50μmの高画質を得られることへの期待と,乳がん検診の被ばくを不安に思う受診者に説明をしやすいとの声が聞かれました。また,導入施設の評価も高く,検診を中心に積極的に使用していました。国内の導入数はまだ多くないのですが,勉強会などで実際に使用している施設の話を聞く機会もあり,納得することができました」
加えて,これから国内での実績が作られていく装置であるため,さまざまな場所で発表する機会ができることや,新しい装置を導入することで周辺施設との差別化を図り,住民に対してアピールできるといったメリットも考えられた。候補となった複数の装置のデモを行って画質も確認した上で,最終的に低被ばくであることが決め手となり,2014年末にMicroDose SIの導入が決定した。
住民への訴求力という点では,早くもねらいどおりの効果が現れ始めている。グランドオープン直前に開催した内覧会では,乳がん検診の案内チラシを配布し,MicroDose SIを動かしながら説明する見学会も行った。最新装置への関心は非常に高く,低被ばくで高画質を得られる特長を説明したところ,「ぜひ乳がん検診を受けたい」との反応も多く寄せられた。実際に新病院での乳がん検診開始後は,検査予約が一気に増加しており,年間件数としては前年を上回ることが見込まれている。

MicroDose SIはフットスイッチ(↑)や本体ボタンでガントリを操作でき,ガントリ角度は本体下部のパネル(→)にデジタル表示される。

MicroDose SIはフットスイッチ()や本体ボタンでガントリを操作でき,ガントリ角度は本体下部のパネル()にデジタル表示される。

撮影前の状態(左)と,ポジショニング後にフットスイッチでツーブスを降下した撮影スタンバイ状態(右)。曝射ボタンを押すと,左から右へとスキャンを行い,終了後は自動でツーブスが元の位置に戻る。 *写真は検出器にファントム装着中

撮影前の状態(左)と,ポジショニング後にフットスイッチでツーブスを降下した撮影スタンバイ状態(右)。曝射ボタンを押すと,左から右へとスキャンを行い,終了後は自動でツーブスが元の位置に戻る。 *写真は検出器にファントム装着中

 

従来通りのワークフローと操作性を高めるキーパッド

低被ばくと高画質の両立を特長とするMicroDose SIは,従来のデジタルマンモグラフィとは原理や機構が異なる。そのため,装置の形態や動作もユニークだ。MicroDose SIに採用されているマルチスリットスキャニング方式は,直線上に並んだ乳房前後2つのコリメータと検出器が連動して動きながらスキャンすることで,イメージを収集する。CC撮影の場合,ポジショニング後にフットスイッチ操作でツーブスを左斜め方向に降下させて撮影準備完了となる。操作卓で曝射ボタンを押すと,左から右へとツーブスが動いてスキャンが行われる。ツーブス上部にあるX線管焦点を支点として,X線照射口が弧を描くように動作するため,検出器も同じように緩く彎曲している。
入職時にはすでにMicroDose SIの導入が決定していた長谷川技師は,説明書や資料で原理や仕組みを学ぶことから始めたと話す。
「検出器が彎曲しているのを見た時には驚きましたし,ポジショニングがどのようになるのか不安に感じました。しかし,実際にポジショニングをしてみると何が変わったのかわからないほどで,一人目の撮影からいつも通りのポジショニングができました。コリメータが動くという違いはありますが,従来のデジタルマンモグラフィと検査の流れはまったく同じです」
装置選定に当たった渡邊技師長は,「スキャン方式ということで,撮影時間の延長を懸念していましたが,実際に検査を始めてみると,撮影時間はほぼ変わっていないとのことで安心しました」と述べる。また,長谷川技師は,「乳房厚によってスキャンスピードが変わるとの説明でしたので,どれほど撮影時間が変わるのかを意識して見ていました。確かに厚さにより違いがありましたが,想像していたほど時間が延長することはありませんでした」と話す。
撮影に使う圧迫板は,高さや奥行きが異なる4種類を用意しているが,検診ではハイエッジ1種類で対応できている。ハイエッジ圧迫板は体側の縁が高くなっており,撮影と反対側の乳房が押されるため画像に写り込むことがない。従来の圧迫板では反対側の乳房を受診者自身に押さえてもらうため,その際に体が動いてしまうこともあるが,ハイエッジ圧迫板を使うことで,体位変化を防ぎ,受診者の負担も軽減する。
また,MicroDose SIは操作性においてもスピードと快適性が追究されている。操作卓は,モニタとPCのキーボード,キーパッドが置かれただけのシンプルな構成で,装置本体電源のオン/オフも操作卓PCの電源操作だけとなっている。キーパッドでは,日常のキャリブレーションやウォームアップ,検査開始から画像転送までをワンタッチで操作可能である。操作性について長谷川技師は,「マンモグラフィのコンソールという感覚はなく,PCを触っているかのようです。電子カルテから受診者を選んだ後は,キーパッドで“右CC”などを選ぶだけで撮影条件が設定され,ガントリも設定した角度に自動で動きます。キーパッドを使うとワンタッチで技師が望む流れで検査をすることができ,原理を理解して使っていれば,操作はとても簡単で楽だと思います」と話している。

コンソールはシンプルな構成で,PCのような操作感を実現。キーパッドのみで一通りの操作がワンタッチで可能。

コンソールはシンプルな構成で,PCのような操作感を実現。
キーパッドのみで一通りの操作がワンタッチで可能。

 

これまでの常識を覆す線量で画素サイズ50μmの高精細な画像を提供

同院の乳がん検診は予約制で行っている。マンモグラフィに加え,オプションとして超音波検査も安価で提供しており,多くの受診者が両方の検査を受けている。乳がん検診の予定は,超音波検査のスケジュールに合わせて組まれているのが現状である。
マンモグラフィ検査では受診者に対して,装置がどのように動作するかを説明した上で撮影を行っている。受診者の反応について,長谷川技師は,「事前に“装置が近くまで下りてきて動きます”と説明していますが,受診者は乳房が圧迫されることに意識が向かい,装置が動くことには抵抗がないようです。また,装置自体に丸みがあるので,MLO撮影などでは脇を装置に当てても痛みを訴えられることもなく,体に優しい装置だと思います」と話す。
同院では,診療科の医師が読影する一般撮影以外は,TMGグループ内の連携病院やグループが持つ遠隔読影センター「彩・テラメド」に読影を依頼している。乳がん検診の一次読影についても,連携病院である新座志木中央総合病院の乳腺外科医に依頼している。なお,旧市民病院の画像データは,PACS更新時に移行したため,受診歴がある場合,過去画像との比較読影も行っている。二次読影は佐藤院長が行っており,検診受診者には後日,再来院してもらい,佐藤院長による視触診と併せて検査結果説明を行っている。なお,精密検査などが必要な場合には,周辺の連携病院(新座志木中央総合病院,朝霞台中央総合病院)への紹介となる。
MicroDose SIの画質について長谷川技師は,「CRと比べると,石灰化の描出能が非常に高く,乳腺内コントラストも良好です。乳腺外科の医師も,満足のいく高画質であると評価しています」と述べる。重ねて長谷川技師は,驚くべきは,その高画質を非常に低い線量で撮影できることであると話す。
「MicroDose SIでは,1方向につき0.5〜0.8mGy程度で撮影できています。日本乳がん検診精度管理中央機構の基準は3mGy以下で,2mGy以下が望ましいとされていますが,FPDでは線量をどんなに下げたとしても1mGyを切ることはないでしょう。はじめのうちは,線量が間違っているのではないかと何度も見直しました。線量を下げれば画質が落ちることが“常識”でしたので,原理が違うことを意識しないと納得できないほどの低線量で,これだけの画質が得られるのであれば言うことはありません」
低被ばくを選定の第一条件とした佐藤院長も画質を高く評価しており,「定期的に検査を受ける乳がん検診で,被ばくによるリスクをできるだけ下げるためにも,MicroDose SIは非常に有用な装置だと思います」と述べている。

実際の撮影画像。撮影方向を選ぶと自動で最適な撮影条件が設定される。右MLOの撮影線量は約0.8mGy。 撮影条件とともに,スペクトラルイメージングによる乳腺密度がDICOM情報として表示される。

実際の撮影画像。撮影方向を選ぶと自動で最適な撮影条件が設定される。右MLOの撮影線量は約0.8mGy。
撮影条件とともに,スペクトラルイメージングによる乳腺密度がDICOM情報として表示される。

 

診断価値を高めるシングルショットスペクトラルイメージング

MicroDose SIのもうひとつの大きな特長が“シングルショットスペクトラルイメージング”である。通常の臨床画像の撮影だけで,追加撮影をすることなくスペクトラル情報を得ることができる。装置本体に搭載された乳腺量自動定量測定ソフトウエア“Breast Density Measurement”により乳腺密度情報が自動算出され,DICOM情報として画像とともに転送される。乳腺密度は3D解析により測定が行われ,乳房総体積,乳腺総体積,乳腺量密度,Density Score(Ⅰ〜Ⅳ)が画像上に表示される。精度誤差は2%以内とされており,マンモグラフィ読影において重要な情報である乳腺密度を,従来の視覚評価だけでなく,定量評価できることが期待される。
乳腺密度情報はDICOMのプライベートタグとして出力されるため,一次読影を依頼する際には,検診カルテに記載して乳腺外科医と情報を共有し,読影の参考としてもらっている。長谷川技師は,「まだ症例数も少ないので,この数値が従来の視覚評価とどの程度の相関があるかを検討していく必要があります」と述べる。また,渡邊技師長は,「Density Scoreについては,医師と技師で話し合ってどのように活用していくかの院内ルールを検討し,症例を重ねてグループ内の勉強会でも発表したいと思います。ほかのマンモグラフィ装置ではできない低線量撮影,そして乳腺密度情報をフル活用し,今後の検査に役立てていきます」と,展望を語った。
スペクトラルイメージングというプラスアルファの情報を提供するとともに,検診装置に求められる“低被ばく”に高いレベルで応えているMicroDose SI。検査を行う医療側のニーズを満たすだけでなく,地域住民の受診への心理的なハードルを下げることも期待できる。MicroDose SIによる乳がん検診は,地域医療への貢献をめざす同院を支える柱のひとつとなるだろう。

(2015年10月20日取材)

●参考サイト
1)MicroDose mammography SI製品リリース
http://www.innervision.co.jp/products/release/20131217
2)聖路加国際病院附属クリニック聖路加メディローカス:MicroDose国内第1号機導入取材記事
http://www.innervision.co.jp/feature/casestudy/201302
3)Philips MicroDose Mammography開発者 スウェーデン王立工科大学教授 Mats Danielsson氏インタビュー
http://www.innervision.co.jp/feature/interview/2013022

 

TMG宗岡中央病院

医療法人社団武蔵野会 TMG宗岡中央病院
住 所:〒353-0001 埼玉県志木市上宗岡五丁目14番50号
TEL:048-472-9211
病床数:100床
診療科:内科,外科,整形外科,小児科,リハビリテーション科
URL:http://www.muneoka-hp.jp

 

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