Allura Xper FD20 × 福井県済生会病院
XperCTとEmboGuideにより高精度かつ短時間でのultraselective TACEを実現─TACEの治療成績を向上させる高画質のCBCT画像とTACE支援ソフトウエア

2014-4-1

フィリップスエレクトロニクスジャパン

X線装置


Allura Xper FD20と放射線科・画像診断センターのスタッフ

Allura Xper FD20と
放射線科・画像診断センターのスタッフ

福井県済生会病院は,集学的がん診療センターにおいて,チーム医療によるがん診療を実践している。さらに,県内唯一の肝疾患診療連携拠点病院にも指定されていることから,肝がん診療に力を注いでおり,放射線科の宮山士朗部長を中心に,肝動脈化学塞栓療法(TACE)で全国有数の実績を築いている。そのTACEに使用されているのが,フィリップスエレクトロニクスジャパンの血管撮影装置「Allura Xper FD20」である。コーンビームCT(CBCT)機能である“XperCT”や,TACE支援ソフトウエアである“EmboGuide”を用いることで,手技の精度を向上させるとともに,時間短縮を図り,優れた治療成績を上げている。そこで,宮山部長に,TACEにおけるXperCTとEmboGuideの使用経験を取材した。

■チーム医療を実践する集学的がん診療センター

宮山士朗 放射線科部長

宮山士朗 放射線科部長

病床数460床,診療科目22科を有する福井県済生会病院は,福井・坂井医療圏の地域中核病院の1つとして位置づけられており,「患者さんの立場で考える」という基本理念の下,チーム医療に積極的に取り組んでいるほか,地域医療連携にも力を注いでいる。
同院におけるチーム医療の代表的な存在が,集学的がん診療センターである。2011年5月に開設した同センターは,内科,外科,放射線科といった診療科をまたぎ,そして医師,診療放射線技師,看護師など職種の垣根を越えたスタッフがプロフェッショナルチームとして,がん診療にあたっている。
集学的がん診療センターで重要な役割を担うのが放射線科と放射線技術部である。両部門のスタッフを中心に画像診断センターと放射線治療センターが設けられ,前者は検査・診断業務とIVRを行い,後者はIMRTを施行している。スタッフは,放射線科医が治療医も含め10名,診療放射線技師は36名が所属。また,質の高い診断・治療を行う上でのカギとなるモダリティの整備にも積極的に取り組んでおり,64列CTを3台所有しているほか,MRIは3T装置を1台,1.5T装置を3台設置している。さらに2009年には,IMRT専用放射線治療装置を北陸地方で初めて導入。2012年には新型も追加導入して,2台体制で治療を行っている。このほか,健診センターではPET/CTが2台稼働しており,早期診断から治療に至るまで,高度なモダリティが活用されている。
集学的がん診療センターでは,各臓器のがんに対し,チーム医療による診断・治療に取り組んでいるが,肝がんの場合,内科,外科,放射線科が連携し,切除術やTACE,ラジオ波焼灼療法(RFA),放射線治療などを行っている。TACEは,フィリップス社製血管撮影装置のAllura Xper FD20を使用し施行しているが,件数は近年減少傾向にあり,現在は年間250件程度となっている。同院が2005年に導入したAllura Xper FD20は,翌年にはコーンビームCT(CBCT)撮影技術であるXperCTが搭載された。その後,XperCTの画質の画期的な進歩とTACE支援ソフトウエアであるEmboGuideの導入によって,良好な治療効果に結びつく高精度のTACEが可能になり,さらには治療時間を短縮化し,患者さんの負担の軽減も実現している。

■優れた透視像を提供するAllura Xper FD20

EmboGuideの操作画面

EmboGuideの操作画面

福井県済生会病院は,福井県内で唯一,肝疾患診療連携拠点病院の指定を受けており,肝疾患の診療では全国でも有数の実績を誇っている。現在,わが国における肝がんの治療は,根治的治療法としては肝切除術が第一選択となり,次いでRFAが選ばれる。TACEや放射線治療は,姑息的治療として次の選択肢となる。この理由について,宮山部長は次のように説明する。
「従来のTACEは局所再発が多く,専用のカテーテルやガイドワイヤといったデバイスの開発が進まなかったことなどの要因から,治療効果があまり良好ではありませんでした。しかし昨今,血管撮影装置の画質向上やマイクロカテーテルなどの技術進歩により,局所治療効果が上がってきています。今後,さらなる治療成績の向上が期待され,肝がんにおける治療の適応と選択に影響を与えることになると思います」
TACEの治療成績向上に重要な役割を果たす血管撮影装置に,宮山部長はAllura Xper FD20を選んだ。放射線科ではメーカー各社のモダリティが稼働しているが,フィリップス社製装置を選定した理由について宮山部長は,「当院では,MRIと血管撮影装置,超音波診断装置などにフィリップス社の製品を使用していますが,非常に高性能であることが主な購入の理由です。TACEでは,造影剤を注入し,それを透視像で観察しながら手技を進めるため,透視像の画質が大きなカギを握っています。Allura Xper FD20の透視像の画質は,大変優れていると思います。また,TACEは2DのDSA画像だけでは手技のための情報が不足していて,CBCTや3D画像も治療の精度を高めるために重要です。Allura Xper FD20は,それらのアプリケーションも含め,精密なTACEを行うための高い能力を有しています」と述べている。

■XperCTとEmboGuideを搭載

同院で稼働しているAllura Xper FD20は,ピクセルサイズ154μmの高精細フラットパネルディテクタ(FPD)を採用。パネルのサイズは,30cm×38cmで,全身の検査やIVRに対応する。このFPDは,遠隔操作で縦横90°回転して広範囲の撮影を行えるほか,リフレッシュライトで残像をなくすことで高速撮影も可能にしている。さらに,同社独自の2k×2kイメージングチェーンにより,従来機種の4倍のマトリックスで画像を収集し,微細な血管を高精細に描出することが可能である。このほか,寝台の横には,タッチパネル方式のカラー液晶を採用した操作卓“Xperモジュール”が設置されており,指1本で直感的な操作を行うことができ,手技を支援する。
Allura Xper FD20では,これらの基本性能に加え,高性能コーンビームCT(CBCT)技術であるXperCTが搭載可能である。XperCTは,Cアームを回転させながら撮影し,ボリュームデータからCTのような断層像を作成する撮影方法である。導入当初は約20秒だったスキャン時間が,その後のバージョンアップで5.2秒へと大幅に短縮され,また最近になりノイズを抑えた384×384×384マトリックスでの画像再構成が可能となった。これにより造影剤のアーチファクトが大幅に軽減され,いっそうの画質向上が図られた。
さらに,同院の装置には,栄養血管を高い精度で同定しTACEを支援するソフトウエアのEmboGuideもインストールされ,手技に活用されている。EmboGuideは,XperCTによる肝動脈造影下CBCT(CBCTHA)上に治療対象とする腫瘍をセグメント化して仮想ターゲットを作成し,3D血管像と重ね合わせ,ターゲットに向かう栄養血管をコンピュータが自動解析するソフトウエアである。
前述のように,装置の画質の向上とデバイスの進歩により,微細な血管の描出と,より末梢へのカテーテル挿入が可能になったことに加え,XperCTやEmboGuideなどのTACE支援ソフトウエアが開発されたことで,腫瘍の栄養血管のみを超選択的に塞栓するultraselective TACEが可能となった。

Allura Xper FD20本体。寝台手前のモニタがXperモジュール。

Allura Xper FD20本体。
寝台手前のモニタがXperモジュール。

TACE手技中に室内のモニタにEmboGuideの画像(右)を表示する。

TACE手技中に室内のモニタに
EmboGuideの画像(右)を表示する。

 

■Dual phase XperCTでターゲットを的確に描出

実際のTACE手技では,まずAllura Xper FD20のXperCTで経動脈性門脈造影下CBCT(CBCTAP)を行う。さらに上腸間膜・腹腔動脈を撮影し,カテーテルを肝動脈に挿入して総肝動脈,あるいは左右肝動脈造影を行った後にCBCTHAを実施する。
CBCTHAでは,2相の撮影を行う。このDual phase XperCTはフィリップス社独自の技術で,最短4秒間隔で2回のスキャンが可能である。2相撮影では,肝細胞がん(HCC)に特徴的なコロナ濃染が描出可能であり,この所見はAPシャントなどの多血性偽病変との鑑別に役立つ。また,治療効果を確実にするために,TACEではその濃染域を含めて塞栓することが重要となる。実際の手技では,370mgI/mL造影剤を注入し1相を撮影した30秒後に,2相を撮影する。
治療対象となる腫瘍が決まったら,操作室の診療放射線技師がEmboGuideを操作し,栄養血管の解析を行う。CBCTHAの1相上で作成したターゲットと3D血管像を重ね合わせた画像上で解析開始点を決め,自動解析ボタンをクリックすると,数秒後に腫瘍の栄養血管がカラー表示される。仮想ターゲットは10個まで設定でき,栄養血管は同時に解析されるが,表示する腫瘍の個数や順序は任意に変更でき,手技の進行状況に応じた表示が可能である。また,CBCTHAで腫瘍の描出がされない場合は,CBCTAPの画像を参照する。宮山部長は,「私たちは,腫瘍の濃染域だけをターゲットにすれば治療がうまくいくとは考えていません。腫瘍周辺の治療安全域も含めて塞栓することが大事です。そのためにも,EmboGuideでは,マージンを含めてターゲットを作成するようにしています。腫瘍サイズが25mm未満であれば最低5mm,25mm以上であれば10mmをマージンにしています。この安全域の選択が,栄養血管の同定がうまくできるかどうかのキーポイントになります」と説明する。EmboGuideで栄養血管を同定した後,それらを順次選択して塞栓し,すべての栄養血管が塞栓された時点で終了となる。

■治療成績向上と時間短縮を実現するXperCTとEmboGuide

Allura Xper FD20付属のワークステーションを用いて診療放射線技師がCBCT画像から腫瘍をセグメント化し,EmboGuideを操作する。龍田俊一技師は,EmboGuideにより手技の状況を把握しやすくなったとメリットを挙げる。

Allura Xper FD20付属のワークステーションを用いて診療放射線技師がCBCT画像から腫瘍をセグメント化し,EmboGuideを操作する。龍田俊一技師は,EmboGuideにより手技の状況を把握しやすくなったとメリットを挙げる。

現在,同院におけるTACEでは,ほぼすべての症例でXperCTとEmboGuideを使用している。XperCTで塞栓範囲をモニタリングするようになってから,局所再発は有意に減少しており,また以前の検討では,30mm以下の小HCCにおけるDSAでの栄養血管同定率は38%であったが,EmboGuideの導入により88%に向上し,治療精度の向上や手技時間の短縮に大いに貢献している。

●高画質での腫瘍描出によりCTに置き換わるXperCT

Allura Xper FD20でXperCTが可能になったことで,DSAでは描出困難だった小さな腫瘍も描出できるようになり,TACEの適応が拡大している。宮山部長は,「TACEでは,CBCTAPで腫瘍の存在診断,治療適応を判断することが重要です。しかし,一般的にコーンビームでのCTAPは画質があまり良くないこともあり,多くの施設では通常のCTによるCTAPを行っていますが,XperCTのCBCTAPは画質が良く,TACEの適応を決めるのに十分な情報が得られています」と説明する。
XperCTでは腫瘍径10mm前後の小さな腫瘍が描出できないことがある。しかし,不明瞭な小病変の場合は,画像上明らかなHCCになった時点でTACEを追加することが多く,臨床上ほとんど問題とはならない。
XperCTのメリットは,高画質だけではない。Allura Xper FD20によるCBCTAP,CBCTHAを行うことのメリットについて,宮山部長は次のように述べている。
「患者さんを移動させることなく,同室内で撮影,手技ができることは治療時間の大幅な短縮につながります。以前CT室に移動してCTAPを行っていたときの治療時間は,2時間30分から3時間程度でした。それが1時間30分から2時間程度に短縮されました。また,IVR-CTと比べてもコストが低く,省スペースです。IVR-CTは同室内での撮影ができますが,ガントリ内で患者さんの上肢を挙上させて位置合わせをするなど,煩雑な作業が発生します。XperCTでは上肢挙上も容易で,患者さんの負担も少なく,位置合わせも簡単です」
XperCTは,その優れた画質により,TACEの適応を広げ,治療時間短縮など患者負担軽減にも効果を生んでいるといえる。

●栄養血管を高精度に同定し,手技を支援するEmboGuide

TACEにEmboGuideを用いるようになってから,さらに治療時間が短縮され,現在は1時間以内で終える症例もあるという。また,同院では,1回の治療における手技時間や造影剤使用量,被ばく線量に制限を設けて,その範囲内で治療を終えるようにしている。それがEmboGuideの導入により,栄養血管の同定に要する時間が大幅に短縮化され,その分複数の腫瘍を1回の治療で塞栓できるようになった。宮山部長は,「制限範囲内で治療できる腫瘍個数が増えたことで,“治療の密度”は非常に濃くなり,患者さんにとって大きなメリットになっています」と話す。
EmboGuideは,TACEの手技の精度を高める上でも大きく貢献している。宮山部長は,次のように説明する。
「EmboGuideを使用することで,85〜90%の精度で栄養血管を同定できます。これにより,血管を選択する回数が減りました。従来は2D情報のみの観察であったため,腫瘍に向かっているように見えるほぼすべての血管にマイクロカテーテルを挿入して撮影することを繰り返し,栄養血管を同定していました。さらに,EmboGuideは,3D表示のため血管の分岐形態が容易にわかります。分岐形態を把握することで,血管の選択が容易になり,また至適な角度にアームを回転させ,カテーテルを操作することが可能となります。私はほとんど使いませんが,EmboGuideの画像は,そのまま3Dロードマップとしても使用可能です。EmboGuideにより血管選択に要する時間や造影剤使用量を減らすことで,最も重要な塞栓物質の注入に時間を費やすことが可能になります。かつては,慌てて塞栓したために不十分となり,再発してしまう例もありましたが,EmboGuideを導入することで,一番重要な手技にウエイトを置くことができるようになりました」
患者さんの負担軽減という観点からもEmboGuideの効果は大きい。栄養血管の同定が容易になったことで透視時間が短くなり,被ばく線量を減らすことにもつながっている。また,検査時間や造影剤使用量の制限から,今までなら2回に分割しなければならなかった治療を,1回で行うことも可能となってきている。
これらに加えて,宮山部長はチーム医療の観点からも,EmboGuideがスタッフに良い影響を与えていると指摘する。
「TACEは,医師は1,2名,診療放射線技師1名,看護師1名で施行しています。従来のTACEでは診療放射線技師や看護師には手技の状況を把握することが難しかったのですが,EmboGuideの画像を表示しながら治療を進めることで,どの血管を目標としているのか,といったことが理解しやすくなりました。これはチーム医療を行う上で大切なことです。また,EmboGuideは,診療放射線技師がCBCTを観察しターゲットを作成するため,今まで以上に高いモチベーションを持って治療に参加できるようになりました」

症例:XperCTとEmboGuideを用いたTACE

症例:XperCTとEmboGuideを用いたTACE

 

■TACEの治療成績に向けCBCTの画質向上と支援ソフトの進歩に期待

宮山部長は,XperCTとEmboGuideのような技術が普及していくことが,わが国におけるTACEの治療成績向上にも貢献すると期待している。
「TACEで重要なのは栄養血管の選択であり,そのためのマイクロカテーテルなどのデバイスは非常に良いものが出てきています。今,さらなる進歩が求められているのは血管撮影装置と,それに搭載されるCBCT技術やTACE支援ソフトウエアです。XperCTとEmboGuideに代表される技術が普及すれば,多くの施設でultraselective TACEが可能となり,全国的に治療成績が向上すると思います」
実際に,XperCTとEmboGuideを使用することで,TACEの治療成績を向上させている福井県済生会病院であるが,宮山部長は,球状塞栓物質や分子標的薬の併用により,さらなる適応の拡大を検討している。XperCTとEmboGuideにより,DSAでは描出困難な小さな腫瘍へのTACEが可能となったが,今後は大きな腫瘍においても,これらの技術を使うことで治療成績が向上すると期待している。また,乏血性のため,TACEの施行が困難であった転移性肝がんも,EmboGuideと球状塞栓物質を使用することでTACEの適応となる可能性がある。
同院では,これからもXperCTとEmboGuideを活用して,チーム医療でのTACEに取り組んでいく。

(2014年2月取材)

 

福井県済生会病院

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住所:〒918-8503
福井県福井市和田中町舟橋7-1
TEL:0776-23-1111
病床数:460床
診療科目:内科,呼吸器科,外科,整形外科,脳神経外科,産婦人科,小児科,泌尿器科,循環器科,消化器科,呼吸器外科,放射線科,眼科,耳鼻咽喉科,麻酔科,皮膚科,リハビリテーション科,神経科精神科,心臓血管外科,神経内科,口腔外科,腫瘍内科
http://www.fukui-saiseikai.com/

 

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